経済成長

「世帯」が動かす、世界経済の発展

各世帯の家計が経済の発展に影響を及ぼします。

各世帯の家計が経済の発展に影響を及ぼします。 Image: Ninthgrid/Unsplash

Anna Kiknadze
Thought Leadership Associate, World Data Lab
Jonathan Haigh
Chief Product Officer, World Data Lab
本稿は、以下センター (部門)の一部です。 ニューエコノミーとソサエティ
  • 住宅費を10人で分担する世帯は、単独でその費用を負担する単身世帯とはまったく異なる経済的制約のもとで運営されます。
  • 企業や政策立案者は、こうした世帯形態から実践的な示唆を得られるでしょう。
  • 異なる市場における消費動向、住宅需要、社会政策の必要性を予測する場合は、これらのパターンを理解する必要があります。

多くの経済分析は個人に焦点を当てています。個人の所得、支出、生産性などです。一方で、支出の決定が行われるのは世帯単位であり、家族の力学、共有資源、集団的なニーズが購買決定に影響を与えます。住宅費を10人で分担する世帯は、単独でその費用を負担する単身世帯とはまったく異なる経済的制約のもとで運営されます。

個人の視点から世帯の視点へ視点を移すと、こうした構造的な差異から、個人レベルのデータでは捉えきれない経済的パターンが見えてくるでしょう。欧州の調査会社 ワールド・データ・ラボの最近の調査では、消費、市場行動、開発におけるグローバルな差異が、世帯という概念によって説明できることを明らかにしています。

世帯規模

グローバルな人口の50%以上が5人以上の世帯に含まれています。この割合は今後も増加し続けると予想されますが、世帯規模は所得水準と直接相関しています。低所得層では83%が大世帯で生活し、中低所得層では72%、中高所得層では37%が大世帯です。この割合は、小規模世帯が経済的に成立する高所得層ではわずか26%にまで低下します。

経済の発展と世帯規模別人口分布
経済の発展と世帯規模別人口分布

世帯形態は地域によっても大きく異なります。中東・北アフリカでは人口の75%が5人以上の世帯で生活しており、サブサハラ・アフリカでは80%に達します。北米ではわずか27%です。ヨーロッパは例外で、2人世帯が最大の割合を占めますが、全体としては他の地域に比べ、様々な世帯規模がより均等に分布しています。

経済の発展と世帯規模別人口分布
世帯規模別人口分布(地域別)

端的な例としては、セネガルとデンマークが挙げられます。2025年時点の世界の平均世帯規模を見ると、セネガルが最大で10.63人。最小はデンマークの1.98人でした。この差は拡大傾向にあります。2035年までにセネガルは1世帯当たり10.87人に達すると予測される一方、デンマークは1.93人に減少し、 一人暮らしの傾向においてフィンランド、ドイツ、カナダに追い越される見込みです。

世帯経済

世帯規模と支出の関係は、すべての地域で一貫した顕著なパターンを示しています。すなわち、小規模世帯ほど一人当たりの支出が大幅に高くなります。

北米では、単身世帯の一人当たり年間支出は平均55,760ドルであるのに対し、5人世帯では40,400ドルであり、28%低くなっています。欧州ではさらに大きな差が見られ、単身世帯の一人当たり支出は32,740ドルであるのに対し、5人以上の世帯では14,710ドルと、55%減少します。

新興国ではこの差がさらに顕著です。サブサハラ・アフリカでは、単身世帯の一人当たり年間支出は9,880ドルであるのに対し、大規模世帯ではわずか2,250ドル。アジア太平洋地域では、単身世帯の一人当たり支出が20,010ドルであるのに対し、5人以上の世帯では6,210ドルです。ラテンアメリカ・カリブ海地域では、単身世帯の24,290ドルに対し、5人以上の世帯では一人当たりわずか7,570ドルとなっています。

世帯規模および地域別一人当たり支出額
世帯規模および地域別一人当たり支出額

これは、単に子どもは収入を得ないからという理由だけではありません。子どものない世帯のみを対象に調査しても、同様の傾向が確認されます。欧州では、子どものない単身世帯の一人当たり支出は32,740ドルであるのに対し、5人以上の世帯では18,750ドルと43%少なくなっています。サブサハラ・アフリカではその差は52%(9,880ドル対4,700ドル)。アジア太平洋地域では、子どものない単身世帯の一人当たり支出は、大家族世帯よりも87%多く(20,010ドル対10,690ドル)、ラテンアメリカ・カリブ海地域では、41%少なく(24,290ドルに対して14,240ドル)なっています。一方、北米では、単身世帯ではなく共働きで子どものいない世帯(一人当たり支出63,160ドル)が、全世帯タイプの中で首位となっています。

子どもの独立後

世界的に見て、富裕層世帯の生活パターンは予測可能です。子どもがいる世帯の割合は、世帯主が35~45歳の時にピークを迎え、子どもが自立する55~60歳までに急激に減少。この「空の巣」への移行は明確かつ決定的なものですが、サブサハラ・アフリカは例外です。ここでは70~75歳頃、子どもたちが戻ってくることが多く、これはおそらく高齢の親の介護が理由と考えられます。この傾向は、高齢者介護や世代間責任に関する文化的価値観が、必ずしも所得によって変わるわけではないことを示唆しています。

低所得世帯では一般に、子どもがいる世帯の割合がより早期に、より高い水準でピークを迎え、その後もより緩やかな減少傾向を示します。一方で、サブサハラ・アフリカでは、世帯主が75歳に達してもなお、50%の世帯で子どもが同居。それほど劇的ではありませんが、中東および北アフリカの世帯でも、世帯主が70代に入っても子どもと同居する割合が高くなっています。

こうした傾向は、子どもが20代前半で家を出るという西洋のモデルが普遍的ではないことを示しています。多くの地域では、介護に関する文化的規範や経済的必要性により、生涯を通じて多世代同居が一般的であり続けています。

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女性の世帯主化傾向

世帯主が女性である世帯はすでにかなりの数に達しており、分析対象となった全地域で着実に増大。北米では、世帯主が女性である世帯の割合は10年以上前に実質的な均等(50%)に達しており、2025年には50.2%となる見込みです。欧州は40.2%でこれに続き、ラテンアメリカ・カリブ海地域は38.1%です。

一方、サブサハラ・アフリカでは2025年に28.2%となり、アジア太平洋地域の21.2%を上回りました。中東・北アフリカは最も低い割合ながら、最も高い成長率を示し、世帯主が女性である世帯の割合は2015年の16.7%から2035年までに20.4%へ増加すると見込まれます。これらの数字は、女性が主要な経済的決定を行う世帯が数百万に上ることを意味しています。

示唆される点

こうした世帯形態は、企業や政策立案者にとって実践的な示唆を与えると考えられます。消費財企業は、単身世帯と大家族世帯で異なる需要パターンに向き合う必要があるのです。また、世帯主としての女性、ひいては主要な世帯決定者としての女性の増加は、カテゴリー開発の機会を開くでしょう。住宅開発業者は、地域によって大きく異なる空間ニーズを考慮しなければなりません。さらに、核家族向けに設計された社会的セーフティネットは、多世代同居が一般的な環境では機能しない可能性があります。

都市化と経済の発展が進む中、こうしたパターンを理解した上で、異なる市場における消費動向、住宅需要、社会政策の必要性を予測する必要があるでしょう。

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