世界の平和と安全確保の鍵は、若者の声
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世界の安全保障情勢が進展するにつれ、若者の見識を活用することが極めて重要になります。 Image: Candice Seplow/Unsplash
- 世界がさまざまな課題に直面している今、世界の平和と安全を形成する上で、若者の声が重要な役割を果たすべきです。
- DACH地域のグローバルシェイパーズ・ハブによる調査は、若者がこれらの問題をどのように認識しているかについての貴重な洞察を提供しています。
- 世界の安全保障情勢が進展する中、若者の洞察力を活用することは、レジリエンスのある、平和な未来を形成するための鍵となるでしょう。
世界的な不確実性が高まる中、平和と安全保障に関する議題の形成において、若い世代の声が重要な役割を果たすべきです。
グローバルシェイパーズ・ハブが実施した、ドイツ、オーストリア、スイスで構成される「DACH地域」における 最近の調査は、若者がこれらの問題をどのように認識しているかについて、8つの異なるカテゴリーにわたる貴重な洞察を提供。彼らの懸念、優先事項、および政策立案者に対する期待を明らかにしています。
この調査には、異なる背景、年齢、学歴を持つ120名以上の若者が参加し、次世代の外交、防衛、安全保障政策を担う世代の視点を示しています。
調査結果によると、若者にとって世界の安全保障は最も重要な関心事の一つであり、以下のような見解が示されました。
安全保障と脅威に対する認識
調査回答者の64%が、世界の安全保障について懸念、または強い懸念を抱いていると回答。特に深刻な脅威として認識されているもののうち、15%の回答者が過激化や過激主義を主要な課題として挙げています。
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気候変動と自然災害、10%の回答者が重要な脅威として認識しており、2番目に高い順位を占めました。さらに、9%の回答者が偽情報やフェイクニュースを挙げており、これらが安全保障上の課題を一層複雑にしていることが示されています。
この調査結果は、若者が過激化、偽情報、社会の分断、政治的不安定など、さまざまな脅威が相互に関連していることを認識していることを示唆。包括的かつ多角的な安全保障戦略の必要性が高まっていることを裏付けています。
政治とガバナンスの役割
回答者のほぼ半数(47%)が、政治家は平和と安全保障を確保するために十分な対応をしていないと考えています。特に、少数派グループにおいて不満の声がより顕著に表れている一方、政治的リーダーシップに関する意見において、性別による大きな影響は見られませんでした。また、若者を包摂する政策立案も必要です。
若者の参加意欲は高い一方、政治とのつながりを作りにくい状況にある
若者の10人に9人(91%)が、平和と安全保障に関連する政治的決定に対して、自分たちはほとんど、もしくは全く影響力をもっていないと考えています。一方、57%の回答者が若者はこうした議論に積極的に関与すべきだと考えており、98%が若者は少なくとも何らかの形で平和と安全保障の問題に参加するべきだと認識しています。
しかし、実際に参加する機会へのアクセスが未だに課題となっています。ドイツでは67%の回答者が、参加しやすい機会がないと感じており、オーストリアでは37%はそうした機会そのものがないと考えています。
この結果は、若者が貢献したいと強く願う一方で、制度的な障壁が有意義な参加を妨げていることを示しており、より包括的な参加の場や、市民参加に関する教育の充実が求められています。
防衛と軍事に関する意見の分断
調査結果によると、軍事投資に対する意見は分かれ、45%の回答者が予算の増額を支持する一方、33%は削減を求めています。軍事予算の増額を支持する人々のうち、39%は国際任務への参加を含め、軍が中心的な役割を果たすべきだと考えています。
一方、41%は軍事力を国家防衛に重点を置くべきであり、19%は緊急時にのみ軍事力を使用すべきだと主張。逆に、軍事投資の増額に反対する人々の79%は、軍は緊急時に限って使用されるべきだと考えています。
気候変動と安全保障は喫緊の課題
気候変動は、安全保障上の課題であるとの認識が高まっています。調査では、66%の回答者が気候変動を正式に安全保障問題として認めるべきだと考え、90%が国際的な安全保障議論に気候変動を含めることを支持。また、79%が安全保障の観点から再生可能エネルギーへの投資を重要視しています。これらの結果は、環境レジリエンスを平和と安全保障戦略に統合する持続可能な政策の必要性を強調しています。
拡大するサイバーセキュリティにおける課題
サイバーセキュリティもまた主要な懸念事項であり、回答者の82%がサイバー攻撃を深刻な脅威と見なしています。主なサイバーセキュリティ上の課題として、サイバー脅威の複雑化(25%)、急速な技術進歩が規制を上回る状況(25%)、一般市民の認識不足(21%)、国際的なサイバーセキュリティ法および協力の脆弱性(17%)、開発途上国における限られたリソース(9%)が挙げられています。
さらに、56%が人工知能(AI)をチャンスと脅威の両面で捉えており、27%が肯定的に評価し、14%が危険視。これらの調査結果は、デジタルセキュリティに関する国際協力の必要性と、一般市民向けのサイバーセキュリティ教育が急務であることを示しています。
国際協力は多くの人にとっての優先事項
大多数を占める81%が、国際機関やアライアンスが平和維持において重要な役割を果たしていると確信しており、55%が自国の国際機関への資金拠出を増やすべきだと考えています。
自国が国際協力の中で優先すべき分野として、外交および紛争解決(13%)、人権保護(12%)、環境および資源保護(9%)、紛争予防と平和構築のための教育(8%)、法の支配とガバナンスの強化(8%)が上位に挙げられています。
今後の方向性に関する主な提言
本調査に基づき、若者が平和と安全保障の議論により積極的に関与できるようにするため、以下の主要な対策が考えられます。
- 市民参加の機会を拡大する。若者が平和と安全保障の政策決定に参加できる手段の不足を解消する。
- 平和と安全保障に関する教育を強化する。学校や大学で、より体系的な議論の場を設ける。
- デジタルおよびサイバーセキュリティ対策を強化する。認識向上のためのキャンペーンを実施し、サイバーセキュリティに関する国際的な規制を支援する。
- 安全保障政策に気候問題を統合する。気候変動を重要な安全保障上のリスクとして認識し、その対策に取り組む。
- 国際的な平和イニシアチブを支援する。外交的な紛争解決および人権保護への投資を強化するよう提言する。
平和な未来を築く鍵は若者にある
DACH地域の若者たちは、気候変動、過激化、偽情報、軍事政策など、相互に関連する脅威を認識し、平和と安全保障の課題について高度な理解を示しています。
しかし、その熱意にもかかわらず、彼らは政治的意思決定から大きく切り離されていると感じています。このギャップを解消するためには、政府、機関、そして市民社会組織による積極的な関与に関する戦略が必要です。
グローバルな安全保障環境が進化する中、若者たちの洞察とエネルギーを活用することは、レジリエンスのある、平和な未来を形作る上で極めて重要です。
Shaping Peace & Security (シェイピングピース&セキュリティ)は、ドイツ・ハイデルベルクおよびオーストリア・ウィーンのグローバル・シェイパーズ・ハブによって設立され、若者が主導する、平和と安全保障に関する若者の声を広めるためのイニシアチブです。このプロジェクトは現在、DACH地域の他の多くのハブから支援を受け、グローバルな安全保障に対する懸念が高まっているにも関わらず、若者の視点がしばしば見過ごされがちな政策における重要なギャップの解消に取り組んでいます。
このイニシアチブは、国連安保理決議2250号「青年・平和・安全保障」に基づき、安全保障戦略の形成における若者の関与の必要性を強調しています。調査、インタビュー、セミナー、アドボカシー活動を通じて、16歳から30歳の若者たちの意見を収集し、政策立案者や一般市民に提供。青年団体や政策立案者との協力を促進することにより、Shaping Peace & Securityは、参加型プラットフォームの構築、認識向上、そして意思決定プロセスにおける若者の有意義な参加を推進することを目指しています。