世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子
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2022年5月11日、スイス、ジュネーブ 世界のエネルギー転換の現状について、世界経済フォーラムが本日発表した特別報告書、「効果的なエネルギー転換の促進2022年報告書」(Fostering Effective Energy Transition 2022)では、世界中が1970年代以来最大のエネルギー危機に直面する現在、レジリエントなエネルギー転換を確実なものにするためには官民双方による早急な対応が必要であると示唆しています。
同報告書によれば、世界各国が包括的なエネルギー転換を早急に加速させなければならない背景には、燃料価格の高騰、物資の不足、気候変動対策の目標達成が進まないこと、公正なエネルギー転換やエネルギーアクセス確保の遅れなどがあります。
また同報告書は、各国におけるベンチマーキング年次レポートである、過去10年間のエネルギー転換指数から得られた所見をもとに、アクセンチュアと共同で発行されました。ここでは、エネルギー転換をどのように促進するか、各国政府、企業、消費者、その他のステークホルダーに向けた重要な勧告が示されています。
価格変動の激しいエネルギー市場に対応するためには、レジリエントなエネルギー転換とエネルギーミックスの多様化を優先させることが不可欠です。さらにクリーンなエネルギー需給への転換を加速させるために、多くの国が、拘束力のある気候変動計画を策定し、国、地域のエネルギーシステムの長期展望を示し、脱炭素化プロジェクトに投資する企業を誘致し、消費者や労働者が状況を受け入れられるよう支援する必要があると指摘しています。
「気候変動による最悪な結末を回避するための機会が急速に狭まっている中、各国は、エネルギーサプライチェーンが将来ますます混乱するという危機的状況にあります」と、世界経済フォーラム、エネルギーとマテリアル、インフラ部門長のロベルト・ボッカは述べています。「短期的には、エネルギーの安全保障、持続可能性、経済性という喫緊の課題の調整に難しい決定を下さなければなりませんが、現在は行動を強化すべきときなのです」。
同報告書は、持続可能性と、エネルギーの経済性、安全保障、利用可能性との間のバランスをとる上での構造的な障壁についても明らかにしています。新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)後のエネルギー需要の激増、燃料供給の遅れ、インフレ圧力、ウクライナ侵攻によるエネルギーサプライチェーンの再構築など、エネルギーシステムに対する複合的な打撃がこのような障壁を生む要因となっています。
この難局を乗り切るために、各国は、長期的なエネルギーミックス政策と、短期的な燃料やエネルギー供給者の選択という二つの側面から多様化を進める必要があります。大半の国では、わずか数か国からエネルギーを輸入しているのみで、エネルギー源に多様性がないため、供給が停止した場合のリスクに柔軟に対応できていません。同報告書では、34の先進諸国のうち11か国が、輸入燃料の70%以上をわずか3つの国でまかなっていると指摘しています。
また、世界経済フォーラムの、ベンチマーキングのためのエネルギー、マテリアル、インフラプログラム部門長エスペン・メーラムは次のように述べています。「人々や経済にとってエネルギーがどれほど重要であるか、現在のエネルギー危機で明らかになっています。今、重要なことは、顕在化している構造的なリスクに対処し、気候変動対応へのモメンタムを拡大させることです。成功の鍵を握るのは政策と投資です。エネルギー効率を優先し、クリーンエネルギーのインフラ、再生可能エネルギー、クリーンな水素、新しい原発建設への投資を増大させることでエネルギーシステムのレジリエンス(回復力、強靭性)が強化されます。効率の優先と投資拡大は、二酸化炭素排出量削減という観点から誰もが納得する対策となることでしょう」。
アクセンチュアのグローバル・エネルギー産業担当シニア・マネジングディレクターのムクシット・アシュラフ氏は、次のように述べています。「各国政府は経済的なエネルギー供給を確保しつつ、エネルギーシステムの脱炭素化に投資する必要があります。企業は、低炭素技術や省エネプロセスの導入に関心を向けなければなりません。重点を置くべき分野は、二酸化炭素排出削減が大いに期待できるバリューチェーンと産業脱炭素化イニシアチブ、例えば、循環型サプライネットワークやCO2ハンドリング・インフラなどのようなイニシアチブで、特に、顧客、サプライヤー、規制当局など複数のステークホルダーによる連携が必要となる場合です」
消費者を保護し、エネルギーへの経済的なアクセスを確保する必要もあります。アクセンチュア・ストラテジーのグローバル統括であるキャスリーン・オライリー氏は、「エネルギーや原材料の厳しい現況を乗り切る一方で、企業は、運賃、電気・水道・ガス料金などの生活費高騰から消費者を守らなければなりません」と述べています。
さらにオライリー氏は、「公正な価値をもたらし、スケーラブルな影響を及ぼす「持続可能なエネルギー転換」の検討にあたっては、社会的な弱者、特に、エネルギー価格の変動や、変動による他の生活必需品やサービス価格上昇に多大な影響を受ける人々に、戦略的に重点を置くべきです。大切なことは、社会的弱者の消費者が経済的な打撃に対処するための金融メカニズムを明確に定める一方で、省エネとサステナビリティサービスの実行を重視する企業向けのインセンティブを縮小しないことです」と続けました。
<参考>
「Country Transition and Benchmarking work(各国におけるエネルギー転換とベンチマーキングに関する取り組み)」と、「エネルギー、マテリアル、インフラ(Shaping the Future of Energy, Materials and Infrastructure)」プラットフォームの詳細を読む
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