貿易と投資

インドネシアとタイのOECD加盟申請で大きく変わること

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中国、ブラジル、インドのような非OECD諸国は、貿易や国際協力に大きな影響力を持ち、OECD加盟国を多様化する必要性が高まっています。 Image: REUTERS/Athit Perawongmetha

Spencer Feingold
Digital Editor, World Economic Forum
Charlotte Edmond
Senior Writer, Forum Agenda
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本稿は、以下センター(部門)の一部です。 地域、貿易、地政学
  • インドネシアとタイは、東南アジア諸国として初めて経済協力開発機構(OECD)への加盟を目指しています。
  • 加盟には、透明性から環境まで、さまざまな分野で厳しい基準を満たすことが求められます。
  • OECDのマティアス・コーマン事務総長は、「加盟プロセスは、インドネシアとタイだけでなく、OECDにも利益をもたらすだろう」と述べています。

1960年代の設立以来、経済協力開発機構(OECD)は一部の中・高所得国と関係を結んできました。

しかしここ数カ月、OECDはインドネシアとタイとの加盟交渉を開始。38カ国で構成されるOECDに、東南アジア諸国が初めて加盟する道を開く歴史的な動きとなっています。

OECDとは

OECDはフランスのパリに本部を置く国際機関。世界中の人々の経済的・社会的福祉を向上させる政策を推進すること目指しています。各国政府が社会、経済、環境の課題について協力し、国際的な基準やベストプラクティスを確立するためのプラットフォームとしての機能を担っているのです。

また、世界経済成長に関するデータ、分析、予測、および成長を促進するための政策提言を共有しており、加盟国を合わせると、世界のGDPの半分弱を占める規模の組織となっています。

北南米、ヨーロッパ、アジア太平洋にまたがる主要メンバー以外にも、100カ国以上と協力し、改革の推進を支援している一方で、現在、アフリカと東南アジア地域の加盟国はありません。

Members of the Organisation of Economic Co-operation and Development, by year joined (as of June 2024).
38カ国が加盟するOECD。 Image: Statista

インドネシアとタイの加盟が重要な理由

インドネシアとタイによるOECDへの加盟申請は、両国にとって戦略的な動きであるだけでなく、グローバル・ガバナンスの力学がより包括的かつ適切なものへと変化していることを示しています。

インドネシアとタイは、OECDへの加盟を目指すことで、自国の政策を国際的なベストプラクティスとガバナンス基準に合わせたいという意思表示をしているのです。さらに、加盟により投資家の信頼が高まり、新たな投資の誘致や経済成長の原動力となる可能性も見込めます。

インドネシアは2007年以来、ブラジル、中国、インド、南アフリカとともにOECDの主要パートナーとして、これらの国々と共にOECDの日常業務や政策協議に参加。一方、タイは20年以上にわたってOECDと協力関係を築いています。

「この加盟プロセスは、インドネシアとタイだけでなくOECDにも利益をもたらします」とマティアス・コーマンOECD事務総長は声明で述べています。「OECDの基準やベストプラクティスを遵守することは、加盟国と地域全体の開発と成長に有益な影響を与えるでしょう」

GDP growth in Indonesia.
インドネシアのGDP成長率は2024年に5.1%、2025年に5.2%と予測されています。 Image: OECD

しかし、OECDへの加盟は容易ではありません。インドネシアとタイは、気候政策やデジタルトランスフォーメーションから腐敗防止への取り組みまで、さまざまな分野で大きな改革を行う必要があります。また、自国の政治・経済システムをOECDの基準に合わせなければならず、これは困難かつ政治的にデリケートなプロセスとなる可能性を秘めています。

課題は大きいものの、同時に大きなチャンスであることもまた事実です。OECDへの加盟に必要な改革は、より良いビジネス環境を作り出し、コストの削減及び効率の向上も見込めます。

「OECDへの加盟手続きは、タイの改革課題を前進させ、投資先としての魅力を向上させます。そして、さらなる成長と所得・生活水準の向上を促進する一助となるでしょう」と、コーマン氏は付け加えました。

Global trade growth predictions.
アジアの非 OECD 加盟国は、世界貿易の成長に大きく貢献しています。 Image: OECD

戦略的・地政学的意味合い

現在、アジアでOECDに加盟しているのは、日本と韓国の2カ国のみとなっています。インドネシアは、購買力平価ベースで世界第7位の経済大国であり、G20に加盟する唯一の東南アジア諸国。一方、タイは東南アジア第2の経済大国であり、インドネシアと並んでアジア太平洋経済協力フォーラムの創設メンバーです。

ここ数十年で世界経済は劇的な変化を遂げました。中国、ブラジル、インドといったOECD非加盟国が貿易や国際協力に大きな影響力を持つようになり、OECDが加盟国を多様化する必要性が高まっているのです。

専門家は、インドネシアとタイのOECD加盟は、経済力がアジアにシフトしつつある世界において、OECDの存在意義を維持するのに役立つだろうと指摘。また、この2カ国の加盟により、OECDはこれまで以上に世界経済を代表する組織となり、国際的な基準や政策を設定する際の正当性が高まることが見込まれます。

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OECDとはインドネシアとタイの加盟が重要な理由戦略的・地政学的意味合い

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