「世界競争力レポート特別版2020」: 公共サービスの改善、グリーン投資、デジタル化による長期的な繁栄の準備ができている経済圏は限られているとの調査結果

発行済み
2020年12月16日
2020
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世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子
Tel.: +81-(0)3-3560-6093 Naoko.Tochibayashi@weforum.org

  • 「世界競争力レポート特別版2020」は、新型コロナ感染拡大危機からの回復が、いかに生産的、持続可能かつ包括的な経済システムを構築することができるかを検証しています。
  • 先進的なデジタル経済、強固な社会的セーフティネット、強固な医療システムは、パンデミック(世界的大流行)に対しより適切な対応を可能にしています。
  • 同レポートは、景気回復と将来の経済変革に適している国々測定しています。
  • パンデミックの発生とそれに伴う景気後退に各国政府が臨時対応策を迫られた現状を鑑み、本レポートでは恒例のランキングを一時的に停止しています。
  • レポートの全文、インフォグラフィックスなどは、こちら

スイス、ジュネーブ、2020年12月16日 - 新型コロナ感染拡大の発生からほぼ一年が経過し、同危機が引き金となった不況は、経済的・社会的に深い影響をもたらし続けています。危機から無傷で脱出する国はない一方、今年のレポートでは、先進的なデジタル経済とデジタルスキル、強固な社会的セーフティネット、過去の伝染病への対処経験が、パンデミックの経済と人々への影響に対応する上で重要な要素であることが分かりました。

世界経済が回復へ向かう中、各国は低い成長への回帰に留まらず、視野を拡大していく必要があります。こうした中、「世界競争力レポート特別版2020:リカバリーに向けた各国の取り組み」は、今後の道筋を示しています。

今年の特別版では、回復と再生のための優先事項を概説し、各国でパンデミックの管理に最も貢献した特徴を評価。どの国が「生産性」、「人」、「地球」の目標を組み合わせたシステムに向けた経済変革に最も適しているかを分析しています。

「世界経済フォーラムは、短期的な成長だけでなく、長期的な繁栄へと焦点を広げるよう、政策立案者に促してきました。本レポートは、危機からの脱却に向けて、経済をより生産性が高く、持続可能かつ包括的なものにするための優先事項を明確にしています。経済システムの変革が今ほど重要な時期はないのです」と、世界経済フォーラムの創設者・会長のクラウス・シュワブは述べています。

新型コロナ感染拡大を通じて経済を相対的に回復力のあるものにした競争力の側面とは

パンデミックから無傷で脱出した国はありません。本レポートでは、パンデミックの経済と人々への影響をより適切に管理するために、いくつかの要素が際立っていることがわかりました。

  • ウイルス対策に取り組むための最も効果的な方法として、社会的な距離(ソーシャルディスタンス)を置くことが挙げられる中、先進的なデジタル経済とデジタルスキルを持つ国々は、国民が自宅で仕事をしている間に経済を維持することに成功しています。オランダ、ニュージーランド、スイス、エストニア、米国がその例です。
  • 経済が全面的に停滞する中、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、オーストリア、ルクセンブルク、スイスのように、強固なセーフティネットを備えている国は、働く事ができない人々を支援するために十分な体制を整えていました。同様に、フィンランド、米国、アラブ首長国連邦、シンガポールのような強力な金融システムを持つ国々は、中小企業が債務超過に陥るのを防ぐために、中小企業に信用供与をより容易に行うことができています。
  • シンガポール、スイス、ルクセンブルク、オーストリア、アラブ首長国連邦など、保健・財政・社会政策の計画と統合に成功した国は、危機の影響を緩和することに比較的成功しています。
  • 過去にコロナウイルスの流行を経験した国(例:SARS)は、より優れたプロトコルと技術システムを備えており(例:韓国、シンガポール)、他の国々よりも比較的良好に流行を食い止めることができたことを示す事例証拠があります。

危機の中で企業マインドはどのように変化したか

先進国では、デジタル化された仕事へのシフトが加速するにつれ、市場集中度が高まり、サービス競争力、企業間の連携などが低下。また、雇用市場で活用できる熟練労働者が減少していると、ビジネスリーダーたちは見ています。一方、プラスの面では、政府の変革能力の向上、企業内のコラボレーションの改善、ベンチャーキャピタルの利用可能性の増加などが挙げられています。

新興市場や開発途上国では、犯罪や暴力に関連したビジネスコストの増加、司法の独立性の低下、競争のさらなる低下と市場の優位性の増大、政治家への信頼の低迷などが指摘されています。一方で、政府の変化への対応、企業内の連携、ベンチャーキャピタルの利用可能性については、先進国と同様に肯定的な見解を示しました。また、デジタル化が進む労働市場によって促進される可能性のある、人材を引き付ける能力が高まっていることにも注目しています。

「深刻な不確実性の時代にあって、健康危機と景気後退は、成長と人や地球のための成果との関係を根本的に見直すことを余儀なくされています。こうした状況は、政策立案者にとって繁栄と環境の持続可能性を共有しながら生産性の高い新しい経済システムを形成する機会でもあるのです」と、世界経済フォーラムの取締役、サーディア・ザヒディは述べています。

今後の経済変革のために必要なものは?

本レポートでは、実現可能な実行環境、人的資本、市場、イノベーション・エコシステムの4つの分野で、再生と変革の道筋を検討しています。

  • 実行環境の変革: 政府が公共サービスの提供を改善することを優先するため、公的債務の管理を計画し、デジタル化を拡大することを推奨しています。長期的には、より累進的な課税、公共事業の改善、環境に優しいインフラの構築が推奨されています。
  • 人的資本の変革:人員整理制度から、新たな労働市場の機会への積極的な投資、再教育と技能向上プログラムのスケールアップ、回復を促進するためのセーフティネットの組み合わせへの段階的な移行を提唱しています。長期的には、指導者は教育カリキュラムの更新、労働法の改革、新しい人材管理技術の利用の改善に取り組むべきでもあります。
  • 市場の変革:前回の金融危機以降、金融システムは大幅に安定してきた一方、包括的になる必要があり、市場の集中化が進みモノや人の移動の障壁が高まっていることが、市場の変革を阻害する危険性があります。本レポートは、企業が持続可能で包摂的な投資に取り組むための金融的インセンティブを導入することを推奨する一方で、競争と独占禁止の枠組みを更新することを提言しています。
  • イノベーションのエコシステムの変革:過去10年間に起業家文化は花開いたものの、新しい企業、画期的な技術、そしてそれらを展開する製品やサービスの創出は停滞しています。本レポートは、研究開発への公的投資を拡大する一方で、民間部門へのインセンティブを与えることを提言。長期的には、各国は「明日の市場」の創造を支援し、企業が多様性を受け入れて創造性と市場の関連性を高めるようインセンティブを与えるべきであるとしています。

経済変革に最も準備ができている国は?

経済変革の概念は比較的新しく、これを分析するためのデータは限られています。本レポートでは、37カ国のデータを11の優先項目に照らし合わせてマッピング。どの国も復興と経済変革のための準備が完全ではないものの、他の国に比べて準備が整っている国もあることがわかりました。本レポートでは、準備態勢のスコアが10%向上すれば、これら37カ国のGDPの総額が、3,000億ドルの増加すると推定しています。

経済変革のための準備が最も整っている国は、下の表に示されているとおり。本レポートは、データ入手の可能性を理解した上で、深く吟味されるべきです。

主なハイライト

  • デジタル・インフラへの投資:より環境に優しく包括的な経済への移行は、デジタルネットワークの拡大を含む、インフラへの大規模投資が支えられなければなりません。デンマーク、エストニア、フィンランド、オラダは現在、これに最も適した準備を整えています。
  • グリーン・エコノミー:経済のグリーン化には、エネルギー・インフラ、輸送ネットワークの改善、官民双方からの環境保護に関する多国間協定の拡大と尊重のコミットメントが必要です。デンマーク、エストニア、フィンランド、オランダは、インフラを通じた経済変革を推進するための準備が最も整っています。準備に課題のある国には、ロシア、インドネシア、トルコ、南アフリカなどが含まれます。
  • 長期的な投資:実体経済への長期投資に財源向けるインセンティブを高めることで、安定性を強化し、インクルージョン(包摂性)を拡大することができます。フィンランド、スウェーデン、ニュージーランド、オーストリアは他の先進国に比べて比較的準備が整っているのに対し、現在世界最大の金融センターである米国は、この点で最も課題のある国であるという結果が出ています。
  • 累進課税の強化:より累進的な税制への移行は、経済変革の主要な推進力のひとつです。韓国、日本、オーストラリア、南アフリカは、比較的バランスのとれた累進的な税制を採用していることから、最も高いスコアを獲得しています。
  • 公共サービスの拡充:将来に備えた教育、労働法、所得支援が、社会保護の拡大と連動する事は不可欠です。ドイツ、デンマーク、スイス、英国は、適切な労働保護と新たなセーフティネットモデルを組み合わせるための準備が他国よりも比較的整っている一方、南アフリカ、インド、ギリシャ、トルコには課題が残ります。
  • 「明日の市場」のためのインセンティブ:研究、イノベーション、発明に対する忍耐強い投資を奨励し、拡大することで、新たな「明日の市場」を創出し、成長を促進することができます。フィンランド、日本、米国、大韓民国、スウェーデンは、「明日の市場」を創造するための準備が整っていると考えられますが、ギリシャ、メキシコ、トルコ、スロバキア共和国には、課題が残ります。

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