経済成長

「ベータ世代」がグローバル経済に及ぼす4つの影響

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2025年から2038年生まれの「ベータ世代」は、気候変動、急速な都市化、新しいテクノロジーといった課題を抱える世界を受け継ぐことになります。 Image: Unsplash/Tim Bish

Juan Caballero
Head, Insights and Analytics, World Lab Data
Marco Fengler
Data Analyst, World Data Lab
  • 「ベータ世代」とは、2025年から2038年生まれのすべての人々を指します。その大半は、ミレニアル世代とZ世代を親に持つ子どもたちです。
  • 彼らは史上最も都市化された世代となり、その富は高所得国に集中することにはならないでしょう。
  • 2050年までに世界の人口の18%を占めるベータ世代の成長、移動、消費動向がグローバル経済に影響を与えることになります。

2025年1月、新たな世代が誕生しました。それが「ベータ世代」です。

「ベータ世代」とは、2025年から2038年生まれの人々を指します。ミレニアル世代とZ世代の子どもが中心となるこの世代は、2050年には世界の人口の18%を占めるようになると予想されています。

「〇〇世代」という名称は、『日はまた昇る』に記されたアーネスト・ヘミングウェイとの会話の中で、ガートルード・スタインが「あなたたちは皆、失われた世代だ」と語ったことをきっかけに生まれたと言われています。第一次世界大戦に従軍した、またはその時代を生きた亡命者たちについて語ったものですが、この言葉が世代の定義と分類の礎となりました。

それから数世代後、第二次世界大戦後の米国における出生率の急増を表現する「ベビーブーマー」という言葉が生まれました。そして今、気候変動への対応や急速な都市化という課題に直面し、AIやテクノロジーが日常生活に浸透した世界を、ベータ世代が受け継ぐことになります。

地理、人口統計、所得の増加、デジタル化は、ベータ世代がどのように成長し、移動し、お金を使うのかを決める原動力となります。そして、ベータ世代は、成人するにつれてグローバル経済にますます大きな影響を与えることになるでしょう。

ワールドデータラボの最近の調査で、明日の世界に適応し、世界を再定義するベータ世代の4つの影響が示されています。

1. アジアのベータ世代は人口こそ少ないが豊か

ベータ世代は、人口比で見るとアジア人の最も少ない世代です。アジア太平洋地域(APAC)で生まれるベータ世代はおよそ46%でしかありません。これは、アジアの大部分で出生率が低下しているためです。X世代は最もアジア的な世代で、人口の61%がアジア太平洋地域出身でした。これに対してベータ世代は、サハラ以南のアフリカで最も人口が増加する世代であり、ベータ世代の3人に1人はアフリカ人になるでしょう。

Total population by regions and generations (at the generations’ peak) – Baby Boomers, Gen X, Millenials, Gen Z, Gen Alpha, Gen Beta.
地域別および世代別の総人口(各世代のピーク時)。 Image: World Data Lab

出生率は低下しているものの、アジア太平洋地域では富裕化が進んでいます。ベータ世代では消費のほぼ40%がアジア太平洋地域で発生し、過去最大のシェアを占めることになるでしょう。1日当たり12ドル(2017年の購買力平価)以上を消費するベータ世代の消費者の3分の2がインドと中国に集中します。

このようにアジアでの購買力は増加し、消費は引き続き東へと移行。APACにおけるベータ世代の市場は、欧州と米国を合わせた市場規模に匹敵するでしょう。米国と欧州のベータ世代人口は全体のわずか8%ですが、消費全体に占める割合は41%に達すると予測されており、今後も主要な市場であり続けると考えられます。

2. ベータ世代の富は高所得国に集中しない

米国、日本、オーストラリア、ヨーロッパなどの高所得国は、従来からグローバルな消費を牽引してきました。ワールドデータラボの調査によると、2000年にはベビーブーマーの消費の85%をこれらの国が占めていました。以後はどの世代においても高所得国からのシフトが見られます。

ベータ世代の消費行動が始まると、こうした国々のグローバルに見た消費の割合は、現在の約65%からベータ世代では48%にまで減少するでしょう。

Line graph showing spending power of different generations based on location: Baby Boomers, Gen X, Millennials, Gen Z, Gen Alpha and Gen Beta.
世代別の低・中・高所得国における総消費額(各世代の人口ピーク時)。各国の所得区分は、2023年の一人当たり国民総所得(GNI)で14,005ドルという世界銀行の定義による。 Image: World Data Lab

3. ベータ世代は史上最も都市的な世代

新生児は農村地域で誕生することが多いものです。米国などの農村地域では一般的に家族の人数が多いだけでなく、労働年齢の成人と富裕層が都市部に住む傾向も強くなっています。

これに続くベータ世代は、史上最も都市的な世代となりそうです。現在、ベータ世代の赤ちゃんのうち都市で生まれているのは半分のみですが、2040年にはベータ世代の58%が都市に住むようになり、同年代のアルファ世代の53%、Z世代の45%を上回るでしょう。

都市は繁栄の中心地です。経済学者であるエドワード・グレイザーは、著書『都市は人類最高の発明である』で、経済力が都市圏をどのように形成するかを考察。それによると、ベータ世代の多くが暮らす都市部にはより大きな繁栄がもたらされます。都市の人口密度が規模の経済をもたらし、都市に住む人々がより幅広い製品や仕事を選択できるようになるからです。

4. ベータ世代はテクノロジーの「橋渡し」

Z世代とアルファ世代の子どもたちはすでにデジタルの存在する環境で成長してきました。今後は、AIベースの自動化と、グローバルな不確実性、異常気象、資源のひっ迫、戦争、政治的混乱が相まって、ベータ世代の成長の形を形作っていくでしょう。新型コロナウイルス感染症のパンデミック後における両親のマインドセットや、人口動態、地理的な変化が、ベータ世代の消費パターンを説明付けることになります。

ベータ世代は、おもちゃよりもオンラインゲームや電子機器とともに成長していくでしょう。ワールドデータラボは、ベータ世代が2035年までに家電製品に費やす金額は1,130億ドルに達すると予測。これは、X世代が今後10年間で家電製品に費やすと予測される金額の2.4倍に相当します。さらに、ベータ世代のメンバーは、Z世代である両親の現在の年齢に達した時点で、一般に両親よりも裕福になると考えられます。

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ベータ世代の消費の重要性が高まる

一方で、現在、グローバルな消費を牽引している世代を見逃さないことも重要です。ベータ世代の消費のほとんどは、彼らが自身の消費決定を行うようになるまでの少なくとも今後20年間は、その親によって牽引されるでしょう。2050年になっても、ベータ世代は人口の18%を占めるものの、消費総額では12%にとどまります。

実際、近い将来最も注目に値するのはX世代です。彼らはベビーブーマーから富を継承する世代であり、X世代とベータ世代はほぼ同規模ですが、X世代は現在、キャリアの絶頂期にあり、購買力も最も高い世代。予測では、X世代が少なくとも2033年まではグローバルな消費を牽引すると見られています。その主な理由は、高所得国における消費の大部分をX世代が占めるためです。

現在、まだ生まれたばかりのベータ世代に注目が集まりがちですが、経済見通しの上で彼らに過度な比重を置くことはまだ避けるべきでしょう。ベータ世代がこれから迎える世界を理解するためには、彼らが他の世代から受け継ぐ環境と、どこで生まれ、どこに移り住み、何を優先するのかを考慮しなければなりません。そうすることで、ベータ世代が将来の世界をどのように形作るのかという理解を深めることができるでしょう。

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コンテンツ
1. アジアのベータ世代は人口こそ少ないが豊か2. ベータ世代の富は高所得国に集中しない3. ベータ世代は史上最も都市的な世代4. ベータ世代はテクノロジーの「橋渡し」ベータ世代の消費の重要性が高まる

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