世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子
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2023年1月17日、スイス、ダボス-クロスタース - 世界経済フォーラムのチーフエコノミストのコミュニティでは、過半数が2023年の世界同時不況を予想。地政学的緊張が引き続き世界経済を形成すると見ており、米国と欧州ではさらなる金融引き締めを予想しています。これらは、スイスのダボスで開催されている世界経済フォーラム年次総会で発表された「チーフ・エコノミストの展望」の主な調査結果です。
チーフ・エコノミストのほぼ3分の2は、2023年に世界的な景気後退が起こる可能性が高いと見ており、そのうち18%はその可能性が極めて高いと見ています。これは、2022年9月に実施した前回調査の2倍以上です。また、回答者の3分の1は、今年は世界的な景気後退の可能性は低いと考えています。
一方、2023年の成長見通しは、特に欧州と米国で暗いとする強いコンセンサスがあります。調査対象となったチーフエコノミストの全員が、2023年の欧州の成長は弱いか非常に弱いと予想しており、91%が米国の成長は弱いか非常に弱いと予想しています。これは、ここ数カ月の間に悪化したことを示しています(前回の調査時点では、欧州が86%、米国が64%)。
また中国では、成長への期待は二極化しており、「弱い」と「強い」の回答がほぼ半々となっています。中国では最近、非常に厳しい規制であったゼロ・コロナ政策が解除され、成長に弾みがつくと予想されます が、この政策転換が、特に健康への影響という点で、どの程度の破壊力を持つかはまだ不明です。
インフレについては、地域によって大きな差があり、2023年に高いインフレを予想する割合は、中国のわずか5%から欧州の57%に及ぶと見ています。中央銀行の急激かつ協調的な引き締めが行われた1年を経て、今年は世界のほとんどの地域で金融政策のスタンスが一定に保たれるとチーフエコノミストは述べています。しかし、欧州と米国では過半数がさらなる引き締めを予想しています(それぞれ59%、55%)。彼らは、2023年は政策立案者にとって、引き締めが多すぎるか少なすぎるかのバランスをとるのが難しい年になる可能性が高いと指摘しています。
「チーフエコノミストの3分の2は2023年に世界的な景気後退を予想しており、世界経済は不安定な状態にある。現在の高インフレ、低成長、高負債、高分散の環境は、成長を回復し、世界で最も弱い人々の生活水準を引き上げるために必要な投資へのインセンティブを低下させています」と、世界経済フォーラムの取締役、サーディア・ザヒディは述べています。「リーダーたちは今日の危機を乗り越え、食糧やエネルギーの革新、教育、技能開発、そして雇用を創出し、将来性の高い市場に投資しなければなりません。失う時間はないのです」。
また、複数の逆風が2023年の企業活動に足を引っ張ると予想されています。回答者の10人中9人が、需要の低迷と借入コストの高騰の両方が企業に重くのしかかると予想しており、60%以上が投入コストの上昇も指摘しています。これらの課題により、多国籍企業はコスト削減に取り組むと予想され、多くのチーフエコノミストは企業が運営費の削減(86%)、従業員の解雇(78%)、サプライチェーンの最適化(77%)を行うと予測しています。
回答者の100%が、世界の地政学的なトレンドが、新たな地政学的亀裂や断層に沿って世界経済活動の地図を描き続けるだろうと予測しています。このような経済の大きな変化は、貿易、投資、労働、テクノロジーの流れに波及し、ビジネスに無数の課題と機会をもたらすと思われます。
ポジティブなシグナルとしては、サプライチェーンの混乱が2023年の企業活動の大きな足かせになることはないと予想されることです。
フォーラムが最近発表した「グローバルリスクレポート2023」では、生活費危機が世界で最も緊急性の高いリスクであるとされていますが、チーフエコノミストは、この危機はピークに近い可能性があり、2023年末には深刻さを軽減していると過半数(68%)が予想しています。エネルギー危機についても同様の傾向が見られ、64%が年末までに何らかの改善が見られると予想しています。さらに、調査回答者は、家計の健全性、インフレ圧力の緩和の兆候の高まり、労働市場の回復力の継続など、2023年初頭の楽観的な見通しを示す多くの潜在的要因を強調しています。
<参考>
世界経済フォーラム年次総会2023について
世界経済フォーラム年次総会2023は、テーマ「分断された世界における協力の姿」のもと、世界のトップリーダーを招集。同年次総会では、世界のリーダーたちに対して、当面の経済危機、エネルギー危機、食糧危機に対処する一方で、より持続可能で強靭な世界のための基礎を築くよう呼びかけています。年次総会2023についての詳細は こちら
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