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小粒でも強力:中小企業が認知経済(コグニティブ・エコノミー)で成功するには?

 データおよび人工知能(AI)の普及に伴い、私たちの社会は認知経済の時代を迎えつつあります。

データおよび人工知能(AI)の普及に伴い、私たちの社会は認知経済の時代を迎えつつあります。 Image: Unsplash/Bench Accounting

Olaf Groth
Professional Faculty, Haas School of Business, University of California, Berkeley
Supheakmungkol Sarin
Head of Data and Artificial Intelligence Ecosystems, World Economic Forum LLC
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本稿は、以下会合の一部です。ニューチャンピオン年次総会
  • AIによって加速する認知経済(コグニティブ・エコノミー)において、中小企業はグローバルな成長に必要となるデータ価値の活用という課題に直面しています。
  • このようなデジタル格差を埋め、中小企業がデータ価値の恩恵を得るために、中小企業に特化したコンサルティング領域がその一助になるかもしれません。
  • 中小企業に特化したコンサルティング領域では、競合しない中小企業ネットワーク内で横断的に専門知識、資金、データをてこ入れし、課題解決に向けた新たなアプローチを提供します。

データおよび人工知能(AI)の普及に伴い、私たちの社会は認知経済の時代を迎えつつあります。この変革期は、効率性の向上、意志決定能力の向上、人間と機械の共生関係を特徴としています。

この変化は中小企業にかつてないほど大きなチャンスをもたらす一方で、企業とそのエコシステムの認知的な変革に向けてITインフラを超えた高度なデジタルノウハウの獲得という課題を突きつけています。

多くの国で中小企業は企業全体の90%超、グローバルGDPの約70%を占めており、グローバル経済において中心的な役割を果たしています。認知的な変革においてその可能性を十分に発揮するには、中小企業に特化した新たなコンサルティングの形が鍵を握っているといえるでしょう。

認知経済における中小企業の課題

地域社会に根差している中小企業は、技術の向上と持続可能かつ責任ある形で社会を刷新していくために欠かせない存在です。しかしながら、中小企業は第4次産業革命がもたらす機会の活用を阻害する下記のような課題に直面しています。

  • 分断されたグローバルデータ市場およびデジタルプラットフォーム経済において、プライバシーやセキュリティーコンプライアンスなどデータ規制環境に適応しながら事業の拡大・グローバル化を図ること
  • バリューチェーン上流への攻撃が増加している状況で、ハッキングなどのサイバー攻撃のリスク増への備えが明らかに不十分であること
  • 巨大データプラットフォーマー(ハイパースケーラー)など大手多国籍企業と同じ土俵で勝負するために必要なデータ源へのアクセス、アグレゲーション、クリーニング、構造化、バイアス除去を行うこと
  • スマートで適応力のあるグローバル・オペレーションやサプライチェーン・ソリューションへの投資と人材を確保すること
  • チーフデータオフィサー、チーフ情報セキュリティーオフィサー、チーフテクノロジーオフィサー、チーフサステナビリティオフィサーなど、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の要職に専用人員を確保すること。AI開発者やデータ・サイエンティストの雇用はハードルが高いと感じる中小企業は多く、外注も競争力のある独自ソリューションの制限になるかもしれず必ずしも適切な解決法とは言えない
  • 生成AIや機械学習など急成長する認知テクノロジーと人間の能力との統合のバランスを図り、生産的な共生関係および人間にとって意味ある仕事を実現すること
  • 既存のビジネスモデルおよび市場に対する深刻な破壊的創造に直面した場合に、先手を打ってビジネスモデルを再定義し、組織を変革し、自社の位置付けを再構築すること。

結果として、特に生成AIなどの新興テクノロジーの出現もあり、その潜在力を大手企業のように十分に活用できず中小企業は出遅れているといえます

中小企業向けコンサルティングサービスとパラダイムシフト

中小企業が抱えるDX課題に対して多くのコンサルティング会社がガイダンスを提供していますが、リソース、体制、プロセスが不足している中小企業では、大手が提供する介在プログラムに割くだけのエネルギーや時間に乏しいのが現実です。

このギャップを解消し、中小企業が認知的なレジリエンス、即応力、成長と繁栄を社会的に実現するためには、官民が支援する新たな中小企業に特化したコンサルティング・ソリューションという領域に大きな可能性があります。

この新しいタイプのコンサルティングは、中小企業特有のニーズに合わせた機敏で柔軟かつ革新的なアプローチを提供することが可能です。大手コンサルティング会社、起業家、学界、公共部門といったステークホルダー間の相互協力によって限られたリソースを組み合わせることで、中小企業に機会を提供するのです。

さらに投資家や金融機関と戦略的なパートナーシップを締結してコンサルティング・アドバイスを活用したり、テクノロジー・プロバイダーや教育機関との提携は有益かつ費用対効果の高いツールの投入や能力開発にもつながります。

このような自己強化型のエコシステムを構築することで、中小企業は持続的な成長とイノベーションを増幅させることができるようになるのです。

政府が中心となって果たすべき役割は、財政的支援とインセンティブの提供、許認可関連業務の促進、中小企業コンサルティン領域の促進です。

こうしたコンサルティングのための財務モデルとしては、規模ベース、業績ベース、またはサブスクリプションベースの”コンサルティング・アズ・ア・サービス (Consultancy as a service) ”などが考えられます。

コンサルティング領域への資金調達モデルを検討する際には、予算・人員、組織内のチェンジ・マネジャーの手当てなどにリソースが限られている中小企業向けに、より「一口サイズ」のアジャイルでカスタマイズされたコンサルティングを提供するための、費用対効果が高く創意工夫に富んだ新手法の検討が重要となります。

中小企業をエンパワーするメリット

「現場に即した」アプローチは、中小企業とその経営陣の機敏性によってすぐに利益をもたらすでしょう。

最先端のAI駆動型のデータ支援ツールで中小企業内部の意思決定ノードを強化すれば、短期間で著しい成果が得られる可能性が高いといえます。規模が小さく、組織の複雑性も低い中小企業に特化したコンサルティング領域は、組織的な変化をより迅速に生み出す可能性があります。

中小企業による中小企業のための新たな認知コンサルティングモデルは、中小企業だけでなく、類似の課題に直面する非営利団体や学術機関を含む小規模な市民社会組織にも適応可能です。

データとAI、あるいはコンピューティングと神経科学の統合など、新たな認知テクノロジーと認知経済をめぐる知見へのアクセスを確保することは、中小企業がデータの潜在能力とその活用を通じてデータとAIの変革時代から恩恵を享受することを可能にします。

生成AIは中小企業に豊かな可能性を提供します。
生成AIは中小企業に豊かな可能性を提供します。 Image: 作者

こうした動きは、社会全体にも利益をもたらします。例えば、炭素情報の開示を含むサステイナビリティ関連のデータ・モニタリングと報告を最適化することで、効率性を向上させ、コストを削減し、サプライチェーンの透明性を高めると同時に、中小企業の環境負荷を低減させ、社会全体に利益をもたらします。

中小企業の重要な役割を認識し、必要な支援やリソースを提供するとともに、財政的、時間的コストの一部を負担することで、認知経済の成長、回復力、継続的な発展を推進する強力な力を引き出すことができるのです。

翻訳 - Hitomi Kinno

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