2021年旅行・観光開発指数発表:旅行・観光産業における回復の兆しと、将来の逆風に備える必要性

発行済み
2022年05月24日
2022
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世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子 Tel: +81 3 3560 6093 Naoko.Tochibayashi@weforum.org

  • 世界経済フォーラムが隔年発表している旅行・観光産業調査レポートの最新版によると、パンデミックによる低迷を経て、旅行・観光産業は回復の兆しを示しているものの、その状況は一様ではなく、課題が山積しています。
  • レジリエンスを構築し、旅行・観光産業の従事者を支援するためには、開発戦略が不可欠です。「2021年旅行・観光開発指数レポート」は世界117か国を対象に、旅行・観光産業の持続可能でレジリエントな成長を可能とする重要な要素を特定しています。
  • 最新レポートでは、開発指数ランキングの第1位に日本が選出されました。「2021年旅行・観光開発指数」についてさらに詳しくは、こちらをご覧ください。

2022524日、スイス、ダボスークロスタース 世界経済フォーラムは、最新の旅行・観光産業レポートを発表しました。レポートから、世界の多くの地域で、新型コロナウイルス感染症パンデミック(世界的大流行)により深刻な打撃を受けた旅行・観光産業に回復の兆しが現れていることが明らかになりました。日本、米国、スペイン、フランスおよびドイツは最も早い立ち直りを見せています。

Travel & Tourism Development Index 2021: Rebuilding for a Sustainable and Resilient Future(2021年旅行・観光開発指数:持続可能でレジリエントな(回復力のある)未来に向けた再構築)」レポートでは、旅行・観光産業における開発、持続可能性、レジリエンス(強靭性)にきわめて重要で、ひいては経済的、社会的な開発に寄与する様々な要素に基づき、世界117の国と地域をランク付けしています。

世界経済フォーラムの航空・旅行・観光部門長である、ローレン・アッピンクは次のように語っています。「新型コロナウイルス感染拡大によるシャットダウン(活動停止)により、旅行・観光産業が世界の国々にいかに大きく貢献しているか、あらためて明らかになりました。世界がパンデミックを乗り越えつつあることを踏まえ、各国は今後数十年にわたり、旅行・観光産業の体験とサービスを提供できる、強固で強靭な環境を構築するための投資を行う必要があります」。

全般的に国際観光や業務渡航は、依然としてパンデミック前の水準以下にとどまっていますが、新型コロナワクチンの高い接種率、規制のより少ない旅行の再開、国内観光や自然に親しむ観光の需要拡大を受けて、旅行・観光産業は回復基調にあります。多くの企業と観光地は、このような需要のダイナミックな変化に順応しています。国連世界観光機関(UNWTO)によると、2021年1月と2022年1月の国際観光客到着数の差は、2021年全期間(2021年の1年間)における国際観光客到着数の増加分を上回っています。

特にワクチン接種率の伸びと健康衛生上の制限解除によって、旅行・観光産業は世界的な健康危機から徐々に回復しています。それでも、引き続き新しい課題や危機に直面することを念頭に、旅行・観光産業に大切なことは、長期にわたり包摂性、強靭性、持続可能性を定着させる取り組みです。

改善傾向があるものの、旅行・観光産業の回復には、未だに多くの障害が立ちはだかっています。これには、不公平なワクチン供給、(宿泊設備や、鉄道、航空の予約席などの)人数制限、労働力不足、サプライチェーンの寸断などが挙げられます。

アッピンクはさらに次のように述べています。「政府、企業、市民社会のリーダーたちは、それぞれの旅行・観光経済の長期的な発展とレジリエンスを促進する多様な要素を見極めることで、回復をよりスムーズにすることができます。意思決定者は、衛生・安全対策の強化を優先し、包摂的な労働慣行を促し、環境の持続可能性を向上させ、デジタル技術に投資することで、消費者の信頼と世界に開かれた体制を回復させることが必要です」。

2021年旅行・観光開発指数(Travel and Tourism Development Index 2021)」の概要

2021年の指数が最も高かったのは日本(第1位)で、米国(2位)が続きました。他に上位5か国にランクインしたのはスペイン(3位)、フランス(4位)、ドイツ(5位)です。

米国を除く上位10か国は、欧州やアジア太平洋地域の高所得国です。アジア太平洋地域では第1位の日本以外は、オーストラリアが7位、シンガポールが9位にランクイン。イタリアが(2019年の12位から)10位に順位を上げ、カナダは10位から13位に順位を下げました。

ベトナム(60位から52位)は指数全般が大幅に改善した一方、インドネシア(44位から32位)とサウジアラビア(43位から33位)は順位が著しく上昇しました。

2021年のランキング上位は、欧州、ユーラシア、アジア太平洋地域の諸国が占めましたが、欧州は圧倒的な強さをやや失い、世界で唯一、2019年以来平均スコアを下げた地域となりました。サブサハラアフリカ(サハラ砂漠以南の地域)は、指数が大きく向上しましたが、同地域の国々は世界平均の水準を達成するため、さらなる施策を講じることが必要です。

「2021年旅行・観光開発指数」は過去15年にわたり隔年で発表されている、「旅行・観光競争力指数(Travel & Tourism Competitiveness Index)」をさらに発展させたものです。これまでの競争力指数から開発指数へ変更された背景には、経済的、社会的な発展に旅行・観光産業が果たす全体的な役割と、ステークホルダーの連携や開発戦略の高い必要性が、2021年の指数では重視されていることが反映されています。枠組みと評価手法の変更や、その他の相違点を踏まえると、「2021年旅行・観光開発指数」は、2019年の指数との比較はできません。この問題に対処するため、新しい枠組み、評価手法、評価指標を使い、2019年の調査結果を算定し直しました。最新レポートに記載のあらゆる獲得スコアやランキングは、再算定後の2019年の指数と、「2021年旅行・観光開発指数」の間で比較しています。

持続可能でレジリエントな未来に向けた再構築

旅行・観光産業が世界の経済的、社会的発展に重要な役割を果たすと想定すると、今後数年は、同産業開発のけん引役となるものへの投資がきわめて重要になる、と同レポートは協調しています。各国は、旅行・観光産業の再構築を目指すのに合わせ、将来のリスクに対し、さらに包摂的、持続可能でレジリエントな旅行・観光産業の実現に専念しなければなりません。

この目標達成のために最も優先すべきイネーブリング・ファクター(実現要因)は、例えば、衛生・安全対策の向上によって、世界に開かれた体制と消費者の信頼を回復し、さらに強化させることです。これには、医療インフラや医療従事者への投資の増加や、低所得国への新型コロナワクチン供給の拡大などがあります。

またアッピンクは、次のように述べています。「包摂的で良好な労働慣行の構築、環境の持続可能性の向上、観光需要と観光の経済効果のマネジメント強化という取り組みによって、各国はその観光地の発展(開発)力を確実に高められるのです」。例えば、消費者がサステナブルな旅行や、自然に親しむ観光を選ぶ傾向が強まると、天然資源保護につながる持続可能な環境政策が不可欠になります。

デジタル技術も、この目標達成に欠かせません。新しいデジタルツールは、観光客流動の管理、観光体験の最適化、混雑緩和に役立てることができます。デジタル技術をフル活用して旅行・観光産業全体を成長させるためには、デジタル・デバイド(情報格差)、スキル格差、デジタル化への取り組みにすべての中小企業を参画させるといった課題に取り組むことが重要です。

<参考>

記者発表(5月24日(火)午後5時30分~)のライブおよびアーカイブはこちら
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