在宅勤務、昇進に影響の可能性 多様性確保に落とし穴
米シアトルで、子供あやしながら在宅で会議をこなす市議会議員のテレサ・モスケーダさん。 Image: 2021年 ロイター/Lindsey Wasson)
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労働力と雇用
在宅勤務は、ことダイバーシティー(多様性)確保に関しては惨事への入り口となりかねない。女性はコロナ禍後のニューノーマル(新常態)下で提示された柔軟な勤務制度を受け入れることになる可能性が高い。しかし新制度が意図した利点も、運用を誤れば女性の昇進の見通しを脅かす恐れがある。
想定される職場滞在時間は変化した。米国人約1万5000人を5カ月調査し、昨年12月に公表された研究結果によると、平均的な労働者の在宅勤務の頻度は4日間で1日と、コロナ禍前の20日に1日から高まった。
この変化は女性に恩恵をもたらすかもしれない。例えば小さな子どもを持つ母親は、通勤時間がなくなれば仕事をやり繰りしやすくなる可能性がある。ピュー・リサーチ・センターが昨年実施した調査によると、米国の女性の約3分の1は常に家で勤務したいと答えていた。男性ではこの割合が5分の1強にとどまる。完全な在宅勤務は極端な選択だとしても、これまで多くの女性上級幹部が、柔軟な勤務制度は自らの成功に寄与したと認めている。
しかし中国の旅行予約サイト大手、携程旅行網(トリップドットコム)の事例を見ると、在宅勤務の落とし穴が浮かび上がる。同社は2021年、リモートワーク制度を試験導入した。同制度の下、従業員の全体的な定着率と生産性は向上した。ところが、在宅勤務をした管理職クラスは代償を払うことになった。
週に5日出勤した人々に比べ、昇進の確率が半分にとどまったのだ。その後、当時の従業員約1万6000人全員へと制度の対象を拡大すると、同社ではリモートワークから職場に復帰する従業員が相次ぐことになった。昇進への懸念が理由だった。昨年の米論文の共同執筆者で、トリップドットコムの試験制度にも携わった米スタンフォード大の研究者ニコラス・ブルーム氏はBreakingviewsに対し、世界が新しい働き方に移行すると、女性も同様の運命をたどるかもしれないとの懸念を示した。
このリスクに雇用主が対処する方法としては、在宅勤務時間への上限設定や、出勤をアピールする従業員ではなく実績を評価する体系への取り組みが考えられる。トリップドットコムは仕事の成果に焦点を絞ることによって問題を解決した。また、考課と昇進について従業員が異議を唱えることができる仕組みも整えた。
時価総額240億ドル(約2兆6000億円)の同社は現在、最高経営責任者(CEO)、最高財務責任者(CFO)、最高執行責任者(COO)がすべて女性だ。10年時点では、この中で女性はCFOだけだった。職場を離れて勤務するからといって、心までお留守になってしまうとは限らない。
背景となるニュース
メキシコ自治工科大、米スタンフォード大、米シカゴ大の研究者らが12月に公表した研究論文によると、勤務日に占める在宅勤務日の想定比率は、コロナ禍前の5%から約25%に高まった。米国の労働者1万5000人を対象に、昨年5月から10月にかけて調査を実施した。
*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。
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