グローバルな協力体制

激動の時代の新興市場で重要な「レジリエンス」とは

ベトナムの道路を走るたくさんのバイクのイメージ。新興市場は、今後数十年にわたる経済の潮流を形作る可能性を秘めています。

新興市場は、今後数十年にわたる経済の潮流を形作る可能性を秘めています。 Image: Unsplash

Børge Brende
President and CEO, World Economic Forum
Bob Sternfels
Global Managing Partner, McKinsey & Company
  • レジリエンスの構築は、特に新興市場において、各国政府や企業にとっての中核的な優先課題となっています。
  • レジリエンス・コンソーシアムの新たな白書は、準備態勢は改善されているものの、新興市場の企業の多くが、深まる混乱の中で事業運営に必要な能力を依然として欠いていることを明らかにしました。
  • こうしたギャップの解消には、各国政府、企業、多国間開発銀行による協調的な行動が必要です。

かつてレジリエンスとは「回復力」、つまり、ショックの後に企業や経済がどれほど迅速に通常業務に戻れるかを意味していました。この定義は今や時代遅れです。今日、混乱はもはや例外ではなく、現在の環境を特徴づける要素だからです。

持続する混乱下のレジリエンスは、短期的に生き残ることだけでなく、見通しが不透明な状況下でも投資、革新、成長を続けることを意味します。

世界経済フォーラムのレジリエンス・コンソーシアムは、マッキンゼー・アンド・カンパニーの協力を得て、リーダーたちがこの変動の激しい事業環境にどのように対応しているかを分析してきました。270名以上の経営幹部からの知見を基に作成された新たな白書『Resilient Firms and Economies: How Companies, Governments, and Multilateral Development Banks Can Unlock Growth in Emerging Markets(レジリエントな企業と経済:新興市場で成長を解き放つための企業、政府、多国間開発銀行の役割)』は、リーダー層が競争力確保にレジリエンスを重要視する一方、主要なレジリエンス領域における混乱への対応能力を備えていると感じている企業は4社に1社に過ぎないことを示しています。

成長の重要な牽引役であるけれども不安定な外部環境にさらされやすい新興市場においてビジネスを成長させるには、レジリエンスを優先し、先を見据えたアプローチを取ることが特に重要です。

レジリエンスの核となる新興市場

新興市場は機会とリスクの交差点に位置しています。グローバル経済成長の最もダイナミックな原動力である一方、気候変動、地政学的分断、サプライチェーンの混乱の影響をより受けやすい傾向にあるからです。

一方、新興市場の可能性は計り知れません。IMFの2025年版『世界経済見通し(WEO)』データマッパーによると、新興市場と開発途上国はグローバルGDPの60%を占めています。新興市場がショックに耐え、迅速に適応しつつ将来への投資を継続できれば、短期的、長期的な成長に向けたより有利な立場を築くことができるでしょう。その恩恵は、サプライチェーンの安定化、グローバル経済の強化、共有されるグローバルな優先課題の進展の加速など、広範に及びます。

一方、インフラ強化、デジタル化の推進、資本へのアクセス改善、予測可能な政策環境の整備がなければ、構造的課題により、投資と生産性が抑制される恐れがあります。その結果は成長の鈍化にとどまらず、これらの経済圏全体における機会の喪失につながります。

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レジリエンスを成長へ転換する4つの優先事項

次の4つの優先事項を大規模かつ同時に推進することで、レジリエンスの構築と成長の促進が可能となるでしょう。

1) インフラとサプライチェーンの強化

信頼性の高いエネルギー、輸送、物流は、安定かつ競争力のある経済の基盤です。多くの新興市場では、インフラの不足が依然として混乱への脆弱性を高め、生産性の足を引っ張る要因となっています。

進展を加速させるには、より良い調整が鍵となります。政府は明確な優先順位を設定し、現実的なプロジェクト計画を構築することができます。また、多国間開発銀行(MDB)は、リスク軽減とプロジェクトの実行可能性向上に貢献できます。その後、民間資本が大規模な実現を支援します。

これらの動向を総合すると、協力を支える重要な実践的要素が浮かび上がります。リスク分担を可能にするブレンデッド・ファイナンスのアプローチ、より明確で一貫性のある保証枠組み、そして現地の市場状況(適切な場合には現地通貨ソリューションを含む)に適合した革新的な資金調達オプションです。

2) デジタル化とスキル開発の加速

デジタル・インフラは生産性やグローバルバリューチェーンへの参加において重要な役割を担っていますが、多くの新興市場ではアクセスと普及に依然として格差があります。重点的な協働により、こうした格差の解消を図ることができるでしょう。

開発金融機関、商業金融機関、民間事業者を結集するパートナーシップは、デジタル・インフラの効率とレジリエンスを高めると同時に、現地の能力強化にも寄与します。同時に、デジタルスキルや現地のイノベーション・エコシステムに投資することにより、技術の導入が、接続速度の向上だけではなく、より広範な経済機会につながります。

3) 中小企業向け資本アクセスの拡大

中小企業は雇用とイノベーションを牽引しますが、その多くが依然として資金調達に苦労しています。一般的な障壁には、リスク認識、高い担保要件、未発達な信用市場などが挙げられます。

リスク分担の仕組みを適切に設計することにより、インセンティブを転換し、融資をより実現可能なものにすることができるでしょう。また、実践的な助言支援と組み合わせることで、これらのツールは、サービスが行き届いていない起業家や小規模企業に対する、地元の金融機関の融資拡大につながります。こうした取り組みを慎重に規模拡大し、現地の状況に合わせて適応させることで、現在多くの中小企業にとって手の届かないビジネス成長の可能性を解き放つことができるのです。

4) 政策上の摩擦と不確実性の低減

資本が利用可能であっても、不明確または変動する政策が投資を遅らせる可能性があります。予測可能な制度と一貫した意思決定があれば、目に見えるリスクが軽減され、投資家が長期的に資本を投入することができるようになります。これはまた、安定した政策枠組みを通じてだけでなく、直接あるいは魅力的なパートナーシップモデルを通じて、外国企業の市場アクセスを確保することで、海外からの長期投資に対するより強力なインセンティブを創出することを意味します。

各国政府が活用可能な実用的なツールも存在します。例えば、官民連携に関する既存のリソースやガイドラインには、プロジェクトの構築や資金調達を容易にする標準条項やリスク配分に関する一般的なアプローチの例が示されています。こうした参考資料を活用し、常に最新の状態に保つことで、準備期間の短縮、銀行融資の獲得可能性の向上、国家の優先事項に向けた投資の誘導が可能となるでしょう。

先行費用を回収可能なレジリエンス設計

レジリエンスのギャップが解消されない理由の一つは、短期的にはレジリエンス対策にかかる費用が高額であり、多くの新興市場国が厳しい財政状況にあることです。

だからこそ、協力が重要となるのです。政府が明確かつ信頼性の高いプロジェクト計画を示すことで、企業はより確信を持った投資が可能となります。また、多国間開発銀行(MDB)が優先投資のリスクを軽減し民間資本を動員すれば、レジリエンスのコストは低下し、リターンは向上。さらにレジリエンスを成長戦略として位置づけることで、投資を段階的に進めることが可能となります。影響力の大きいボトルネックから着手し、並行して能力を構築し、成果を測定することで、時間の経過とともに進捗が積み上がっていくのです。

新興市場は、今後数十年にわたる経済の潮流を形作る可能性を秘めています。その物語が持続的な機会となるかどうかは、そのレジリエンスにかかっています。

レジリエンスと成長は二者択一ではありません。適切に構築されたレジリエンスこそが、成長を可能にする基盤なのです。

白書の全文はこちら。また、レジリエンス・コンソーシアムの活動に関する最新情報はこちら

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