新型コロナウイルスのパンデミックがもたらした景気後退の後で急速に伸びた消費にエネルギー生産は追いつけていない。エネルギー需要があっという間に回復した半面、生産者は増産に苦戦しているからだ。

パンデミックに起因する経済の落ち込みとエネルギー価格低迷、さらにそれ以前の米中貿易摩擦を受け、2019年から20年にかけてエネルギーセクターの投資はずっと抑制されたままだった。

それ以降、世界経済は異例のスピードで持ち直した。中央銀行の低金利政策や債券買い入れに加え、政府の大規模支出が支えになった。そうした支出で重視されたのは、サービス部門でなくエネルギー集約型の製造業部門だったため、エネルギー消費も飛び抜けたペースで拡大した。

その結果として循環的なエネルギー不足が発生。全ての主要エネルギー消費国・地域で石炭、ガス、原油の価格が高騰し、在庫が平均を下回っていることから、深刻さが読み取れる。さらに20年終盤から今年初めにかけての北半球の寒さや、今年2月に米テキサス州を見舞った暴風雪、8〜9月の欧州における季節風の弱さ、米メキシコ湾に襲来した大型ハリケーン「アイダ」による石油生産の混乱などが、エネルギー不足に拍車をかけた。

中国ではここ数カ月、発電所で石炭在庫が低水準にとどまっていると報告され、政府は主要生産地域に緊急増産指令を発出した。こうした情勢を反映する形で、石炭先物価格は1年前の2倍以上に跳ね上がっている。

天然ガス市場の在庫に目を向けると、米国はパンデミック前の季節平均を5%、欧州は15%それぞれ下回り、期近の先物価格は1年前に比べて米国で140%、欧州で500%強、北東アジアで600%強も上昇した。

商業用原油在庫は、米国がパンデミック前の季節平均より5%低く、経済協力開発機構(OECD)加盟国も15〜19年の季節平均をおよそ5%下回っている。

ショックの反動

エネルギー産業はこれまで常に、振れ幅の激しさを示してきた。

生産や消費、在庫、価格に対する当初の足かせが強いほど、業界の直接的な対応とその後の波紋も大きくなる。今回のケースで言えば、足元で石炭やガス、原油の在庫が少なく、価格が高いのは、昨年のこの時期にパンデミック第1波を原因として高水準の在庫を抱え、価格が低迷していたことの裏返しだ。

未曽有の急激な景気回復を経て、世界の工業生産と貿易はパンデミック前、または貿易戦争前より1%弱下回る程度の水準にまで戻った。一方で世界全体の供給余力は、サービスよりずっとエネルギー集約的な製造業部門で特に限られるようになった。

このため世界のエネルギー消費は長期的なトレンドに非常に近い水準で推移している。もちろん幾つか例外はあり、中でも特に重要なのは、国際線旅客輸送向けのジェット燃料が急減していることだ。

ただ世界経済の大部分は需給ギャップがほぼゼロの状態にある以上、エネルギーシステムはじりじりと増える需要に応じるのに四苦八苦し、結果的に価格上昇が加速しつつある。

*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。