世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子
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2023年5月2日、スイス・ジュネーブ - 世界経済の先行きが依然不透明であることは、最新のチーフエコノミスト・アウトルックにおける、専門家の反応の幅にも反映されています。同報告書に掲載されたアンケートでは、世界経済の先行きについてエコノミストの意見は二分化され、今年の世界的な景気後退の可能性が高い、または低いという意見が45%と同数になっています。
経済政策面では、72%が今後3年間に積極的な産業政策がますます普及すると予想。最近の金融セクターの混乱はシステミックな脆弱性の兆候とは考えていない人が大多数である一方、今年はさらなる銀行破綻や混乱が起こる可能性があると考えられています。
地域間のダイバージェンス(分岐)が顕著に
2023年1月に発表されたチーフエコノミスト・アウトルック以降、成長への期待感は顕著に強まっていますが、見通しは地域によって大きく異なります。最も活発な活動が期待されるのはアジアで、中国の再開による国内の大幅な回復が見込まれ、大陸全体の活動を強化すると予想されます。また、東アジア・太平洋地域と南アジア地域では、少なくとも穏やかな成長が期待されると、チーフエコノミストの90%以上が回答しています。
一方、欧州では、チーフエコノミストの4分の3が依然として弱い、または非常に弱い成長を予想しています。米国では、回答者は1月よりも3月~4月はより楽観的である一方、金融安定性や金融引き締めのペースと程度に関する不確実性の高まりによって米国の成長見通しが曇っているため、見通しについては意見が分かれています。
インフレについては、2023年に高インフレを予想する回答者の割合が全地域で顕著に上昇し、チーフエコノミストの76%が、多くの国で生活費が高止まりすると予想していると回答しました。また先物金利は緩和し始めた一方、コアインフレは多くの予想を一層上回ります。この傾向は特に欧州と米国で顕著で、チーフエコノミストの大多数(それぞれ90%と68%)が今年のインフレ率が高いか非常に高くなると予想しています。中国は依然としてインフレに関してその傾向は異なり、今年の高インフレを予想しているのは14%に止まりました。
金融セクターの揺れ
最近の銀行破綻や金融市場の混乱を受けて、チーフエコノミストは、グローバル市場のシステム的な健全性に自信を示しました。しかし、3分の2はさらなる銀行の破綻や混乱の可能性を強調し、80%以上が、貸出基準が厳しくなることで企業にとっては銀行融資がより難しくなると予想しています。また、高金利がもたらす影響も指摘されており、特に不動産業界では、3分の2が高金利により2023年から2024年にかけて大きな混乱が生じると予測しています。
グローバリゼーションの変化
チーフエコノミストたちの予想は、グローバルサプライチェーンの構造がさらに変化することで一致しています。この再編成に貢献すると思われるビジネス戦略の質問に対し、地政学的な分断線への適応(94%)、効率性よりもレジリエンスの優先(91%)、サプライヤーの多様化(84%)、環境維持への関心の高まり(77%)が強調されました。
また、積極的な産業政策の重要性が増していることも指摘され、ほぼ4分の3の回答者が、産業政策が世界中の経済政策に広く浸透していくことを期待しています。また、産業政策がイノベーションの原動力となるかどうかについては意見が分かれた一方、地政学的緊張の深まり(91%)、競争の抑制(70%)、ソブリン債務の増加(68%)など、いくつかの潜在的な懸念が指摘されました。
世界経済フォーラムの取締役であるサーディア・ザヒディは、次のように述べました。「労働市場は今のところレジリエンスを示していますが、成長は依然低迷しており、世界的な緊張は深まり、生活費の高騰は多くの国で深刻なままです。この結果は、短期的なグローバルな政策調整と、インクルージョン、持続可能性、レジリエンスを経済政策に組み込む新たな成長の枠組みに関する長期的な協力の両方が緊急に必要であることを裏付けています」。
5月2日~3日、スイスのジュネーブで開催される世界経済フォーラムのグロース・サミット(Growth Summit)では、世界経済の成長見通し、世界経済のホットスポット、競争と協力、雇用、スキル、公平性などの課題が取り上げられます。
チーフエコノミスト・アウトルック・レポートについて
今回の「チーフエコノミスト・アウトルック」は、世界経済フォーラムのニューエコノミーとソサエティ部門が実施した、最新の政策立案研究および官民の主要なチーフエコノミストとの協議や調査に基づくものです。本レポートの目的は、現在の経済環境の輪郭を要約し、世界経済への複合的なショックに対応するための、政策立案者やビジネスリーダーによる行動のさらなる優先事項を特定することです。本レポートに掲載されている調査は、2023年3月から4月にかけて実施されたものです。
<ご参考>
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