サステナブルファイナンスが、有色人種女性の可能性を解き放つ
有色人種の女性を真に代表し、エンパワーメントする金融環境の形成へ。 Image: Pexels.
最新の情報をお届けします:
ジェンダーパリティ(ジェンダー公正)
- ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンの進展にもかかわらず、女性(特に有色人種)は経営陣として十分な存在感を示していません。
- グローバルな課題への取り組みを目的としたサステナブルファイナンスの実現には、多様な人材の登用が不可欠です。
- 変革的な変化と有色人種の女性の可能性を引き出すための、5つの実行可能な戦略を明らかにしました。
ジェンダー、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)の取り組みは、企業戦略に不可欠な要素となっており、2020年に75億ドルだったDEIのグローバル市場は、2026年には、2倍以上の154億ドルになると予測されています。しかし、このような進展にもかかわらず、女性、特に有色人種の経営幹部としての地位が著しく低いという厳しい現実が続いています。この格差は、単にジェンダー・ギャップの結果であるだけでなく、こうした上級職に就く準備ができている女性、特に有色人種の女性が不足していることによって、さらに悪化しています。
フォーチュン・グローバル500では、有色人種の女性最高経営責任者(CEO)が率いる企業は全体のわずか2%に過ぎません。また、グローバルリストでは、CEOを務める女性はわずか5.8%、29人です。女性の能力が劣っているわけではない明らかなエビデンスは存在しており、女性CEOが率いる企業は、過去10年間、RoA(総資産利益率)指標において、男性CEOが率いる企業を常に平均1.0ポイント上回っています。
しかし、多くの場合、このような課題は、ジェンダーと人種を切り離した形で区分けされ、これらの要因の交差性や代表者不足の他の要因は無視されています。ベンチャーキャピタル(VC)業界は、こうした同質性の顕著な例です。女性は投資家のわずか8%であり、VC投資家のわずか2%がヒスパニック系、アフリカ系は1%未満と人種的マイノリティの割合は著しく低くなっています。
サステナブルファイナンス:未開拓の可能性を認識
グローバルな課題に対処するために設計されたサステナブルファイナンスの分野で、多様なコミュニティや地域で金融戦略が正義、公平性、持続可能性を促進するためには、多様な代表が参加することが最も重要です。DEIイニシアチブへの投資が増加する中でも、「有色人種女性の未開拓の可能性を本当に認識し、活用できているのか」という重要な疑問は消えません。
ここでは、変革の鍵を握る5つの実行可能な戦略について詳しく説明します。
1. 包摂性の醸成:文化的障壁の打破
香港は、域内有数のグリーンファイナンスおよびサステナブルファイナンスのハブとしての地位を引き続き強めています。クライメート・ボンド・イニシアチブ(CBI)によると、香港で発行されたグリーンボンドやローンを含むグリーンで持続可能な債務の総額は、2022年に800億ドルに達し、前年比40%という大幅な伸びを示しました。
香港グリーンファイナンス協会(HKGFA)の事務局長、ジェニー・リー氏は、サステナブルファイナンスに文化的認識を取り入れることの重要性を強調。同氏は、ネットゼロへの移行を目指す上で、インクルーシブで公正かつ公平な行動の必要性にも着目しています。経営陣に多様性のある企業は、他の企業よりも優れた業績を上げており、ビジネスにおけるインクルージョンの価値が強調されています。
同氏が指摘するように、文化的な配慮がなされた企業は、インクルーシブなガバナンス構造を構築し、優れた投資事業戦略を設計しています。この戦略は、脱炭素が困難な部門がネットゼロに移行する過程で、労働力や地域社会に影響を与える構造的変化を緩和するだけでなく、経済成長と責任ある生産の新たな可能性を引き出すものです。このアプローチは、長期的な持続可能性の目標と株主価値に合致しています。
2. リーダーを味方につける:具体的な変化の推進
アップリンク(UpLink)・トップ・インベスターであるレキア・フーデル氏は、緊急の気候・環境問題に取り組むアフリカの起業家に特化したインパクトファンド、バルカ・ファンドのマネージングパートナーとして、制度的偏見に対抗する同盟者としてのリーダーの重要な役割について熱く語りました。インクルージョンを積極的に支持する同氏は、リーダーたちが多様性と包摂性の方針を提唱・実施し、インクルージョンを受け入れる文化を醸成すると同時に、リーダーシップチームの多様化に積極的に取り組む必要性を強調しています。このようなコミットメントは、ブラックロックの最近の調査結果とも一致しており、社員のジェンダーバランスがとれている企業は、同業他社の業績を毎年29%上回っていることが明らかになっています。同氏の洞察は、このデータと相まって、真にインクルーシブな職場づくりにおけるリーダーシップの行動の具体的なメリットを浮き彫りにしています。
3. 起業家と投資家のエンパワーメント:変革の原動力
BCGの調査によると、女性が創業したスタートアップに公平に投資していれば、5年間で8,500万ドルの追加投資が可能であったであろうことが明らかになっています。香港を拠点とするオルタナティブ投資会社、テンプルウォーターのESG担当バイス・プレジデント、フィオナ・チン氏は、インパクト投資の活気ある状況において、有色人種女性が主導する投資変革力を支持しています。このような投資によって、女性起業家に不可欠なリソース、メンターシップ、ビジネスネットワークが備わり、エンパワーメントが実現できます。同氏は、これによるジェンダー平等、経済力の向上、社会的流動性の醸成に対するコミットメントを強調しています。有色人種の女性がインパクト投資家として成功を収めれば、その知名度が触媒となり、アジア市場におけるエンパワーメントが起こり、それにより代表性が増し、さらにエンパワーメントされるというポジティブな循環を呼び起こすでしょう。
4. 機会を解き放つ:ゴールドマン・サックスの「ワン・ミリオン・ブラック・ウィメン」イニシアチブ
ゴールドマン・サックスは、100億ドルの直接投資と1億ドルのフィランソロピーにコミットし、変革をもたらす「ワン・ミリオン・ブラック・ウィメン」イニシアチブで先駆的な存在となっています。同イニシアチブは、根強いジェンダーバイアスと人種的バイアスに対処するため、主要なライフステージ(ヘルスケア、教育、住宅、スモールビジネス)に戦略的に資金を配分し、100万人のアフリカ系女性にプラスの影響を与え、機会格差を縮小することを目指しています。同イニシアチブの特徴は、全米規模の聞き取り調査を通じて集められた、アフリカ系女性の体験談や経験を基盤としていることです。わずか2年間で21億ドル以上の投資資金と2,300万ドル以上の慈善活動を展開した同イニシアチブは、21万5,000人のアフリカ系女性に影響を与えました。これは、ゴールドマン・サックスの平等へのコミットメントと、人生の重要な節目における機会の提供の証です。
5. 協力の促進:団結してインクルージョンを
サステナブルファイナンス業界に身を置く有色人種女性にとっては特に、インクルージョンと多様性の文化を育む上で金融機関同士の協力を促進することが最も重要です。ベストプラクティスを共有し、リサーチで協力し、業界全体のイニシアチブを確立することで、金融機関は障壁を取り除き、力を合わせてより多くの機会創出に貢献することができます。リー氏、チン氏、フーデル氏の3人は、より包摂的な未来に向けた具体的な協力の例を示しています。
- データ共有イニシアチブ
- 協力的なメンターシッププログラム
- 業界全体のワークショップやカンファレンス
- 政策に対する共同アドボカシー
- 組織横断的なダイバーシティ委員会
協力がもたらす力を探求する私たちの調査は一つの結論を得ましたが、行動を呼びかける声はこれまで以上に大きくなっています。有色人種の女性を真に代表し、力を与えるような金融情勢を集団で形成しようという呼びかけです。サステナブルファイナンス業界にある有色人種女性の未開拓の可能性を認識し、活用するためには、複数の組織が協力して取り組むことと実行可能な戦略が必要です。今こそ変革の時であり、今日の行動のひとつひとつが、より公平で豊かな明日につながるのです。
このトピックに関する最新情報をお見逃しなく
無料アカウントを作成し、パーソナライズされたコンテンツコレクション(最新の出版物や分析が掲載)にアクセスしてください。
ライセンスと転載
世界経済フォーラムの記事は、Creative Commons Attribution-NonCommercial-NoDerivatives 4.0 International Public Licenseに基づき、利用規約に従って転載することができます。
この記事は著者の意見を反映したものであり、世界経済フォーラムの主張によるものではありません。
アジェンダ ウィークリー
グローバル・アジェンダとなる、重要な課題のウィークリー・アップデート
メールに記載されているリンクを使って、いつでも配信を停止することができます。 詳しくはこちらをご覧下さい。 プライバシー・ポリシー.
もっと知る Trade and Investmentすべて見る
Lisa Satolli
2024年4月8日
Chris Gillam and Judy Wade
2024年3月18日
Campbell Powers and Claudia Ukonu
2024年1月9日
Spencer Feingold
2023年9月7日