日本企業は温室効果ガス排出量削減問題で、企業だけの取り組みの限界に直面しつつある。ソニーを含めた複数の企業は、日本国内で再生可能エネルギーの利用拡大を政府に働き掛けているところだ。

彼らは、アップルなどの取引先が2030年にもサプライチェーンを含めた温室効果ガス排出量の実質ゼロ(カーボンニュートラル)を達成すると約束していることに対応、そうした意向に沿おうとしている。

ただ、いくらIT業界の巨人・アップルの要請があるとは言っても、政策担当者が立ち遅れていては、変革することはできない。

ソニー、ニッセイアセットマネジメント、花王、リコーの各社の最高経営責任者(CEO)は11月18日、河野太郎規制改革担当相と再生可能エネルギー普及に向けて意見交換を行った。4社は、欧州事業では製品の製造で再生エネルギーを最大50%利用できるのに、日本では1%前後にとどまる事例が多々あると訴えた。大口の購入先が向こう10年内での劇的な変革を要求する中で、日本企業が窮地に立たされている形だ。

自社の事業だけでなく、自社のサプライチェーン上に存在する他社の事業で排出された温室効果ガスの削減を義務付ける厳しい目標(スコープ3)を掲げる多国籍企業が増えてきている。

ソニーの取引先のアップルから、フェイスブック、スウェーデンの家具大手・イケアまで、さまざまな企業が30年時点のゼロエミッション達成という野心的な目標を既に採用。11月30日にはダイヤモンドの英デビアスも、今後10年で排出量をゼロにする計画を発表した。その3日後にはスイスの食品大手・ネスレが、50年までにゼロエミッションを実現すると約束した。

こうした目標は問題を第三者に押しつけるように見えるとはいえ、以前のように大手企業が問題の直視を避けていた局面よりはましだ。英ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンと中国の天津大学の9月の調査研究では、多国籍企業の世界的なサプライチェーンが、16年時点で二酸化炭素排出量全体の2割近くを占めていたことが分かっている。国境をまたぐ目標を設定すれば、企業は排出量の責任を単純に「アウトソーシング」できなくなる。

それでも政策担当者が対応を加速させない限り、企業努力だけでは不十分だろう。日本の場合、菅義偉首相が50年にカーボンニュートラルを実現する方針を打ち出したが、世界を見渡すと製造業の拠点となっている国は、もっと長い移行期間を確保している。

例えば、中国が発表した実現時期は60年だ。排出量をゼロでなく低減するという形で、より達成しやすい目標にしているケースもある。確かに再生エネルギーの使い勝手は向上してきたものの、新興国にとってはインフラ投資の負担が障壁として存在する。

こうした中で日本の大手メーカーは、何もせずリスクを背負うよりは、再生エネルギーを提供してくれる地域に移転するかもしれない。アップルなどのゼロエミッション宣言が本物であるなら、協力できないか協力する意思がない企業は「負け組」になってしまうだろう。

〈背景となるニュース〉

  • 脱炭素社会実現のために立ち上げられた「気候変動イニシアチブ(JCI)」は、ソニーなど加盟企業4社の最高経営責任者(CEO)が11月18日に河野太郎規制改革担当相と再生可能エネルギーの利用拡大について話し合ったことを発表した。企業側は、ある顧客から再生エネルギーを100%使った製品製造を30年までに供給するよう求められた事例を紹介した。
  • アップルは7月、製品やサプライチェーンを含む全事業で、向こう10年で温室効果ガス排出をゼロにする計画だと発表。アップルが公表した18年度の資料によると、ソニーはアップルのサプライヤーに入っている。

*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。