世界経済フォーラム、パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子 +81 3 3560 6093 naoko.tochibayashi@weforum.org
2023年6月8日、米国、ニューヨーク - 1950年から2019年の間に平均寿命は、48歳から73歳に伸びました。国連はさらなる伸びを予測し、2100年には世界の平均寿命が約81歳に達すると予測。個人、政府、ビジネスリーダーは、寿命の延長に伴う仕事とリタイアメントへのアプローチを再考する必要があります。
世界経済フォーラムの新たな報告書「より良く、より長く生きる~長寿リテラシーを理解する~(Living Longer, Better: Understanding Longevity Literacy)」は、マーシュ・マクレナン傘下のマーサーと共同で、寿命の延びが個人の労働生活やリタイアメントに対する考え方をどのように変えているかを探ったもの。この報告書は、政府や雇用主が、仕事とリタイアメントのさまざまな段階にある人々を適切にサポートするための提言事項を示しています。
本報告書では、従来、リタイアメント後の生活設計に関連するテーマである、経済面における健全性や回復力に加え、生きがいや生活の質に焦点を当てています。また、仕事、学習、リタイアメントを自分のニーズに合った方法で迎えるために、個人が検討できる選択肢を提示しています。
世界経済フォーラムの長寿研究部門のリードであるハレ・ナゼリは、「 長寿とより健康で長生きをするという、この重要なテーマについては、誰もが役割を担っています 」と述べた上で、「政策立案者は、すべての国民がリタイアメント後の生活を公平に送れるようにするために何をすべきか、そして最後に、長い人生の中で経済的な強さを維持できるようにするために、あらゆるライフステージで個人に何ができるのか」を問いかけます。
マーサーのエグゼクティブ・ディレクター兼グローバル・チーフ・インベストメント・ストラテジストであるリッチ・ヌザムは、「雇用主は、組織の運営に必要な人材の分野における現在の年齢分布と、その分布の軌道に影響を与える方法について、より深く考えるようになっています。長寿を活用し、人材争奪戦に効果的に立ち向かうためには、個人の役割からチームベースの役割に移行することで、雇用主は高齢者と若年者の組み合わせからなるチームの多様な強みを最大限に活用することができます」と述べています。
リタイアメントに対する考え方
約400人の専門家を対象とした新たな調査、Pulse Pollによると、女性と男性では退職に対する見方が異なっていることがわかりました。例えば、女性は、リタイアメントのために十分な貯蓄ができたかどうかわからないと答える傾向が男性に比べ55%高い、といった結果も出ています。
また、この調査では、若年層と高齢層の退職後の将来に対する考え方の違いも明らかにされています。女性と40歳未満の人々は、スキルアップに積極的ですが、それに伴うコストを懸念しており、また両者ともより孤立感を抱きやすい傾向があります。
Pulse Pollの結果は以下のとおり。また詳細は報告書を参照。
· 回答者の3分の2が介護の責任を負うことになると回答しており、健康が最大の関心事である。
· 「親のすねをかじる」時代は終わりつつある。多くの若い世代は、高齢の家族を経済的に支えなければならない可能性がある。
· 40歳以上の回答者は、リタイアメント後の所得代替水準が低くなること考えている。
· 一般的に、目標とするリタイアメント後の所得のレベルを達成する方法が理解されていない。
· 男性は老後を楽しみにする傾向が増える一方で、女性では自分の経済状況を把握する必要増す傾向にある。
· 女性の方が十分な貯蓄があるかどうかわからないと回答する傾向が55%高い
· 若い世代は、金融に関するアドバイスを得るためにソーシャルメディアを利用する傾向が8倍ある。
· 40代以下の44%が、60歳までに退職したいと考えている。
· 女性や若年層はスキルアップに積極的だが、それに伴うコストを懸念している。
Pulse Pollの回答者プロフィールは比較的均質性が高く、高等教育を受けた人、より上級のポジションにいる人、主要なグローバル組織で働く人が多く含まれており、個人の主体性と金融リテラシーが高い人が多く含まれています。サンプルの制約もありますが、この調査結果は、直面する課題についての会話を始めるのに役立つことが期待され、この回答者グループを代表する人々のための解決策の開発に貢献できることを示唆しています。
政府および雇用主への提言
人々が長生きするようになった今、企業や政府は後期高齢者計画へのアプローチを再構築する必要があります。長寿に向けたマルチステークホルダーアプローチなしでは、必然的にかなりの人々が貧困の中で引退することになり得るのです。
同報告書による提言は、生活の質、目的、経済的な回復力など、仕事と退職に関する3つの主要分野を網羅しています。
政府
· 高齢者のスキルアップを促進し、年齢差別に歯止めをかける。
· 雇用主が介護の必要性に応じて、より充実した休暇制度を提供するインセンティブを与える。
· 貯蓄を増やし最大化するために、デフォルトの自動加入と投資戦略の幅広い利用を検討する。
· 政府が提供する最低年金水準などのセーフティネットを確立する。
· すべての仕事を、希望に応じて、より長く働けるように、また、すべてのライフステージのニーズに対応できるようにするための法律を制定する。
· すべての人が公平に機会にアクセスできるよう、デジタルスキルのトレーニングや機器を提供する。
雇用主
· 介護休暇、介護をする人への情報提供やアドバイスなど、サポートを提供するプログラムを実施する。
· 会社の退職金制度の設計が、退職準備と労働力の流れの軌道にどのような影響を与えるかを理解し、人々が実際に退職する余裕があるかどうかをチェックする。
· 介護者のためのフレックスワーク制度(ジョブシェアなど)、パートタイム労働者の確定拠出年金への拠出、再就職のための研修プログラム(早期キャリア社員向けと同様)を提供する。
· 以下のようなファイナンシャル・ウェルネス・プログラムを実施し、見直す。
o 性別、文化、民族の違いを考慮し、特定のライフステージのニーズの網羅
o 異なる勤務形態や退職年齢が給与や年金に与える影響を示す個別モデルの検討
o 最も支援を必要とすると思われる低所得者への、退職後の貯蓄や計画の対応
学校、仕事、退職という3段階の人生から、生涯学習、キャリアの中断、晩年の新しい職業を含む多段階の人生への移行に伴い、個人はより長い人生のあり方を再考することもできます。これには、スキルアップやリスキリングの機会を追求することや、可能であればリタイアメント後の生活や年金計画を優先させることも含まれます。
世界的に長寿化が進むと、祖父母より20年ほど長い老後を、人々が経済的にたくましく過ごすための新たなイノベーションとソリューションが必要になります。政府や雇用主が支援することで、個人は長寿に向けた新しいアプローチを試し、過去1世紀とは異なる方法で、勉強、生活、仕事、貯蓄、引退の方法を見直す機会を得ることができるでしょう。
<ご参考>
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