世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード
栃林直子 Tel.: +81 3 3560 6093 Naoko.Tochibayashi@weforum.org
2022年8月4日、米国、ニューヨーク 世界経済フォーラムがこのたび実施した調査によると、投資をしていない人の40%は投資知識がない、または煩わしいと感じるために投資をしないことが明らかになる一方で、全回答者のおよそ70%は充実した金融教育を受けているため投資する傾向がある、または追加投資を望んでいることが示されました。
世界経済フォーラムがBNYメロン社、アクセンチュアと共同作成した、「The Future of Capital Markets: Democratization of Retail Investing(資本市場の未来:個人投資の民主化)」では、資本市場に参加する個人投資家が増えていることはおおむね好ましい傾向であると指摘しています。少人数の個人投資家による、リスクの高い投資に関する問題は総じて残っていますが、個人投資家は、長期的な資産形成のために市場を利用する賢明な投資家であることが示されています。
世界経済フォーラムのインベスティング・リード、ミーガン・アンドルーズは、「市場が不安定な中であっても資本市場に参加することで、人々は将来の資金運用に対する当事者意識を高めることができます。私たちは、個人投資家が増え、彼らが市場で力を発揮していることを理解し始めたところです。重要なことは、産業界のリーダーたちが現在の投資の有無にかかわらず個々人を支援して、生活向上のために的確な資金運用の判断ができるようにすることなのです」とコメントしています。
本レポートは、9,000人の調査対象者からの回答と専門家へのインタビューを基に作成されており、個人投資家向けの個別のアドバイスを拡充し、情報の信頼性を高め、投資家保護を強化することにおける重要性に焦点を当てています。また、グローバルな資本市場に誰もが参加できるよう、教育を充実させ、信用を高め、容易に参加できる機会を増やすことについても強調しています。
現在、市場は不安定かつ弱気な状態で、個人投資家の資金と信用は大きく失われています。業界関係者、政策立案者、その他の関係者は、投資によってますます多くのメリットを世界規模で得られるよう、今こそ行動する必要があります。
BNYメロン社のChief Growth Officer、アカッシュ・シャア氏は、次のように述べています。「世界の資本市場は、歴史上かつてないほど多くの個人および個人投資家が市場参入を求めており、根本的な変革期を迎えています。この調査は、従来の金融業界が、新たに急成長している市場参入者の力を高め、十分なサービスを受けていない地域における市場参加の民主化をさらに進めるために必要な信頼性と透明性を構築する機会を明確に示しています」。
個人投資家の動向
個人がグローバルな資本市場への参加を決める際、何に促され、どのように考えたのかという重要な事実が明らかになりました。
調査結果では、個人投資家が資本市場に参加する主な目的は長期的な資産形成のためであること、とりわけ新興国市場への投資に関して顕著であることが特筆されています。調査回答者の半数は、老後のための貯蓄や、子や孫のための長期的な資産形成を目的としていました。
個人投資家は若年層に偏っており、Z世代と若年ミレニアル世代が多数を占めています。若い世代の投資家は、同年代の非投資家に比べ、人生の早い時期から金融教育を受けている傾向がみられます。
若い世代の非投資家は、長期的な経済的目標を達成できないだろうと弱気であり、投資家と比べると、社会人になり何年も経て初めて投資を学ぶ割合が高くなっています。金融市場を敬遠する主な要因は、損失が発生することへの懸念と、投資知識の格差があることでした。
早い時期に投資を決断するようになるための重要な鍵は、世代を超えて受け継がれる資産です。市場への投資経験のある親を持つ回答者は、投資経験のない親を持つ回答者に比べ、早期に投資を始めたことが明らかになりました。
調査では、金融商品についての認識にも大きな格差があることが明らかになりました。例えば投資家は、株券や債券など旧来の金融商品に比べても、暗号通貨や非代替性トークン(NFT)などの最新商品について豊富な知識を有していると自ら認識しています。
個人投資の効果を拡大する
資本市場と国際社会が協力して取り組むことにより、責任ある方法で多くの個人の富を増やすことができますが、それにはさまざまな手法があります。
1. 投資教育の活用と金融リテラシー
予算設定から老後の資金を確保する方法の習得まで、個別の金融教育は、責任をもって資産形成をするためには不可欠です。業界関係者は基本的な金融リテラシーの向上、責任ある投資戦略の推進、年金以外の老後の事前計画の見直しに焦点を当てて取り組む必要があります。
情報提供だけでは不十分です。内容が目的にかない、できる限り理解しやすいものであることが必要です。政策立案者と企業がともに、今日の投資家の要望を満たす方策を提供しなければなりません。
2. すべての人々に、成果志向型の個別アドバイスを
金融機関が現在提供するソリューションは、サイロ化されたものが少なくなく、投資家の共感を必ずしも得られていません。多くの場合、保有資産が少ない層は金融アドバイスを得る方法をほとんど選べない状況です。既存の投資家の80%が、投資判断をする際にはアドバイザーと相談できることが必須であると明言していますが、金融アドバイザーやウェルス・マネージャー(資産管理アドバイザー)からのアドバイスを得ることができたのは48%に過ぎません。
すべての投資家が、資本市場に効果的に参加するために必要なツールやガイダンスを利用できなければなりません。これは保有資産や収入レベルに関わらずあらゆる投資家に必要です。金融業界は個々人に合わせたアドバイスの提供に一層努め、個人投資家の高まる需要を確実に満たせるサービスを拡大する必要があります。これはすべての資産層に対し実現されなければなりません。
3. 協力と官民連携
官民連携を含む、金融業界全体の協力を推進させる必要があります。
証券会社、資産管理会社、証券取引所は、個人投資家の近くにいる存在であり、また変化を起こすスピードもあるため協力体制の構築には不可欠といえます。金融教育の推進から、個人投資家の資本市場参加への障壁を下げる取り組みに至るまで、官民連携は極めて重要になります。
アクセンチュア戦略本部グローバル・リード、キャサリーン・オライリー氏は、「市場参加者を増やし、個人投資家の力を高めるには、すべてのステークホルダーが協力する必要がある」と述べています。「特に金融機関は、経営幹部から個人資産管理者まで、投資家がより賢く、より自信を持てるよう、投資商品に加えて、親しみやすい教育活動を提供する重要な役割を果たす必要があります」。
調査方法
本レポートの公表のためにBNYメロン社と世界経済フォーラムは、世界9か国の個人を対象にグローバルな調査を実施しました。同調査は、2022年5月にクアルトリクス社が行い、投資家と非投資家が重大な決断を下す際の要因を特定しました。「資本市場の未来:個人投資の民主化」レポートでは、同調査の内容を参考にし、検討すべき点を掲げ、結論に導いています。
すべての回答者は、18歳以上の、投資可能資産を1,000米ドル(または国・地域通貨で等価)以上保有する個人です。
<参考>
資本市場の未来(Future of Capital Markets)、金融サービスの未来(Future of Financial Services)を詳しく読む
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