若者の視点

若者の主体性への投資が、企業に不可欠な理由

ノートPCに向かう大勢の若い労働者。若者の主体性への投資は、これに投資する意思のある企業にとって潜在的な戦略的優位性をもたらします。

若者の主体性への投資は、これに投資する意思のある企業にとって潜在的な戦略的優位性をもたらします。 Image: REUTERS/Beawiharta (INDONESIA - Tags: BUSINESS EMPLOYMENT)

Lisa Knight Gibby
Deputy Executive Vice-President; Chief Communications Officer, Nestlé
本稿は、以下会合の一部です。世界経済フォーラム年次総会2026
  • AIによる変革、労働市場の混乱、信頼の低下によって世界が再構築されつつある中、ビジネスの成長の鍵は、若者を共創者としてエンパワーメントできるかどうかにあります。
  • 人材が広く不足する中、仕事や学びから締め出された何百万人もの若者の存在は、若者を経済に統合する仕組みに構造的な欠陥があることを示しています。
  • 若者に力を与える手段には、リバースメンタリング、ユース・アドバイザリー・ボード、企業内イノベーションラボなどがあります。

企業は今、古い確信を覆すような技術的、地政学的な大変革の瞬間に直面しています。AIは仕事のカテゴリー全体を変容させ、労働市場は二極化し、制度への信頼は崩壊しつつあるからです。このような環境下で競争優位性と長期的な成長を得るには、従来のビジネスモデルや過去の成功だけでは不十分です。それは、企業が若い世代の潜在能力を最大限に引き出せるかどうかにかかっているのです。

あらゆる市場において企業は、若者を育成し、彼らが経営陣と共に戦略策定に参画できる環境を整えることで、革新的な発想の膨大な資源を活用し、事業の将来的な持続可能性を確保することができます。若者に意思決定や解決策立案の能力を与える「若者の主体性への投資」は、もはや「あった方がよい」ものではありません。経済的レジリエンスと制度的信頼を求めるあらゆる企業にとって、戦略的要請なのです。

大きな賭け

若者に力を与えることの重要性は、データによって裏付けられています。2025年には、15歳から24歳の若者、約2億6,200万人(世界の約4人に1人に相当)が、就労、教育、訓練のいずれも受けていませんでした。同時に、あらゆる業界の雇用主が人材不足を報告し続けています。これは深刻な労働市場のミスマッチであり、将来の人材供給ラインを脅かしています。この不均衡を是正することは、世代によらず双方にとって有益な解決策となるでしょう。

近年のAIの急速な発展は、この課題をさらに深刻化させています。若年層の圧倒的多数はAIの力を認識しており、10人中9人が変革をもたらすテクノロジーだと捉え、60%がすでにスキル構築に活用しています。一方、世界経済フォーラムが100カ国以上で約4,600人の若年層を対象に実施した調査「ユース・パルス2026」では、回答者の3分の2が「今後3年間でAIにより初級職の求人が減少する」と懸念。これらの若手向けポジションが重要なのは、安定した雇用への伝統的な入り口としての役割を担っているからです。これらのポジションが減少することは、単に人材の無駄遣いにつながるだけでなく、多くの若者が経済的発展から取り残されていると感じる原因にもなり得るでしょう。

企業にとって、若者を軽視することの影響は極めて深刻です。イノベーションと消費者インサイトに依存する成長モデルは、新興テクノロジーや文化的変化に最も敏感なこの世代を無視しては、決して成功することはできません。若い消費者は需要の最先端に位置しています。このため、彼らが抱く新たなデジタルサービスへの見解や、食品・飲料の嗜好の変化に関する視点は、ビジネス上計り知れない価値を持っています。彼らを意思決定プロセスから排除することは、事業においてこの上ない悪手と言えるでしょう。

若者への投資は、私たちが長期的に成長し、バリューチェーンを将来にわたって強化していくための核心的な要素です。ネスレでは、若者が成功するために必要なスキルと経験を身につけられるよう支援することに重点を置いています。なぜなら、若者が成長すれば、私たちの地域社会とバリューチェーンも共に強化されていくからです。

リサ・ギビー、ネスレ副社長兼最高コミュニケーション責任者

企業が若者の才能を活用する方法

では、企業が若者の才能をより効果的に活用するためには、具体的にどのような手段があるでしょうか。第一に、形式的な関わり方から脱却する必要があります。代わりに、経営者は真の意味での共創を促進しなければなりません。若手リーダーたちが経営陣と協力し、従来の考え方に挑戦しながら新たな解決策を設計していくような環境を作り出すのです。これは単に意見を聞くということではなく、職場での権力構造そのものを共有することを意味します。

この変革を支援する実践的なツールは複数存在します。例えば、リバースメンタリングプログラムでは、若手社員が自身の知識や視点をより経験豊かな同僚に伝えることで、従来の上下関係を逆転させます。このボトムアップ型のメンタリング手法は、世代を超えた知識共有を促進する効果が実証されています。

また、「ユース・アドバイザリー・ボード」(青少年諮問委員会)を設置することも、若者の洞察を企業の意思決定に反映させるための重要な仕組みとして有効です。ただし、これを単なる周辺的な取り組みとして扱うのではなく、ガバナンスの中核に組み込むことが重要です。適切に運用されれば、ユース・アドバイザリー・ボードは長期的なリスクと機会に関する戦略的思考を研ぎ澄ます役割を果たします。また、企業の「イノベーションラボ」も、従来の企業制約の外で創造性を育み、新たなアイデアを検証する場として、若手起業家や従業員が事業部門と直接協働できる仕組みを提供することで、世代間の架け橋となり得るでしょう。

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企業を超えた集団的な取り組みも重要です。2014年、若年失業問題が深刻化していた時期に欧州のネスレが中心となって設立された「グローバル・アライアンス・フォー・ユース(Global Alliance for YOUth)」は、若者の就労スキル育成に特化した企業初の運動体です。2019年にグローバル展開を拡大して以来、同アライアンスは400万人以上を雇用する22の多国籍企業を結集。これまでに4,000万件以上の若者向け育成機会を創出してきました。その価値は規模だけでなく、連携にあります。各企業が単独で行動するのではなく「ビジネスコミュニティ」として一体となって行動することができるのです。

信頼という配当

ここには、企業にとって重要な「信頼という配当」が存在します。企業の動機に対する根強い懐疑的な見方がある中で、世代を超えた連携は信頼性の再構築に役立ちます。若い世代は企業の存在意義を重視しており、特に気候変動や多様性といった重要な課題に対して真の参画を促す企業は、より多くの人材を引きつけ、市場において消費者の支持を得やすくなるでしょう。

このような世代間の協力関係を築くには、確固たる決意が必要です。権力の不均衡は深く根付いており、意思決定の共有には不都合な真実を受け入れる覚悟が求められます。一方で、その見返りは非常に大きなものです。企業は、デジタルネイティブであるだけでなく、ビジネス上の課題に対して異なる思考モデルをもたらす若いリーダーたちから多くの恩恵を受けることができるからです。

急速な変化の時代において、企業が問うべきは「若者の主体性に投資する余裕があるかどうか」ではなく、「投資しない場合の損失がどれほど大きいか」なのです。21世紀におけるビジネスの成長は、技術と経済力の加速的な変化に適応する能力にますます依存するようになると考えられます。この変動の激しい世界で成功する企業は、持続可能な繁栄を形作る上で若者を不可欠なパートナーと認識する企業になるでしょう。

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