食料と水

「若い農業従事者の確保は、世界的課題」専門家が解決策を提示

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世界の人口が増加し、食料需要が急増する中、農業分野はこのギャップをどのように埋めることができるのでしょうか。 Image: Unsplash/Johny Goerend

Tom Crowfoot
Writer, Forum Stories
  • 多くの農業者が引退を迎える一方、その後を継ぐ若者が不足しています。
  • 世界の人口増加に伴い、食料需要は今後も拡大する見通しです。
  • ダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会2025において、世界農業者機構(WFO)の会長であるアルノー・ピュシュ・ペイ・ダリサック氏に、より多くの若者を農業に呼び込むための方策について話を聞きました。

世界農業者機構(WFO)のアルノー・ピュシュ・ペイ・ダリサック会長によると、世界の農業従事者の平均年齢は55歳を超えています。「多くの農業者が近く引退し、職を離れることになるでしょう。これは、若い世代に活躍の機会を提供することにもつながります」と同氏は述べています。

A chart showing age classes of EU farm managers in 2020.
EUでは若い農業者が圧倒的に不足しています。 Image: Eurostat

一方、人口増加に伴い、食料需要が高まっています。
国連によると、世界人口は今後50〜60年にわたって増加を続け、2080年代半ばには約103億人でピークを迎えると予測されています。

世界資源研究所(WRI)は、2050年までに世界が56%の「フードギャップ」を埋める必要があると試算。「フードギャップ」とは「食糧不足」を指し、将来の需要に対して世界が供給可能な食料の量が不足していることを意味します。

食料の需要は今後も増え続けるでしょう。

アルノー・ピュシュ・ペイ・ダリサック氏、WFO会長

こうした背景を踏まえ、世界経済フォーラムの『未来の仕事レポート2025』は、農業従事者が今後5年間で最も雇用が拡大する職種の一つであり、2030年までに3,500万件の新たな雇用が生まれると予測しています。

A chart showing the largest growing jobs, 2025-2030.
農業従事者の需要が高まっています。 Image: 世界経済フォーラム

世界経済フォーラム年次総会2025において、同フォーラムはWFOのダリサック会長に、食料と農業を取り巻く状況の変化について話を聞きました。

農業従事者の人口動態の変化に伴い、その需要が高まる中、若い農業者の参入を促すための方法について、同氏に質問しました。

1. トレーニング

「まず、農業者にはトレーニングが必要です」。
若者が農業に参入するうえでの大きな障壁のひとつが、知識とスキルのギャップです。
農業の経験がない新規就農者には、実地でのトレーニングと、経験豊富な指導者による支援が必要です。
支援ネットワーク農業奨学金は、若手農業者が業界に参入するために必要な専門知識を提供することができます。

2. 農地へのアクセス

「次に必要なのは、農地へのアクセスです。所有者になる、もしくは長期契約を結ぶ必要があります」。
土地の所有、あるいは長期的な賃貸契約がなければ、長期的な投資はできません。
「確実なリターンを得るには数年かかるため、土地への長期的なアクセスがなければ、建物やフェンス、肥料に投資することができません」。

3. 手頃な資金調達

「3つ目は、手頃な資金へのアクセスです」。
ダリサック氏によると、一部の国では年利2%で資金を借りることができる一方、他の国では200%にも達する場合があります。
こうした高金利は、十分な資金を持たない新規参入者にとって大きな壁となります。
「フランスには『金のスプーン』や『銀のスプーン』を持って生まれないと無理だ、という言い回しがありますが、それが現実なのです」。

農業におけるレジリエンスの強化

世界経済フォーラムの「100 Million Farmers (1億人の農業者)」イニシアチブは、企業、政府、農業者、市民社会のリーダーシップを結集し、再生型かつ気候に配慮した農業への移行を促進することを目的としています。同イニシアチブが重点を置く「資金の確保」と「土壌のレジリエンス向上」は、互いに相乗効果をもたらします。

資金不足を埋めるため、同イニシアチブは、農業者の持続可能な食料システムへの移行を支援し、各地域に適した革新的な資金調達モデルや協働の枠組みの開発を進めています。
また、土壌のレジリエンスを高めることも不可欠です。世界の食料生産の95%は健全な土壌に支えられており、植物に必要な栄養素や水を供給し、成長を支えるとともに、化学肥料や農薬の使用を減らし、コストを抑え、気候変動への耐性を高めます。

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コンテンツ
1. トレーニング2. 農地へのアクセス3. 手頃な資金調達農業におけるレジリエンスの強化

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