ダイバーシティの重要性や価値については、数多くの文章が書かれています。ダイバーシティは性別、人種、文化的背景、そして様々な習得技能などの面から、多種多様な見方と経験をもたらしてくれます。カタリストやマッキンゼーなどが、取締役に3人以上の女性を置いているなど、特に重役レベルの社員の多様性が高い企業における変化を調査した結果では、女性やその他のマイノリティといわれるグループの比率が業績や価値創生にも関わることも分かっています。

マッキンゼーによれば、経営陣の女性比率が全体の上位4分の1に入る企業の平均投資利益率が22%であるのに対し、女性比率がそれよりも低い企業では15%。同様に世界経済フォーラムは、女性の起業を支援すると世界の経済産出量が5兆ドルも拡大する可能性があると報告しています。

Gender diversity is correlated with both profitability and value creation.
ジェンダー・ダイバーシティは収益性や価値創造と相関
イメージ: McKinsey

公平性や社会正義の観点からすると、必要なのは平等な「場」、そしてそれぞれ自分が参加していると感じられるインクルーシブな環境を用意すること。

特に人口構造の変化に直面している現在、クライアントと顧客のマッチング、人材獲得と定着、成長に向けたグローバル戦略強化、そして世界の急激な変化に対応するためにイノベーション、柔軟性、想像力が早急に求められています。ダイバーシティとインクルージョンによって競争が有利になる要因は増えてきているのです。

また、多様性の欠如がもたらす不利益は、ダイバーシティがもたらす価値を、はっきりと示します。

1. 均質化のリスク 人間の強い所属欲求は組織の均質化をもたらし、優れた意思決定や多様な視点からの解決案がそれによって駆逐されてしまうことがあります。「集団思考」という言葉がよく使われますが、反対意見や批判的な見方、反証、経験があっても、集団の意見一致を得たいという強い欲求は、「集団思考」という形で現れることがあります。インクルージョンの恩恵の対極にある、エクスクルージョン(排他)という危険は、リスクを生みます。組織が一部の人間の声に耳を傾け過ぎて、他の人の話を聞かないという状態に陥りやすいのです。こうなると、話を聞いてもらえない人たちは自分の意見や事実、クリティカルシンキングを表明できる立場から除外されてしまいます。排他の危険こそが均質的思考をもたらし、リスクを生み出すのです。

2. 過信のリスク 女性を対象とした自己啓発本には、女性の自信欠如とされるものを批判する本が多く見受けられます。これには「自信の格差」という言葉が使われ、女性が自分に自信が持てないとか、率直に思っていることを話したり自分の業績を認めたりするのを躊躇するといった形で現れるとされています。しかしこの理論は、女性が持つ自信の感覚は男性と同レベルだが、それを表に出すと社会的な不利益を被るという複数の研究によって、誤りであると証明されています。

過信の危険について見てみましょう。強すぎる自負心が実際の問題として表に出やすい集団の中の支配的メンバーこそ、過度な自信を抱きがち。男性は自分の実績を過大に評価し、準備なしに喋ったり、相手が話していてもお構いなしに喋ったりする傾向があります。「競合的環境における男性のリーダーシップの出現」という2011年の研究では、数学の問題に関して男性は自分の過去の成績を30%高く評価する傾向があることが分かりました。こうした過信はリスクの大きい決定や準備不足の戦略につながる可能性があります。

過信は金銭的な被害ももたらします。ニューヨーク・タイムズのジェフェリー・ソマー氏は「『男の子はどこまでも男の子:ジェンダーと過信と普通株投資』と題する2001年の研究で、大規模なディスカウントブローカー会社の顧客35,000世帯以上の投資行動を分析した結果、他の条件が同じ場合、男性の株式取引回数は女性よりも50%近く多いことが分かったとしています。取引回数増加によって男性顧客の投資コストは増加し、収益は低下した」とも述べています。

女性は「知ったかぶり」をせずに男性よりも多くの質問をし、ポートフォリオに関して男性ほどリスクを取らないため、収益の高下もそれほどありません。どんな組織の意思決定でも一番大切なのは、自分の選択を過信する人たちと決定について疑問を持ちがちな人たちのバランスを取ること、そして答えに確信を持ちすぎないということです。

3. 信用毀損リスクとイメージの管理 損害賠償、企業が不正行為を認識していたにも関わらず何も行動を取らなかったか公表しなかったと訴える集団訴訟、活動家や機関投資家の動き、株価下落、製品やサービスの不買運動など、しっかりとした多様性ポリシーやプログラムが欠如した組織が被る影響は多くあります。職場の「#MeToo」運動(#MeToo at Work)調査に回答した専門職の女性の約55%は、「#MeToo」の疑いが明らかになった会社の仕事には応募しないとしており、49%はその会社の製品や株を買わないだろうと答えています。

また、カタリストの調査では、取締役に男女両方が在籍している会社の方が不正行為、汚職、贈収賄、株主紛争の事例が少なく、研究開発投資においても有効なリスク管理を実践していると分かりました。

カリフォルニア州職員退職年金基金などの年金基金は、取締役に女性を置くよう各企業に強く要請。ダイバーシティが欠如している会社に対しては株主総会で取締役の支持保留票を投じることも検討するとしています。また各州議会はハラスメントを助長するとの批判がある守秘義務契約と強制的仲裁を廃止する方向に動いています。カリフォルニア州議会は州内の上場企業に1名以上の女性取締役を置くことを義務付けており、義務化される女性取締役の数は年ごとに増加していきます。企業が時間と苦労を費やして良い評判を築き上げても、疑問視される行動は企業や幹部の評判はあっという間に地に落としてしまうのです。

ダイバーシティが組織、社会そして個人にもたらす恩恵をもたらす事を示し続けることは必須かつ極めて重要なテーマです。意図的であれ不注意であれ、ダイバーシティを無視または軽視した場合に被るリスクは見落とせません。労働力の多様性は、ビジネスそのものでもあるのです。