「仕事の未来レポート2020」:景気後退と自動化技術が仕事の未来を変える一方で、新たな仕事の需要も

発行済み
2020年10月20日
2020
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世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子
Tel.: +81-(0)3-3560-6093 Naoko.Tochibayashi@weforum.org

  • 労働の自動化は予想よりも急速に進みつつあり、5年後までに8,500万人が仕事を失うと予測されています。
  • ロボット革命により、9,700万人分の新たな仕事が創出される一方、ディスラプション(創造的破壊)により最もリスクに晒されるコミュニティに対する企業や各国政府の支援が必要です。
  • 2025年には、分析思考力や創造性、柔軟性といったスキルの需要が大きく高まり、データやAI(人工知能)、コンテンツ創造、クラウドコンピューティングといった職種の求人が増加するとみられています。
  • 将来最も競争力の高い企業として生き残るための条件は、現在の従業員のリスキリング(再訓練)やスキル向上への投資となっていくでしょう。
  • 仕事の未来レポート(10月21日ジュネーブ時間00:01リリース)と共に、ジョブ・リセット・サミットのライブ・ストリーミング配信をご覧ください

20201021日、スイス、ジュネーブ - 「仕事の未来レポート2020」によると、新型コロナウイルス感染拡大により、労働市場が予想以上に急速に変化していることが明らかになりました。世界経済フォーラムが発表した調査結果は、いわゆる「働き方の未来」といわれていたものが既に到来したことを示しています。

自動化、そして人間と機械の新たな分業により、2025年までに15の業界と26の経済圏の中規模・大規模企業で、世界で8,500万人の仕事が打撃を受けると予測されています。労働力の自動化とデジタル化が進み、データ入力、経理や事務といった分野の職種の需要が減衰しつつあります。企業の経営陣の80%超が、労働プロセスをデジタル化し、新たなテクノロジーを展開する計画を推進しつつあり、雇用主の50%が、社内の何かしらの役割の自動化推進を見込んでいます。雇用喪失が進んでいる一方で、これまでとは対照的に、雇用創出の鈍化が続いているのです。

「新型コロナウイルス感染拡大によって、「働き方の未来」の到来が前倒しされました」と、世界経済フォーラムの取締役、サーディア・ザヒディは指摘しています。「自動化の推進と、新型コロナウイルス感染拡大による景気後退がもたらした悪影響は、労働市場に以前から存在する格差に拍車をかけ、2007年~2008年の世界的な金融危機以降、少しずつ戻ってきた雇用の伸びをすっかり打ち消してしまいました。この二重のディスラプションにより、この困難な時代を生きる労働者に、新たなハードルが課されたことになります。この難局を主体的に乗り切るための絶好の機会はすぐに失われてしまうでしょう。。企業や各国政府と労働者は、世界の労働市場に向けた新たなビジョンの効果を発揮させるべく、早急に連携を深め行動を起こさなければなりません」。

企業に調査を行った結果、約43%の企業がテクノロジーの統合により人員削減を予定している、また、41%の企業がタスク特化型の仕事では業務請負人への発注を増やす予定だと回答。34%の企業が、テクノロジーの統合により人員拡充を予定していると回答しました。

2025年までには、企業では人間と機械が仕事を半分ずつ分担するようになると予測されています。これにより、「ピープル・スキル」を活かしたポジションの需要が高まるでしょう。そして、ホワイトカラーやブルーカラーの職種の中でも、情報やデータ処理、事務タスク、定型的な手作業の仕事等は、機械が主に担うことになります。

リスキリング革命が新たに喫緊の課題に

経済と労働市場が発展していく結果、介護、保育、看護などに形成されるケアエコノミー、第四次産業革命関連のテクノロジー業界(AI等)、コンテンツ創造の分野で、9,700万人分の新たな仕事が生み出されます。マネジメント、指導、意志決定、推論、コミュニケーション、交流等のタスクでは、機械に対する人間の相対的な優位性は保持されることになります。エンジニアリング、クラウドコンピューティング、製品開発等の分野での新たな職種はもちろん、グリーンエコノミー関連の仕事や、データやAI経済の最前線に携わる職種の需要も高まるでしょう。

5年後も今のポジションにとどまることができる労働者であっても、その内の約50%の労働者には、コアとなるスキルのアップデート(リスキリング)が必要になります。

現在の経済の落ち込みにも関わらず、多くの雇用主は、労働者のリスキリングの価値を認識しています。調査対象の内、平均して66%の雇用主が、現在の従業員のスキル向上とリスキリングへの投資の見返りは1年以内に見込めると予想しています。また、従業員の46%を組織内で配置転換できるだろうとも予測しています。ザヒディによれば、「従業員のスキルと能力、つまりヒューマンキャピタル(人的資本)への積極的な投資が、将来最も競争力の高い企業として生き残るための条件となっていくでしょう」とのことです。

より包摂的な仕事の未来を構築していくには

新型コロナウイルス感染拡大による、かつてない社会的変化による悪影響を最も被った人々やコミュニティは、既に最も弱い立場にある人々である傾向が高くなっています。積極的な支援の取り組みが欠如している中、テクノロジーの影響と、パンデミック(世界的大流行)による景気後退の影響という、二重の要因により、一層の格差の拡大が予想されます。

「仕事の未来レポート2020」のパートナーであるADPリサーチ・インスティテュートでは、米国の労働市場における新型コロナウイルス感染拡大の影響の調査を実施。2020年の2月から5月の間では、失業した労働者は概して若年層の低賃金の女性が多くを占めているということが、データから判明しました。2008年の世界的な金融危機で低学歴の労働者が被った影響と、新型コロナウイルス感染拡大による影響とを比較してみると、今回の影響の方がより一層深刻かつ以前から存在する格差をより拡大させる恐れがあると明らかになりました。

「新型コロナウイルス感染拡大の影響で、米国の労働力は大きな変化を遂げ、労働市場への影響をほぼリアルタイムで追跡することができました」ADP研究所労働市場調査の責任者であるアフ・イルディラマズ氏は述べています。「初期数ヶ月間の急速かつ驚異的な雇用の減少はこの「不況」の一つの異常な要素に過ぎません。産業の分布、企業規模、労働者の人口統計は、すべて新型コロナウイルス感染拡大によってもたらされた労働市場の変化によって混乱しており、この不況が現代の米国の歴史の中で他に類を見ないものであることを示しています」。

「パンデミックの影響は、多数の低スキル労働者に偏っています」と、仕事の未来レポートのパートナーである、Courseraの最高経営責任者(CEO)、ジェフ・マッジョンカルダ氏は述べています。「パンデミックからの復興には、職場復帰支援のため、労働者が仕事に関連するトレーニングをどこからでも受けられるように、教育機関が連携してリスキリングの機会を提供する取り組みが不可欠です」。

現在、リスキリングやスキル向上プログラムに公的資金を活用できているのは、世界中の企業のたった21%に過ぎません。公的機関は、労働者を支援するための3段階にわたるアプローチをとる必要があるでしょう。3段階とは、失業した労働者に向けたより強力なセーフティネットの提供、教育やトレーニングシステムの改善、そして未来の仕事と労働市場への投資を呼び込むインセンティブの設定です。

企業は、環境、社会、ガバナンス(ESG)指標を採用することで、従業員への待遇を評価し公開することができます。 こうした指標を用いることで、成功度を評価し、必要であれば支援を行い、新たな格差が発生してもすぐに特定・解消する、といった取り組みが行いやすくなります。

テレワークは普及したものの、適応が課題

雇用主の約84%は、テレワークの適用範囲の大幅な拡大等、仕事のプロセスにおけるデジタル化を急速に進めようとしています。また、従業員の44%をテレワークに移行させる可能性があるとも言っています。

仕事の未来レポートによると、企業経営陣の78%が、従業員の生産性に何らかの悪影響があるのではないかと懸念しています。この結果は、新型コロナウイルス感染拡大のパンデミックによって引き起こされたテレワークへの移行に迅速に適応するために奮闘を続けている業界や企業があることを示唆しています。

生産性とウェルビーイングに対する懸念に対処するため、全調査対象の内、約3分の1の雇用主が、従業員の間でコミュニティとしての一体感、つながり、さらに帰属意識を保てるように対策を講じる予定であるとしています。

「ニューノーマル」がキャリアの最重要事項に

全く異なる職種へ転職する労働者が増加しつつあることも、調査結果から明らかになりました。リンクトインが過去5年にわたって収集したデータによると、データとAI(人工知能)の職種に転職した労働者の約50%は、異分野からの転職者です。営業職では75%、ソーシャルメディア・マネージャーやコンテンツライター等の、コンテンツの作成・制作関連の職種では72%、エンジニアリング職では67%と、より異分野からの転職率が高くなっています。

データから分かる、リスキリング(再訓練)にかかる時間

「仕事の未来レポート」の調査結果によると、クリティカルシンキング、分析、問題解決といったコアスキルは、教育関係者や企業にとって、リスキリング(再訓練)とスキル向上における優先順位のトップであり続けています。2020年に新たに優先度が上昇してきたスキルは、レジリエンス(適応、回復できる力)、ストレス耐性、柔軟性といったセルフマネジメント系のスキルです。

Courseraのデータによると、ピープル&カルチャー、コンテンツライター、営業やマーケティングといった、需要の高い各職種でのトップ10のスキルは、リスキリング(再訓練)開始から1~2ヶ月で習得可能です。製品開発、データ、AI(人工知能)等の職種向けにスキルを拡充させていきたい場合は、2~3ヶ月、クラウドコンピューティングやエンジニアリング職に転向したい場合は、4~5ヶ月の学習プログラムで、新たなスキルセットの習得へと順調に進むことができます。

自主的にオンライン学習を受講する機会を探している人々の数は4倍、従業員向けにオンライン学習を提供している雇用主の数は5倍、政府のオンライン学習・プログラムの受講者数は9倍に増加しています。

また、現在雇用されている場合は自己啓発関連のコースを重視する傾向が、失業中の場合は、データ分析、コンピューターサイエンス、情報技術等のデジタルスキルの取得を重視する傾向がみられます。

「パンデミックは、仕事の未来に関する多くの動向に加速度的な影響を与え、労働者がリスキリング(再訓練)を行い、将来性のある仕事に移行する絶好の機会を、著しく減少させてしまっています」と、FutureFit AIの最高経営責任者(CEO)である、ハムーン・エクティアリ氏は述べています。「仕事とスキルに関するどのような予測を信じるにせよ、その変動の激しさが増していることと、既に最も脆弱で社会から取り残された人々ほど頻繁に仕事を転々とする傾向があるということに、違いはありません。仕事の未来レポートは、労働力の移行を通じて企業や政府を支援するための、重要な知見を与えてくれる源であり、FutureFit AIのデータと識見を仕事の未来レポートにて分かち合えて光栄です。世界経済フォーラムのニューエコノミー・アンド・ソサエティのコミュニティと、リスキリング(再訓練)革命プラットホームのパートナーとして、公正かつ労働者の目線で、データに裏打ちされた復興を成し遂げるために、貢献し続けることを心待ちにしています」。

仕事の未来レポート

仕事の未来レポート第3版では、将来需要が高まる仕事とスキルを概説し、その変化のペースもたどっています。その狙いは、2020年のパンデミック関連のディスラプションを、より長い経済的サイクルや、次の5年間でテクノロジーの採用や、仕事、スキルがどう変化するかの予想と展望、といった文脈の中で浮き彫りにしていくことです。仕事の未来レポートは、調査に基づいて作成されており、約300のグローバル企業(全社合計の総従業員数は800万人)を代表するシニアビジネスリーダーたち(概して最高人事責任者(CHRO)や最高戦略責任者(CSO))の予測に基づいたものとなっています。

最高人事責任者や最高戦略責任者の2025年までの人員配置計画や定量的予測を示しつつ、世界経済フォーラムのエグゼクティブや専門家コミュニティの専門知識も随所に活かされています。本レポートでは、現代の最も重要な課題のひとつを浮き彫りにするための、革新的な新たな指標を提供している、リンクトイン、Coursera、ADP、FutureFit.AIのデータを取り上げています。

<参考>
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