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下水道管理に先端技術を活用し、社会のレジリエンス強化へ

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適切な下水管理により、老朽化するインフラを守ることができます。 Image: Unsplash/Kenshi Kingami

Naoko Tochibayashi
Communications Lead, Japan, World Economic Forum
Mizuho Ota
Writer, Forum Agenda, Forum Agenda
  • 日本の下水道インフラの多くは設置してから50年以上が経過しており、その割合は2040年までに倍増すると予測されています。
  • 地方自治体は、予算削減や労働力の縮小に対応するため、テクノロジーを活用して下水道管理の効率性、安全性、精度を向上させています。
  • 最新のツールを下水道維持管理に統合することで、インフラの信頼性を高め、社会全体のレジリエンス向上にも貢献します。

上下水道は、公衆衛生や環境、生活の質に直結する重要なインフラです。人々の健全な暮らしを維持するため、必要な上下水道の設置だけでなく、適切な管理も不可欠となります。

日本において、上下水道に加え、道路やトンネルなどのインフラは、第二次世界大戦後の高度経済成長期(1950年代から1970年代)に集中的に整備されました。こうした設備の老朽化は、立地環境や維持管理状態に左右されるものの、整備から50年が一つの指標となっています。国土交通省によると、2023年までに整備された下水道は、約49万km。そのうち、整備から50年を迎えるものは2030年までに約16%、2040年には約34%となっており、今後老朽化する施設やインフラが加速度的に増えていくことは明らかです。

老朽化や災害などにより、水道管に破損や浸水、コンクリートなどの腐食などが起きると、その周辺地域に暮らす人々の生活に影響が及びます。国土交通省では、こうしたリスクが起こる恐れが大きい上下水道に関し、5年に1度の点検を実施している一方、2023年度には、下水道管路に起因する道路陥没が全国で約 2,600 件発生。また、2025年1月に埼玉県で起きた、下水道管の腐食による道路陥没事故では、道路周辺の閉鎖に加え、12の市と町で排水の使用が制限され、市民生活に支障をきたしました。さらに、 下水管の腐食による漏洩や、その修理中の下水の迂回排水などは、環境汚染につながりかねません。

日本の上下水道は、市町村もしくは都道府県の管理下にあります。下水道の維持管理の必要性が高まる一方、自治体の事業収入は減り、下水道の管理などに当てられる予算も減少。さらに、これらに携わる自治体の職員数も各自治体はピーク時から4割程度削減されているのが現状です。こうした中、各自治体は、適切な下水道管理の実施をめざし、最新技術を活用した、効率化などに取り組んでいます。

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衛星データによる下水管調査の効率化

2025年2月に開催されたデジタル行財政改革会議において、石破首相は、人工衛星やドローンを活用した上下水道の漏水検知などのデジタル技術を3年程度で実現するよう指示しました

上下水道管は地下に埋まっているため、漏水などの点検を容易に実施できないことが、その管理における難点の一つです。東京を拠点にするベンチャー企業の天地人は、こうした課題に対処し、水道局が保持するデータと衛星データを活用した水道管のモニタリングサービスを提供。同社による「宇宙水道局」は、自治体による管理情報や漏水履歴に加え、地表温度や地殻変動に関する衛星データを組み合わせ、漏水のリスクを予測します。自治体が管理する地域を100メートル四方に分けて漏水リスクを5段階で評価します。リスクの高い区域から点検を行い、作業を効率化させることにより、実証実験では点検費用を最大65%、調査期間を85%削減。2023年の提供開始から2025年3月までの2年余りで、20以上の自治体がこのサービスを採用しています。

下水道などのインフラの老朽化が進む中、新たな技術により適切に下水道を管理することは、人々の生活を維持し、周辺環境を保護します。

ドローンやAIを用いて迅速かつ安全な点検へ

現在、下水道の調査は、主に作業員やテレビカメラ搭載の小型車が中に入って行っています。一方、水道管内部に水が流れている場合や有毒なガスが発生している場合など、困難や危険性が伴うことに加え、安全性の確保に時間や労力を要することもあります。

こうした課題を解決する方法として、近年、ドローンの活用が増えています。ドローンは、水道管の外から遠隔で操作するため、管内に水流や有毒なガスが存在しても調査に支障が出ず、安全性確保に時間を費やす必要もありません。また、作業員が入ることができないほど細い管の点検も実施可能であることから、より完全な調査につながります。全国的に神奈川県横浜市大阪府堺市富山県富山市茨城県境町などの自治体が、下水道管の点検にドローンを導入しています。

また、AIも下水道の管理のさまざまな側面において活用されています。横浜市では、下水道管内の清掃に合わせてノズルカメラを用いたスクリーニングを実施。得られた映像はAIを用いて解析し、目視では判断できない、わずかな異常の検知などに役立てています。また、既存の下水道台帳や周辺環境情報などを学習させ、劣化や、管内の水位を予測する取り組みなども行われています。

下水道の適切な管理は社会のレジリエンスに貢献

下水道などのインフラの老朽化が進む中、新たな技術により適切に下水道を管理することは、人々の生活を維持し、周辺環境を保護します。世界経済フォーラムの戦略的な知的洞察である「インフラ:インフラのレジリエンス」では、持続可能かつレジリエンスのあるインフラは、広域な利益をもたらすと説いています。下水インフラにおいても、効率化などにより信頼性の高いシステムを保つことで、生活の質が向上し、社会のレジリエンスと持続可能性の強化につながるのです。

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