世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子
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2020年9月22日、ニューヨーク - 世界経済フォーラムは、企業が業種や地域を問わず報告可能である普遍的な環境・社会・ガバナンス(ESG)の指標と開示・報告の枠組みを発表しました。「人」「繁栄」「地球」「ガバナンスの原則」という柱を中心にまとめられたこれらの指標と開示・報告の枠組みは、既存の基準に沿ったもので、企業が非財務面を開示・報告することを可能にします。
第4回「持続可能な開発インパクト・サミット」で発表されたこのオープンかつ「マルチ・ステークホルダー」を取り込んだイニシアチブは、1月に開催された世界経済フォーラム年次総会2020でのコミットメントを実現したものです。同総会以来、世界経済フォーラムのInternational Business Councilの120名のメンバーがESG指標に対する強い支持を示しており、一部の企業は直ちにESG指標を報告書に組み入れることになると予想されています。
「ステークホルダー資本主義の進捗を測定~持続可能な価値創造のための共通の指標と一貫した報告を目指して~」と題した報告書は、極めて重要な時期の発表となりました。新型コロナ感染拡大のパンデミックにより悪化した社会不安、経済的不平等、人種的不公平は、企業、政府、標準化団体、NGOからの包括的で世界的に認められた企業報告制度への要求を加速させました。
世界経済フォーラムの創設者・会長のクラウス・シュワブは、「ステークホルダー資本主義を測定可能なものにする、まさに有言実行の時です」と述べています。「企業が環境および社会的責任を測定するだけでなく、報告することを受け入れることは、経済の歴史に大きな変化をもたらすことになるでしょう」。
バンク・オブ・アメリカ、デロイト、EY、KPMG、PwCと共同で開発されたESG指標と開示には、企業、投資家、基準設定者、NGO、国際機関とのオープンな協議プロセスを反映しており、一貫性のある包括的かつグローバルな企業報告システムに向けて、既存の開示・報告の枠組みをセットで提供するよう設計されています。
また世界経済フォーラムは、この作業と並行して、「インパクト・マネジメント・プロジェクト」と協力。5つの主要な独立したグローバル・フレームワークと標準設定者(CDP、CDSB、GRI、IRC、SASB)を結集し、今日発表された共通の指標を補完するものとして機能する、包括的な企業報告システムと意思表示に向けて作業を行っています。
企業は、社会的要因、気候的要因、その他の非財務的側面の重要性を、長期的な実行可能性と成功のために非常に重要であると考えています。世界経済フォーラムの調査では、経営者の約86%が、普遍的なESG開示と報告の枠組みが重要であり、金融市場や経済にとって有用であることに同意しています。
コメント
バンク・オブ・アメリカの最高経営責任者(CEO)で、International Business Councilの議長でもあるブライアン・モイニハン氏は、「企業は株主に大きなリターンを提供すると同時に、重要な社会的優先事項に取り組まなければなりません。これらの指標は、投資家やその他のステークホルダーに明快さを提供し、SDGsの進展に向けた資本の連携を確実なものにします。これこそが、ステークホルダー資本主義の実践です」と述べています。
「英国がイタリアの協力のもと、2021年11月にグラスゴーで開催される気候変動会議COP26の開催に向けて準備を進める中、世界経済フォーラムのInternational Business Councilが、持続可能な価値創造を報告するための共通の指標を作成したことを歓迎します」と、COP26に向けた英国首相の金融アドバイザーであり、国連の気候変動対策・ファイナンス担当事務総長特使でもあるマーク・カーニー氏は述べています。「この活動を通じて、企業が株主、ステークホルダー、そして社会全体に対して、低炭素未来への移行の一環として、環境への影響を測定・改善することにコミットしていることが示されています。私は、政府、規制当局、公式会計コミュニティ、および自主的な基準設定者が、本プロジェクトの画期的な作業に基づいて、世界的に認められた持続可能性報告制度の創設に向けて、International Business Councilと協力することを奨励します」。
また、デロイトグローバルCEOのプニート・レンジン氏は、「2020年の混乱は、経済、環境、社会への影響を管理・報告し、また長期的な企業価値創造に結びつける組織の重要性を強調しています。デロイトは、<ガバナンスの原則>の柱の開発を主導し、尊敬される多くの組織とこのプロジェクトに協力できたことを嬉しく思います。私たちの活動が、主要な年次報告書におけるESG指標と開示の一貫性のある報告に向けて動き出す企業を支援することを期待しています」。
EYグローバル会長兼CEOのカーマイン・ディ・シビオ氏は、「今こそ企業はステークホルダーとの関わりを広げる時です。気候変動、新型コロナ感染拡大、経済的不平等の複合的な影響は、企業が長期的かつ持続可能な価値創造を受け入れ、人と地球のニーズと広範な経済的繁栄の創造を優先することが緊急の課題となっています」と述べています。
「企業が社会問題や環境問題に取り組む上での自分たちの役割をより強く意識するようになるにつれ、ESGに焦点を当てた共通の測定基準に移行することで、私たち全員が一丸となって重要なところで違いを生み出すことができるようになります」と、KPMGインターナショナルのチェアマンであるビル・トーマス氏。また、「排出量や人権などのESG要因、その他の重要な指標を報告することは、投資家に情報を提供するだけでなく、企業の企業価値を完全にコントロールする事に役立つだけでなく、より広い社会の利益のために資本主義を再編成する力を持っています」と述べています。
「強力な非財務報告は、気候変動や社会的包摂などの問題に対処するために世界が必要としている体系的な経済改革の重要な要素であり、私たちはこのイニシアチブに協力し、<地球>の柱をリードできたことを嬉しく思います。投資家だけでなく、政策立案者、消費者、従業員を含むステークホルダーは、意思決定を行うために、より丸みを帯びた、比較可能な、強固な情報を必要としています。その情報をもとに、市場のインセンティブをこれらの指標のパフォーマンスと整合させることで、より良い明日を実現することが可能になります」。 PwCグローバルの会長、ボブ・モリッツ氏は述べています。
企業は、主要な報告書の中で、一連の指標をすべて報告することが奨励されています。「ステークホルダー資本主義の進捗を測定~持続可能な価値創造のための共通の指標と一貫した報告を目指して~」では、特定の測定基準が実現可能でない、関連性がない、または直ちに実施することが困難な場合には、「開示または説明」のアプローチを推奨しています。また、各企業が独自の「ダイナミック・マテリアリティ」の考え方を適用し、自社の事業やステークホルダーにとって重要であると判断されるものについて報告することを推奨しています。同指標は次の4つの柱を軸としています。
<人>
企業の公平性と従業員の待遇を反映しています。指標には、多様性の報告、賃金格差、安全衛生などが含まれます。
<地球>
自然環境への企業の依存度と影響を反映しています。この柱の測定基準には、温室効果ガスの排出量、土地の保護、水の使用が含まれます。
<繁栄>
企業が地域社会の財政状況にどのような影響を与えているかを反映しています。指標には、雇用と富の創出、納税額、研究開発費などが含まれます。
<ガバナンスの原則>
企業の目的、戦略および説明責任を反映します。この柱には、リスクと倫理的行動を測定する基準が含まれています。
国連総会と並行して開催される第4回「持続可能な開発インパクト・サミット」は、「持続可能な開発のためのグレート・リセットの実現」をテーマに、約3,200人のリーダーを集めて開催されています。同サミットは、気候変動に取り組み、持続可能な開発を推進するための起業家的なソリューションを開始し、加速させ、スケールアップすることを目的としています。
<参考>
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