「仕事の未来レポート2023」 今後5年間で最大4分の1の仕事が変化すると予想

発行済み
2023年04月30日
2023
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世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子
Tel.: +81-(0)3-3560-6093 Naoko.Tochibayashi@weforum.org

  • 「仕事の未来レポート2023」によると、2027年までに約23%の仕事が変化し、6,900万件の新たな仕事が創出、8,300万件の仕事が失われると予測されています。
  • グリーン・トランスフォーメーションとサプライチェーンの現地化が仕事の純増につながることを、同レポートは示唆しています。
  • テクノロジーの導入とデジタルアクセスの拡大により、仕事は増える一方で、失われる仕事とのオフセットはより大きくなると予測されています。また、経済成長の鈍化、供給不足、インフレは、仕事の最大のリスクとなると見込まれます。
  • 急成長する職種は、AI・機械学習スペシャリスト、サステナビリティ・スペシャリスト、ビジネスインテリジェンス・アナリスト、情報セキュリティ・スペシャリスト。また最大の成長分野は、教育、農業、デジタルコマースが見込まれています。
  • 「仕事の未来レポート2023」はこちら。なお、5月2日(火)午後9時~9時30分(日本時間)に開催される同レポートに関するブリーフィングは、こちらでライブ配信およびアーカイブされます。また、グロース・サミット(Growth Summit) 2023も同様にこちらからライブ配信およびアーカイブにて閲覧可能です。ソーシャルメディアでは、ハッシュタグ #GrowthSummit23 をご活用ください。

2023年5月1日、スイス、ジュネーブ - 「仕事の未来レポート2023」によると、今後5年間で、10.2%の成長と12.3%の減少を通じて、ほぼ4分の1(23%)の仕事が変化すると予測されています。調査した803社の推定によると、データセットに対応する6億7,300万件の雇用のうち、6,900万件の新たな仕事の創出と8,300万件の仕事が失われると見込んでいます。これは、現在の雇用の2%に相当する1,400万件の純減となります。

グリーン・トランジション、ESG基準、サプライチェーンの現地化などのマクロトレンドが雇用増加の主な要因であり、高インフレ、経済成長の鈍化、供給不足などの経済課題が最大の脅威となることも予測されています。また、テクノロジーの導入によりデジタル化が進み、労働市場が大きく変化する中、雇用創出は全体として増えるとしています。

「世界中の人々にとって、この3年間は、生活や人生にとって激動と不確実性に満ちており、新型コロナ感染の拡大、地政学的および経済的なシフト、そしてAIやその他のテクノロジーの急速な進歩は、さらなる不確実性を加えるリスクとなっています」。世界経済フォーラム取締役、サーディア・ザヒディはこのように述べています。「良いニュースは、レジリエンスを確保するための明確な道筋があることです。政府と企業は、個人が未来の仕事の中心にいることを保証できる教育、リスキル、社会的支援構造を通じて、未来の仕事へのシフトをサポートするために投資しなければなりません」。

「ロボット革命」から「アルゴリズム・アルマゲドン」へ?

テクノロジーは労働市場に課題と機会の両方をもたらし続けると同時に、雇用主のほとんどは、テクノロジーが雇用創出に積極的に貢献すると考えています。

最も急速に成長している仕事は、テクノロジーとデジタル化によってもたらされています。ビッグデータは、仕事を創出すると見られるテクノロジーの中でトップに位置し、調査回答者の65%が関連する役割の雇用増加を期待しています。データアナリストや科学者、ビッグデータ、AI・機械学習、およびサイバーセキュリティ・スペシャリストの仕事は、2027年までに平均30%増加すると予想されます。AIやビッグデータを活用するための労働者の育成は、調査対象企業の42%が今後5年間に優先的に取り組むとし、分析的思考(48%)、創造的思考(43%)に次ぐ重要度を示しています。また、デジタルコマースは、仕事の絶対的な増加にもつながります。eコマース、デジタルトランスフォーメーション、デジタルマーケティングと戦略のスペシャリストなど、約200万人の新しいデジタル対応の役割が予測されています。

同時に、最も早く減少する役割もテクノロジーとデジタル化の影響を受けており、銀行窓口係、レジ係、データ入力係などの事務職や秘書の役割が最も早く減少すると予想されています。

「仕事の未来レポート2023」によると、前回レポートが発行された3年前と比較して、タスクの自動化が進んでいないと見られています。現在、タスクの約3分の1(34%)が自動化されており、2020年の数字をわずか1%上回っています。また、調査対象企業は、さらなる自動化への期待を下方修正し、2025年までに47%のタスクが自動化されるという2020年の予測に対し、2027年までに42%のタスクが自動化されるとしています。

肉体労働や手作業が機械に置き換わるという予想は低下しているものの、論理的思考、コミュニケーション、調整といった、人間の比較優位性を持つ特性は、今後より自動化されることが予測されます。アルゴリズムによる置き換えの可能性をもたらす人工知能は、調査対象企業の75%近くが採用し、高い離職率をもたらすと予想され、人工知能が50%の組織が仕事の増加に、また25%の組織が仕事の減少につながると予想しています。

グリーン、教育、農業関連職の台頭

グリーン・トランジションと気候変動緩和への投資、および持続可能性課題に対する消費者の意識の高まりが、産業の変革を促し、労働市場に新たな機会をもたらしています。最も強い純雇用創出効果が期待できるのは、企業のグリーン・トランジションを促進する投資であり、回答者の半数以上がそれを期待しています。各国がより多くの再生可能エネルギーを求める中、再生可能エネルギーエンジニアや太陽光発電の設置、システムエンジニアなどの役割が高い需要になると思われます。

また、投資によって、サステナビリティや環境保護のスペシャリストなど、より一般的なサステナビリティの役割の成長が促進される中、それぞれ33%、34%の成長が見込まれ、約100万人の仕事が増加すると予想されています。

一方、仕事の絶対的な増加が最も大きいのは、教育と農業とされています。レポートによると、教育業界の仕事は約10%増加し、職業教育教師と大学・高等教育教師の300万人の雇用が追加されると予測。農業関係者、特に農機具のオペレーター、グレーダー、ソーターなどの雇用は15%から30%増加し、400万人の雇用が追加されると予想されています。

リクルートホールディングス傘下のIndeedによると、パンデミック時には医療や教育といった社会的な仕事への需要がより高まっている一方で、これらの求人は他の仕事よりも採用ニーズの充足埋めるのが難しいことが分かっています。

リクルートホールディングスの代表取締役社長兼CEOである出木場久征氏は、「リクルートでは、短期的なマクロ経済の逆風と長期的な労働市場の課題を乗り越えるために、求職者と雇用者を支援するために、AIとテクノロジーを適切に活用していく導入し続ける必要があると考えています」と述べています。「今後、高齢化が進む中、多くの分野で労働力不足が続くと予想されます。そのため、採用プロセスをシンプルに簡素化する新たな方法を模索し、誰もが共に繁栄できる経済社会を支えることが重要です」。

リスキリング革命の緊急性が高まる

企業は、スキルギャップおよび人材を惹きつけることができないことが、変革への主な障壁であると報告しており、業界全体でトレーニングとリスキルの必要性が明確に示されています。10人に6人の労働者が2027年までにトレーニングを必要とする中、現在、十分なトレーニングの機会を得ていると見られる従業員はわずか半数。同時に、本レポートでは、個々の労働者のスキルの平均44%を更新する必要があると推定しています。

労働者のスキルと将来のビジネスニーズとの間にギャップがあるため、企業や政府には学習やリスキルの機会を提供する責任があります。調査対象企業の45%は、スキルトレーニングに対する政府の資金援助は、人材を雇用につなげるのに役立つと述べています。

今年のレポートのためにリンクトインが行った追加調査でも示されているように、過去4年間、グリーン・ジョブは継続的に増加しているものの、グリーン・スキルへのリスキルやアップスキルは追いついていないのが現状です。

リンクトインのグローバル公共政策責任者であるスー・デュークは、「グリーン・ジョブの持続的な成長は、特に労働市場の激変に直面している求職者にとっては、素晴らしいニュースです」と述べています「また、グリーン・スキルを持つ人材に対する強い需要がある一方で、気候変動目標を達成するのに十分な速さでグリーン・スキルを身につけることができていないこともリンクトインのデータで明らかになっています。この状況を好転させるチャンスは、誰にでもあります。政府はグリーン・スキルの課題を支持し、企業は真の環境変化を実現するために必要なスキルを従業員に身につけさせるために、より多くのことを行うことができますし、行わなければなりません」。

生活費の危機に対応するため、36%の企業が、より高い賃金を提供することで人材を惹きつけることができると認識しています。一方、企業は労働力をより生産的で費用対効果の高いものにするために、投資と置換の両方をミックスすることを計画しています。調査対象企業の5社に4社は、今後5年間で、業務上の学習やトレーニング、プロセスの自動化などに投資する予定です。また、3分の2の企業は、クロスロール・モビリティの強化、労働者の満足度の向上、労働者の生産性の向上といった形で、スキルトレーニングへの投資から1年以内にリターンが得られると期待しています。

また、職場における複雑な課題解決の重要性が高まっていることを反映して、強力な認知スキルが雇用主から評価されるようになっています。2023年の労働者にとって最も重要なスキルは、分析的思考と創造的思考と見られ、今後5年間はこの傾向が続くと予想されます。技術リテラシー、特にAIとビッグデータの重要性が高まり、企業のスキル戦略も今後5年間はこれに重点を置くことになるでしょう。

より迅速なリスキルが必要であり、また可能である。- Courseraの最高経営責任者(CEO)、ジェフ・マッジョンカルダ氏は、「我々の調査では、学位を持たない人でも学位を持つ人と同等の期間で重要なスキルを習得できることがわかりました。これは、スキルギャップや人材不足に対処するために、業界のマイクロ資格やスキルベースの雇用などの革新的なアプローチの可能性を強調しています」と語りました。「しかし、離職者が将来の仕事に移行するために必要な、手頃で柔軟なリスキリングの道を大規模に提供するためには、官民が一体となって行動する必要があります」。

また、ランスタッドのCEO の サンダー・ヴァント・ノールデンデ氏は、「『仕事の未来レポート』の最新の調査結果は、すべての労働市場関係者に行動することを求めています。「デジタル化、AI、自動化の加速は、世界の労働力に多大な機会をもたらしていますが、雇用主、政府、その他の組織は、今後のディスラプションに備える必要があります。より大きなスキリングリソースを集団で提供し、人材と仕事をより効率的に結びつけ、規制の整った労働市場を提唱することで、より専門的で公平な未来の仕事に向けて労働者を保護し備えることができます」。

仕事の未来レポート

「仕事の未来レポート」は未来の仕事とスキルをマッピングし、変化のペースを追跡しています。2016年に初めて発表された本レポートは、今回で第4版となります。本レポートは、2023年から2027年の時間枠において、テクノロジーの導入だけでなくマクロトレンドが労働市場をどのように再構成し、仕事とスキルの需要を形成する可能性があるかを分析することを目的としています。

この調査は、世界各地域の27の産業クラスターと45の経済圏に属する803社(合計1,130万人以上の従業員を雇用)の視点をまとめたものです。

<ご参考>
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