• 現在、世界中のイノベーターや大学の研究チームが新型コロナウイルスの封じ込め対策に乗り出しています。
  • 香港科技大学(HKUST)では、患者のケアをサポートする自動ロボットや、さまざまな感染性ウイルスを最大99.99%除去する殺菌剤といったイノベーションが生まれています。
  • 新型コロナウイルスのパンデミックのような危機に対して、大学は連携して解決策を考案することが求められています。

新型コロナウイルスが大陸を席巻し、膨大な数の感染者を出している中、さらなる拡大を阻止するために、世界中の保健当局、政策立案者、科学者、イノベーターたちが対応策を模索しています。このような深刻で長期化する可能性のある公衆衛生上の危機との闘いに貢献できる存在でありたいというのが、大学という組織が持つ揺るぎない信念です。

新型コロナウイルスは感染力が高いため、ウイルス保有者の迅速な発見から感染拡大の食い止め、ワクチン開発に至るまで、さまざまな解決策を見いだすことが急務となっています。香港科技大学(HKUST)の研究チームは、他の世界各地の研究者と同様に、新型コロナウイルスの制御のためのグローバルタスクフォースに貢献するため、寸暇を惜しんで努力を続けています。

発生のごく初期段階では、1月中旬に中国から新型コロナウイルスの遺伝子配列を入手した後、最先端のマイクロ流体チップ技術を利用したポータブル検査キットを開発しました。所要時間を40分にまで短縮したこの検査キットは、ウイルスを保有しているかどうかを短時間で正確に判断する上で非常に画期的でした。

感染制御の面では、さまざまな感染性ウイルスを最大99.99%除去できる殺菌剤「PECD殺菌コーティング」を開発しました。医療施設の空気清浄システムの微粒子フィルターにコーティングすることで、ウイルス伝播の抑制に役立ちます。この技術は、新型コロナウイルスによる肺炎患者を受け入れるために建設された救急病院である、中国湖北省武漢市の火神山医院ですでに取り入れられています。また、最近開発された新しい殺菌コーティング「MAP-1」は、新型コロナウイルスよりも耐性が強いウイルスを殺す効果があります。その用途としては消毒剤や塗料が挙げられますが、衣類やサージカルマスクに使用することで、公共の場における微生物汚染を長期的に防ぐ効果が期待できます。

さらに、HKUSTの研究チームが開発した全地形3Dマッピング技術や、大規模な視覚センサナビゲーション技術を搭載した自動運転車も、新型コロナウイルスの被害を受けた中国の複数の都市に配備されました。これにより、人との接触を最小限に抑え、人から人への感染リスクを抑制することができます。同様に、本研究室の同窓生が製作した数百台のロボットが、中国全土の病院や隔離施設に配備され、交差感染を防ぎながら患者に食事や薬を提供しています。

香港においてHKUSTは、体温モニタリングや検疫対策の面で新しいテクノロジーを駆使したサポートを政府に提供しています。また、サージカルマスクなどの防護装備や消毒剤が不足している状況から、これらの供給をコスト面でも時間の面でも効率的に生産する方法を開発することに研究資源を投入し、深刻化する物資不足の緩和を図ろうとしています。

The autonomous delivery robot delivers food and necessities to isolated patients and minimizes the risk of cross-infection from human contact
隔離された患者に食事や必需品を運ぶ自動運搬ロボット。人との接触による交差感染のリスクを大幅に低減できる。

新型コロナウイルスの発生に対する十分な対策を模索する中で、世界中の科学者が標的を特定してワクチンを開発するために尽力しています。研究成果のひとつとして、HKUSTでは新型コロナウイルスとSARSウイルスの両方の遺伝子配列に存在するB細胞およびT細胞エピトープを特定し、それが人体の免疫反応を引き起こすことを発見しました。この研究成果は先ごろ、科学誌「Viruses」に発表され、新型コロナウイルスに有効なワクチンの開発を促進するのに役立っています。

20% (red spots) of the SARS-CoV epitopes have an identical genetic match to SARS-CoV-2. They may be promising candidates for vaccine development.
SARSコロナウイルス(SARS-CoV)のエピトープの20%(赤い部分)が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と遺伝的に一致。ワクチン開発の有力な糸口となるか。

このような、状況が急速に進展する中で、大学間の連携による知識の共有や共同研究を、継続して取り組むことが重要です。ウイルス発生当初から難題の解決に挑み続けてきた大学もある一方、多くの大学は、今このような状況になり相次いでこの挑戦に参画しはじめました。大学関連のフォーラムとして定評がある、世界経済フォーラムの世界大学長会議(GULF)をはじめ、東アジア研究型大学協会AEARU)、環太平洋大学協会(APRU)、アジア大学連盟(AUA)などの世界各地の大学連盟のグローバルな連携が進めば、各大学が蓄積しているベストプラクティスを積極的に共有できるでしょう。

HKUSTはさまざまな国に学生がいますが、2月初旬から海外の学生に向けて没入型のインタラクティブなオンライン教育を提供しています。これで、フェローと体系的かつタイムリーに知識を共有したり意見を交換したりできるシステムが整備されたことになります。ツール、コンテンツ、インタラクティブに調査できる環境の充実、そして品質保証の確保は、大学としてさらに発展していく上で不可欠な要素としてHKUSTが取り組んでいることです。

Efforts to work collectively in knowledge-sharing and research collaboration are vital to combat the global challenges brought by Covid-19
新型コロナウイルスがもたらした地球規模の危機。そこに立ち向かうには、情報共有や共同研究を通じた一致団結した取り組みが欠かせない。

新型コロナウイルスの拡大はとどまるところを知りません。それを抑制するという共通の目標に向けて、充実したネットワークと大学間での連携という文化を有効利用し、ノウハウ、情報、設備を活用することが大学には求められています。「新たな知識を積極的に獲得する」「新たな解決策を考案するために革新的になる」「失敗や障害に負けず不屈の精神で挑む」という基本的な価値観に忠実に活動することで、この地球規模の危機に立ち向かうことができるでしょう。HKUSTにとっては、これまで提供していただいたすべての支援が貴重な財産となっています。HKUSTは今後も、各地のパートナーやフェローと緊密に協力しながら、新型コロナウイルスをはじめとするさまざまな問題に積極的に取り組んでいきます。