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アフリカの起業家からの、「AI」3つの教訓

AI-powered start-ups in Africa face a set of challenges not experienced by entrepreneurs in Silicon Valley

アフリカのAI関連スタートアップは、シリコンバレーの起業家が経験しなかった様々な課題に直面している。 Image: NESA by Makers / Unsplash

Jaco Maritz
Editor-in-chief, How we made it in Africa
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この記事は、世界経済フォーラムアフリカ会合の一部です。

第四次産業革命の流れに取り残されないために、他の地域同様、アフリカでも人工知能(AI)が企業、起業家、政府にとっての重要な課題となっています。アフリカ全体では、AI導入までの道のりはまだまだ長いのに対して、組織単位では、すでに目立った成果が出ています。ナイジェリアのモバイルローンプラットフォーム「カーボン」は、機械学習を利用して取引申請を審査。また南アフリカでは、いくつものファッション小売業者がアルゴリズムによって次のシーズンのベストセラー商品を予測し、ケニアの配車アプリ「リトル」はAIを利用してドライバーのパフォーマンスを評価しています。

アフリカが世界の舞台で存在感を維持するには、企業がAIを導入するだけでなく、現地の起業家がテクノロジーに対して株主資本を持つことが必須です。とは言っても、アフリカでAI関連の新興企業を設立するには、特に資金調達、人材、市場の受け入れ体制の面で、シリコンバレーの起業家が経験したことのないアフリカ特有の課題が伴います。

起業家のビアン・チナーは、この両方の世界を実際に体験してきました。不動産賃貸市場に機械学習を応用し、資金豊富な新興企業を米国で設立、のちに売却した彼は、現在はAIを使って消費者の行動を予測する、南アフリカを拠点とするXineohのCEOに就任しています。

アフリカでAI関連の新興企業を経営する中で、彼が得た3つの教訓を紹介します。

1. AI系スタートアップトアップ企業は、最初はなかなか高評価を得られない

「北米では、半日で南アフリカの1年分を超えるベンチャーキャピタル資本が調達されています」と、彼は語ります。南アフリカベンチャーキャピタルおよびプライベートエクイティ協会によると、アフリカのベンチャーキャピタル業界は、2017年、7,700万ドル(11.6億南アフリカランド)の投資を行っていますが、KPMGは同期間、米国で842.4億ドルのベンチャーキャピタル取引を行っています。これは、半日ごとに平均1.15億ドルに相当します。

チナーは経験から、南アフリカのベンチャーキャピタルは、一部の例外を除いて、シリコンバレーよりリスク回避の傾向が強いと言います。一方、アメリカを拠点とするベンチャーキャピタルは、一般的にリスクは大きいが革新をもたらすアイデアであり、それに賭けようとする傾向があります。一方、南アフリカの投資家は通常、実績のあるキャッシュフローがなかったり、手堅い魅力のない企業を避ける傾向にあるのです。

「シリコンバレーでは、基本的に会社の進む方向性を売り込む必要があります。スタートアップ企業は、製品を市場で発表してから初めて、正式な事業計画を作るというのが一般的的です」と、チナーは語ります。

「顧客からひとたびフィードバックが入れば、製品を市場に適合させるためのサイクルが始まります。米国のベンチャーキャピタルは、革新的な製品やアイデアを非常に高く評価しますが、南アフリカの場合はコンセプトやアイデアに基づいて投資を誘致するのは容易ではありません」

南アフリカのスタートアップ企業が直面しているもう一つの課題は、ベンチャーキャピタルの多くがAIソリューションを適切に評価するための専門知識を持つ人が内部にいないということ。チナーによると、技術者の経歴を持つ投資家が多いシリコンバレーとは異なり、南アフリカのベンチャーキャピタルの場合は、金融出身がほとんど。

資金調達先を探す際、海外に目を向けるのも選択肢の一つですが、簡単にできることではありません。アフリカ諸国の経済的、政治的状況もベンチャーキャピタルにとっては不安の種ですが、もっと大きな要因は物理的な距離です。新規参入の投資家は、距離的に近いスタートアップ企業を好む傾向にあります。チナーは、「サンフランシスコを拠点とするベンチャーキャピタルは、フェニックスやニューヨークの企業への投資には二の足を踏みがちです。人は、同じ都市を拠点とするチームを応援したいと思うもの。彼らはその動きから目を離さず、週に一度はチェックしたいのです」と言います。

米国西海岸の新興企業での勤務経験によって、しっかりとした人脈ネットワークを形成したチナー。このネットワークは、Xineohの資金調達の際に役立ちました。会社の資金調達のため、彼はカナダの投資家にアプローチしました。この投資家は、彼がそれまでに南アフリカで調達できた金額の10倍近い援助を申し出ました。

こうしたネットワークがなければ、アフリカを拠点とする起業家の場合は、米国の投資を誘致するのは難しいとチナーは考えています。

2. AI関連の人材に弱い

AI企業が成功するには、高い技能を持つデータサイエンティストが不可欠。ただし、こうした技能を持つ人材は、アフリカでは不足しています。

ステレンボッシュ大学データサイエンス・計算論的思考学部長のウィム・デルバは、ヨーロッパや北米のほぼ全ての大学では、新しい研究所、学部、学位プログラムを設立し、データサイエンスの課題と機会に対応している、と書いています。しかし、アフリカの教育機関がそのギャップを埋めるようになってきたのは最近のことです。

人工知能と機械学習は、テクノロジー、雇用、経済系のフォーラムやワークショップで話題を集めていますが、訓練を受けたデータサイエンティストの数はさほど増えていないとチナーは指摘。「南アフリカには、データサイエンティストになれる潜在能力を持った優秀な人材は十分いますが、どこかにそれがキャリアの選択肢にならない原因があるのです」。

チナーは、応用数学科の大学院生を雇い、最新のデータサイエンスのトレーニングを行っています。「今まで見た中でトレーニングに最適なのは、応用数学出身の学生です。理由はうまく説明できませんが、彼らの世界観と関連するのではないかと思っています」。

Xineohの人材採用戦略もかなり異色です。「当社では、面接結果が最も悪かった人の名前を人材派遣会社に出してもらうようにしています。政治的スキル、あるいは社会的スキルを欠いた人ほど、データサイエンティストに向いているんです」。

AI企業が商業的な成功をおさめるには、企業の上層部が理解できるように、複雑なアルゴリズムを説明できる営業担当者が必要です。南アフリカでは、こうした資質を持つ人材の発掘はハードルが高く、ジーネオでも幾度かの失敗を経て、応用数学の経歴を持つ従業員を営業担当者として指名する方針に切り替えました。「数は少ないですが、一定数は見つかります」と、チナーは語ります。

3. 企業がAIのメリットを十分理解していない

南アフリカにおけるAIのセールストークでは、教育的な要素の割合が多くなります。大手企業ではAIの重要性を認識していますが、ほとんどが情報収集や実験の段階にあり、業界規模でAIを導入するまでには至っていません。また、自社でAIソリューションを構築できると考えている企業が多いものの、社内でのイニシアチブが実現に至ることはほとんどないことをチナーは指摘しています。

AIソリューションの導入に特に積極的なのが、実店舗型の小売業界です。AIの分析対象となる小売業者のトランザクションデータは、一般的に好調のようです。その背景には、業界の競争が激しいことが要因として挙げられるとチナーは説明します。「南アフリカの小売業者が特に重視するのが顧客へのサービスと低価格です。その両方を成功させるには、精度の高いリアルタイムなデータが必要です。イノベーションに対して積極的な姿勢を取るのは、業界の競争が激しいからでしょう」。

とはいえ、ソフトウェアはグローバルな市場であり、マイクロソフト、オラクル、IBMなどの名だたるソリューションが世界中で使用されています。消費者行動予測分野におけるジーネオの競合2社はいずれも、南アフリカを含め、世界各国にソリューションを販売しています。

では、南アフリカを拠点とするAI企業が現地の市場に対応する見込みはあるのでしょうか?「あります」と、チナーは答えます。「現地の企業の方が、国内状況の微妙なニュアンスを把握しやすくなります。たとえば、アフリカの企業はたとえ大手企業であっても、米国の多国籍企業と比較すると、トランザクションデータが構造化されておらず、クリーンではないケースがほとんどです。これは、データ管理に割り当てるリソースが少ないことが典型的な原因です。その結果、先進国のAI企業のアルゴリズムは、アフリカでは未処理の非構造化データの対応に苦戦することが多くなります。しかし、現地の企業の場合は、データが非構造的であることを前提にして、ソリューションを構築するのです。

「こう考えてみてください。米国トップのハイテク企業は、F-16戦闘機のようなもの。非常に効率性が高いものの、離陸するには完璧に近い条件を満たす必要があります。対照的にミグ(別のジェット戦闘機)の場合は、舗装されていない滑走路からでも離陸できる上、F-16と同等の継続的なメンテナンスは必要ありません。つまり、現地企業の作るソフトウェアプラットフォームはミグなのです。頑丈で柔軟性があり、現地の状況に適した製品になるのでしょう」。

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Claire Ransom

2022年11月14日

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