モジュール建築は、生産性、循環性、産業の融合をどのように促進するか
ロンドン市内の現場でプレハブ・モジュールがクレーンで吊り上げられる様子。 Image: Elements Europe
- 建設業界において、モジュール建築の工法を通じた製造業との顕著な融合がトレンドとして成長しつつあります。
- モジュール建築の利点は、プロジェクトのスケジュール短縮や周囲に迷惑がかかりやすい現場での作業を最小限に抑えることによる、生産性と効率性の向上などです。
- モジュール建築の実践により、将来的には建設環境における循環型のアプローチが商業的に実現可能となるでしょう。
建設業界は、多くの場合、停滞し、技術的進歩を遂げることが非常に困難だと見なされています。主な原因は、その資本集約的な性質と、肉体労働および従来の機械への依存です。こうした状況の中、製造業の利点を伝統的な建設方法に取り入れたモジュール建築の工法により、革新的かつ持続可能な前進への道筋が生まれつつあります。
モジュール建築の特徴は、建物の構成要素をオフサイトで事前に製造する「プレハブ方式」です。これらのモジュール(構成要素)は、通常、標準化された設計で製造された後に建設現場に運ばれ、完全な構造物へと組み立てられます。組み立て方は様々です。例えば、パネル工法では、壁や天井、床などのパネルを製造し、現場においてボルトで固定します。一方、ユニット工法では、部屋サイズの三次元モジュールを事前に製造し、現場で積み重ねて結合します。
モジュール建築の利点
モジュール建築自体は、新しい発明ではありません。その起源は、エジプトやスリランカなどの古代文明にまで遡ることができます。これらの地域では、別々に製作された部材を組み合わせ、構造物を築いていました。一方、何世紀にもわたる技術の進歩により生まれた、現代のモジュール建築が建設業界を近代化し、以下の重要な点において、資源効率の高い建造環境を実現するための道を開いています。
1. 生産性と効率の向上
温室効果ガスの最大の排出源であるにもかかわらず、建設業界ではイノベーションの導入が遅れています。モジュール建築は、従来の建設方法と比べてはるかに速いペースで構造物を建設できるため、プロジェクト完了の方法に革命をもたらします。マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、ユニット工法は、現場での作業量を大幅に削減し、設計変更など、従来の建設に伴うさまざまなオーバーランを削減することにより、プロジェクトのタイムラインを最大50%短縮できます。
2. プロジェクトコストの大幅な削減
モジュール建設における効率性向上と労働力削減は、プロジェクトコストの大幅な削減を可能にします。マッキンゼー・アンド・カンパニーは、モジュール建築の工法による生産性向上により、総コストの最大20%削減を実現できる可能性があると予測。現時点では、物流や工場運営にかかる追加費用がこの方程式を複雑化しているものの、コスト効率の実質的な向上に繋がる、将来の最適化に向けた明確な道筋となっています。
3. システムの成果向上と地域社会の健康
モジュール建築の工法は、建設によって影響を受ける地域社会に対して影響の少ない代替手段を提供し、住民や周囲の環境への悪影響を大幅に軽減します。ここで、GS E&Cの子会社であるElements Europe(エレメンツ・ヨーロッパ)が実施したプロジェクトの内部調査を見てみましょう。これは、英国・バーミンガム市中心部に位置する550戸の鉄骨モジュール住宅であるキャンプヒル・プロジェクトに関するものです。この分析では、同規模の従来の建設プロジェクトと比較して、配送件数が約3,700回少なく、全体で56%の車両移動の削減となったことが示されました。車両の削減は、交通渋滞や汚染などの悪影響を軽減し、大気質の改善に役立ちます。イギリスの都市環境では、公共の健康を守るためにクリーンエアゾーンや低排出ゾーンが頻繁に導入されており、これは重要な成果です。
循環型建造環境におけるモジュール建築の役割
欧州委員会によると、建設業は世界全体の廃棄物の約三分の一を生み出し、さらに世界の二酸化炭素排出量の40%近くを排出しています。建設業は、家族向けの住宅から超高層ビル、公共インフラに至るまで、人々の生活を改善することを目指す一方、他の業界とは比較にならないほどのペースで環境破壊を引き起こし、地球に深刻な損害を与えています。
建設業の未来は、循環型の建造環境への進化にかかっています。モジュール建築は、建物の構成部材の再利用や再目的化を可能にし、廃棄物を削減し、持続可能な資源循環を促進することにより、この目標の達成に貢献することができます。
現在、恒久的な構造物からの建材の再利用や既存の建物を再構築する事例は少なく、主に小規模かつ非商業的なケースに限られています。一方、モジュール建築の普及により、こうした事例は予見可能な現実となる可能性があります。
未だに概念的なレベルでの検討にとどまり、採算に合う実装に至っていないものの、恒久的な構造物を解体する代わりにモジュールを解体して再利用することができれば、非常に興味深い機会が生まれます。特に、建材や部品のリサイクル性を考慮すると、その可能性は大きいと言えるでしょう。
循環型の建設方法は商業的に台頭していないものの、モジュール建築はカーボンフットプリントの大幅な削減を実証しています。キャンプヒル・プロジェクトの二酸化炭素排出量の調査では、プロジェクトのライフサイクル全体において、エンボディドカーボンを約35%削減したことが示されています。このプロジェクトの総合的なエンボディドカーボンは915 kgCO₂e/m²であり、<800 kgCO₂e/m²に削減することを目指す、英国王立建築家協会(RIBA)の世界的な二酸化炭素削減目標に大きく近づきました。
モジュール建築は、革新と適応に苦しんできた業界に新たなパラダイムを提示しています。技術の進歩とますます厳格化するESG規制の時代において、モジュール建築は、引き続き業界の優位性を提供していくでしょう。一方、長期的な実行可能性とモジュール構造の需要は、建設業界およびそのステークホルダーの商業的な視点に大きく依存します。コスト効率と収益性だけでなく、モジュール建築の採用に向けた重要なインセンティブは、環境への影響と持続可能なイノベーションにフォーカスしなければなりません。
GS E&Cは、ダボス・バウクルトゥール・アライアンス(Davos Baukultur Alliance)のメンバーです。このアライアンスは、パブリックおよびプライベートセクターのステークホルダーが、循環型ソリューションの拡大などを通じて、私たちの生活環境の質を向上させるための共通の原則に基づいて団結しています。