世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子
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2021年6月2日、スイス、ジュネーブ - 6月1日~2日にオンラインにて開催された、世界経済フォーラム「ジョブ・リセット・サミット2021」には、成長、仕事、スキルと平等に関する新たなアジェンダ形成をめざし、政府、ビジネス界、市民社会から500人を超えるリーダー達が参加しました。
「パンデミック(世界的大流行)は既存の不平等を悪化させています。このままでは、望むことができるのは、K型回復(強いところがより強く、弱いところはさらに落ちる二極化)だけとなってしまいます。教育、リスキリング(新たな学び・研修)、質の高い仕事へのアクセスを拡大し、またジェンダー・パリティ(ジェンダー公正)、人種平等、社会的正義を実現し、早急に『より広く再構築』すること。そして新しい成長モデル、税制、経済展望および雇用創出に関わる重要な議論の場を提供することが、ジョブ・リセット・サミットと関連イニシアティブがめざしているコミットメントそのものです」と、世界経済フォーラムの取締役、サーディア・ザヒディは述べています。
リスキリング革命を加速する
第50回年次総会で発表されたリスキング革命のプラットホームは、2030年までによりよい教育、スキル、仕事を10億人に提供することをめざしています。
サミットではリスキング革命の中核となる新たなアライアンス、「SkillsLink(スキルリンク)」が発表されました。18社の多国籍企業とオンライン学習プロバイダーで始まったこのアライアンスは、2億人を超える「学び手」を対象するもの。スキルを労働市場の「通貨」とすることに焦点を当てています。この取り組みは、スキルの「共通言語」を採用、スキルベースの資格を認定、そしてスキルベースの学習を提供するためのパートナーとなり、スキルベースの労働力戦略を採用/サポートします。
また、サミットに参加した教育省の大臣たちは、テクノロジー企業やオンライン学習企業のリーダーたちと共に、経済回復政策の重要な部分として教育に焦点を当てる新たなイニシアチブ、「エデュケーション4.0」の基盤を築きました。
良い仕事と新しい経済
健全かつレジリエントで、公平な仕事の未来のための新しい基準を設定することをめざし、14の企業による「パートナー・フォア・ニューワーク・スタンダード)」が結成されました。参加企業は、労働組合や独立した専門家の意見を取り入れながら、良い仕事の基準の枠組みを共同で作成。各部門のこうした仕事の水準を引き上げることを約束し、また仕事の未来戦略を取締役会の議題として取り上げていきます。参加企業はこちら。
また、「ジョブ・リセット・サミット」ではBuilding Back Broader: Policy Pathways for an Economic Transformation(「より広い再構築:経済変革のための政策の道筋」(白書))も発表されました。この白書では、新型コロナウイルスの感染拡大からの復興にあたり、もっとも緊急性の高い経済・社会的課題を特定し、包括的な回復を形成するための具体的な対応策を示しています。焦点となる分野は、財政・金融政策、雇用と賃金、教育とスキル、公平性と社会正義、新しい市場の構築、そしてリスクの管理です。これら6つの分野において、経済内部および経済間のK字型回復という現在の傾向を是正し、より包括的な経済・社会的成果を生み出すための政策やパートナーシップを強調しています。
サミット期間中には、四半期ごとに発行される「チーフエコノミスト・アウトルック」(報告書)も発表されました。この版では、フォーラムのチーフエコノミスト・コミュニティのコンサルタントと調査に基づき、回復状態のスナップショットの提供、成長、インフレーション、負債の持続可能性、経済の傷と社会不安のリスクに関する予測が記載されています。
ダイバーシティ、公平性、インクルージョン、社会的公正の組み込み
2021年1月のダボス・アジェンダでは、ビジネスにおける人種公正パートナーシップのコアリションが始動し、13の産業と700万人の従業員を代表する58の組織が集まりました。このグループでは、新しい経済に平等を組み込むことをめざし、職場における人種問題の取り組み、構造的な変化推進に関する議論が進められました。
ジェンダーギャップ解消アクセレーターは、未来に向けてジェンダーギャップを解消し、ジェンダー・パリティを再形成すべく国家的取り組みをするグローバル・ネットワーク。世界経済フォーラムは、本取り組みをサポートしています。今回のサミットではカザフスタンがアクセレーターの設定を発表。また、中央アジア初となるるカザフスタンはアルゼンチン、チリ、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国、エジプト、パナマ、ペルーに加わり、職場の女性参加の向上、ジェンダー賃金格差の縮小、需要の高い分野のスキルアップとリーダーシップ進出のサポートに重点を置いた官民連携の創出をめざします。
最後に、パンデミックとその影響は、社会的公正を促すビジネス界の意欲を高める機会となりました。ESG(環境・社会・ガバナンス)の「S」をより明確にし、野心的な目標を達成するために、ビジネスリーダーたちと企業フィランソロピーの幅広い連携が行われました。
ジョブ・リセット・サミットについて
「ジョブ・リセット・サミット」はグローバル・エコノミーの急速な進化と不確実な背景の中で、もっとも緊急性の高い分野の議論に取り組み、行動の経路を提示し、もっとも影響力のあるリーダーと組織の連携を促して、成長、仕事、スキル、エクイティの促進加速をめざします。
今回のサミットは、ジョブ・リセット・サミット(2020年10月)およびダボス・アジェンダ(2021年1月)の成果に基づいており、2021年以降のさらなる行動の方向性が定められました。また、幅広い一般参加の機会を提供するライブストリーミング配信セッションと、オプションの議論、道筋の合意形成、新しい政策・実践・連立を通じた連携的な未来形成をめざす非公開の円卓会議の両方が活用されました。
<参考>
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世界経済フォーラムは、世界官民両セクターの協力を通じて世界の現状の改善に取り組むことを目的とする国際機関です。1971年に設立された同フォーラムは、政府、ビジネス界、学術界および市民社会の第一線で活躍するトップリーダーと連携し、世界をより良くすることを目的に様々な活動を行っています。(www.weforum.org.)