仕事と働き方の未来

職場のエネルギーを見直す―刷り込みが招く見えない疲労

パソコンで作業をしながら、片手を頭に当てている女性。私たちの働き方に影響を与える、多くの静かな変革が職場で進行中です。

私たちの働き方に影響を与える、多くの静かな変革が職場で進行中です。 Image: Vasilis Caravitis /Unsplash

Almudena Cañibano
Professor of Human Resource Management, Department of Work and Human Relations, ESCP Business School
Emma Russell
Reader in Occupational & Organizational Psychology, University of Sussex
Petros Chamakiotis
Professor of Technology Management, Department of Management, ESCP Business School
  • 従来のオフィスでの経験が、仕事に対する認識を形作る心の刷り込みを生み出しています。
  • 従業員の活力を高めることを目的とした多くのデジタルイニシアチブが、往々にして予期せぬ精神的疲労の大きな原因となっています。
  • 現代の職場環境で成功を収めるには、リーダーたちやチームが、時代遅れの職業観に積極的に疑問を投げかける必要があります。

新型コロナウイルスのパンデミックの際、何百万人もの人々が、ほぼ一夜にしてリモートワークに移行しました。ビデオ会議、デジタルツール、非公式な交流の消失、仕事と私生活の境界線の曖昧化。すべてが急激に変化したのです。

この急激な移行に関する研究から、よく知られた課題に加えて意外な疑問が浮上しました。ストレスになると予想していたことが活力を与えた一方で、やる気を引き出すはずだったことが、かえって消耗の原因となってしまったのはなぜなのでしょうか。調査により、その理由が解明されました。それは「レガシー・インプリント(過去の刷り込み).」と呼ばれるものが原因だったのです。

過去の経験が現在を形作る仕組み

新たな職場環境を経験する前から、私たちはすでに期待を抱いています。何が疲れるか、何がやる気を起こさせるか、何が助けになり何がそうでないか、私たちは自然と分かっていると思い込んでいるのです。こうした期待は、何もないところから生まれるわけではなく、過去の経験、特に従来の対面式の職場環境での経験によって形作られます。例えば、私たちは、オフィスでの社会的交流は刺激的であること、新しいツールの習得は往々にして負担が大きいこと、仕事と私生活の混同はリスクを伴うこと、あるいは会議は仕事の進展に役立つことなどを学んできました。こうした心の基準点は、フィルターとして機能します。これらは私たちの「過去の痕跡」であり、習慣として仕事の状況を「努力を必要とする要請」と「私たちを動機付け、要請に対処する助けとなるリソース」のいずれかに分類します。しかし、仕事の文脈が突然変化したならば、何が起こるのでしょうか。

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リソースが消耗源となり、要請が活力源となる時

新型コロナウイルスのパンデミックにより、労働環境が一夜にしてリモートに移行すると、多くの組織は、バーチャルコーヒーブレイク、オンライン飲み会、Zoomでのチームセミナー、数多くのミーティングなどを通じて、オフィスでの和やかな雰囲気をリモート環境で再現しようと試みました。理論上、これらの取り組みは結束力と士気を維持することを目的としていました。言い換えれば、それらは「リソース」として設計されていたのです。

一方、私たちの調査に参加した人々は、それとは異なる体験を語りました。それは、不自然な交流、ぎこちない会話、そして増大する疲労感でした。当初は活力を与えてくれると思われていたものが、時が経つにつれて重荷になっていったのです。これはミーティングについても同様でした。

当初、ビデオ会議の増加はつながりを維持するために重要だと感じられていましたが、すぐに従業員たちは、終わりのない会議、画面ばかりの日々、「Zoom疲れ」、そして疲弊感を口にするようになりました。

私たちの調査によると、期待(「これは役に立つはず」)と実体験(「これはエネルギーを消耗させる」)とのギャップは、混乱を生み出した後に次第に認識が変化し、こうした社会的交流がもはや「リソース」としてではなく、「要請」あるいは制約として体験されるようになります。

逆に、当初は問題視されていた要素が、有益であることが判明したケースもあります。例えば、当初は負担が大きくストレスフルだと考えられていた、多数のデジタルツールの習得も、時間の経過とともに効率化の源と見なされるようになりました。こうしたツールにより、仕事がより効果的に構造化され、中断が減り、連携が強まったためです。同様に、気が散る原因として心配されることの多かった家族との近接性も、一部の人にとっては、心のバランスや感情的な支えの源となりました。精神的に「要請」として分類されていたものが、経験を通じて「リソース」として再分類されることがあったのです。

経験と期待の差

こうした再分類における転換点は、労働者が(過去の刷り込みに基づいて)感じるだろうと期待していることと、実際に経験することとの間に繰り返し生じる顕著な不一致にあります。新しいツールがストレスをもたらすと予想していたにも関わらず、実際にはより落ち着いて効率的に働くことができると気付いた場合、何かが私たちの解釈の枠組みに合わなくなり、以前の分類に疑問を抱き始めるでしょう。これこそが、過去の刷り込みを立ち止まって見つめ直す瞬間です。対照的に、経験が期待を裏付ける時(例えば、仕事の過負荷が依然として疲労をもたらす場合など)は、元の分類が維持され、過去の刷り込みが強化されます。

この力学は、パンデミックやリモートワークに限った話ではありません。AIツールの導入、頻繁な組織再編、あるいは経済や気候の不確実性などを通じて、仕事は急速に進化し続けています。こうした急速な変化のたびに、同じメカニズムが働き得ます。つまり、私たちは当初、過去から受け継いだ心的スキーマを用いて新たな事象を解釈し、その後の経験によってその期待が裏切られるか、あるいは裏付けられるかのいずれかを経験するのです。このメカニズムを理解することは、VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)環境下で労働者が変化に適応する上で不可欠です。

従業員とリーダーたちへの助言

これは、従業員とリーダーたちにとって何を意味するのでしょうか。まず、第一印象が常に信頼できるとは限らないことを認める必要があります。仕事上の変化に直面した際、「この状況を、自分が予想していた通りに体験しているだろうか」という単純な問いを投げかけることが役立つ場合があります。不一致を特定することは、建設的な再評価への扉を開くことになるからです。制約のように見えたものが何かを動かす「てこ」になることもあり、その逆もまた然りです。

第二に、昨日機能したことが明日も機能すると仮定すべきではありません。対面式のチームセミナーは刺激的である一方、そのバーチャル版は疲弊を招く可能性があります。逆に、複雑だと感じられていたツールが、実は効率化の源泉となることもあります。リーダーたちは、過去の慣行を疑いもなく再現するのではなく、チームが自分たちにとって真に役立つものと、真に負担となるものを率直に話し合える場を設けることにより、良い効果をもたらすことができるでしょう。

見た目以上に深い変革

私たちは、仕事の変革について、技術的または組織的な観点から語ることがよくあります。私たちの調査結果は、私たちの思考の枠組みに関わる、数多くの「静かな変革」が進行中であることを示唆しています。要請とリソースは、変わることのない仕事の特性として扱われます。一方、私たちの分析によると、要請もリソースも、文脈や、今までの経験の解釈によって左右されることが示されています。不確実性と急速な変化が特徴的な「仕事の世界」において、従来の固定観念を認識し、それに疑問を投げかけることを学習することが、現在および将来の労働者にとって不可欠なスキルとなる可能性があります。

時には、仕事がどのように変化するかよりも、その変化をどのように認識し、理解するかが最も重要になるでしょう。

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