エネルギー転換

エネルギー転換に向けて、今すぐインフラを整備すべき理由とは

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エネルギー転換には、多くの充電器やその他のインフラが必要です。 Image: Michael Marais/Unsplash

Agustin Delgado
Chief Innovation and Sustainability Officer, Iberdrola
  • エネルギー転換を可能にするためには、需要が顕在化する前に、規制当局と開発業者が積極的にインフラの計画と投資を行わなければなりません。
  • 一方、需要に先立つインフラの整備は、いくつかの重要な疑問を投げかけます。 誰が計画して建設し、誰がコストとリスクを負担すべきなのでしょうか。
  • この寄稿文では、世界が明日のエネルギーシステムを支えるために必要な、「未来にふさわしい」インフラを構築するための10の原則を提示します。

エネルギー転換は、世界が担うべき責任です。エネルギー転換を可能にするためには、需要が顕在化する前に、規制当局とディベロッパーが積極的に計画を立て、インフラに投資しなければなりません。タイムリーな整備がなければ、再生可能エネルギーの導入や電化の取り組みが遅れ、二酸化炭素排出量の増加や消費者のコスト上昇につながる可能性があります。

一方、需要に先立つインフラの整備は、いくつかの重要な疑問を投げかけます。誰がそれを計画し、建設するのでしょうか。また、誰がそのコストとリスクを負担すべきなのでしょうか。

インフラに関する要件の設定

国際エネルギー機関(IEA)によると、2030年までに二酸化炭素排出量を急速に削減するためには、3つの主要な手段があります。

1. 太陽光発電と風力発電。世界の再生可能エネルギー容量は3倍になり、1万1,000ギガワットに達しなければなりません。

2. 電気自動車(EV)。輸送部門の電力消費量は4倍に増加し、8 EJに達しなければなりません。

3. エネルギー利用における化石燃料ベース分の電化。経済の電化率は、現在の20%から28%に拡大しなければなりません。

こうした急速な進歩には、より強固な送電網と信頼性の高い充電ネットワークが必要です。一方、再生可能エネルギーと電化の成長に遅れをとることが多いのが送電網の整備です。再生可能エネルギープロジェクトは完成まで通常2~5年、EV充電ステーションの建設と接続に1~2年かかりますが、送電線は多くの場合、通常5~10年というはるかに長い期間を必要とします。従って、再生エネルギーを導入する前、もしくは電力需要が増加する前に十分な送電網容量を確保すべきなのです。

「未来にふさわしい」エネルギーインフラ投資のための10原則

世界が明日のエネルギーシステムを支えるためには、「未来にふさわしい」インフラの構築が必要です。エネルギー転換を支援するインフラ投資の指針として、そのために役立つ一連の原則を示します。これらの原則は、エネルギー部門にとどまらず、インフラ投資がもたらす広範な社会的・経済的影響にまで及びます。

1. 計画と優先順位付け

インフラの計画、開発、建設には長いリードタイムが必要であるため、事前の計画が不可欠です。ディベロッパーは、少なくとも10年に及ぶ長期計画を策定し、市民協議を通じて将来の利用者のニーズを取り入れ、エネルギー、産業、環境の目標に沿ったプロジェクトを行う必要があります。これらの計画において、政策目標と社会経済的便益に基づき、プロジェクトのさらなる優先順位付けを行わなければなりません。プロジェクトの評価には、外部性を含め、資産の耐用年数にわたる総コストを含める必要があるでしょう。

2. 確実な需要創出

インフラは、将来の需要が発生する前に建設する必要があります。予測可能かつ目に見える需要は、明確な政策目標と規制の確実性に支えられることにより、より効果的な計画と投資を可能にします。

3. 行政プロセスの効率化

多くの場合、インフラ事業の遅れの原因は、許認可のための長い待ち時間です。開発・建設のリードタイムを短縮するためには、行政の効果的なデジタル化、標準化、人材投入など、行政プロセスの合理化が必要です。鍵となるのは、積極的な反復学習プロセス。行政機関は、行政プロセスの効率を高めるために新しいアプローチを試す必要があるでしょう。

4. 資金調達と資本供給

エネルギー転換の初期段階では、官民から多額の資金が必要となります。このような投資を最低限のコストで促進するためには、規制の確実性、確固としたビジネスケース、そして各国や多国間銀行における協力が必要です。国、地域、地方など、パブリックセクターのあらゆるレベルが協力し、共通の目標に向けた努力が必要となるでしょう。

5. 新興市場および開発途上経済国(EMDEs)への対応

現在、クリーン技術へのエネルギー投資の大半は、中国、欧州、米国に割り当てられており、これらの国と地域が世界のクリーンエネルギー資本の85%を受け取っています。対照的に、将来的なエネルギー成長の大半は、EMDEsをはじめとする、これら三地域以外の国々からもたらされます。資源と投資におけるこの不均衡は、国際的な協力と技術提携によって解決しなければなりません。

6. 国有企業(SOE)の役割

国有企業(SOE)は、意思決定を通じて経済を形成できる重要な存在です。こうした組織は、エネルギー転換のパートナーとして政策目標に沿い、これらの目標を策定・達成するための効果的な公共ツールとして機能すべきでしょう。

7. レジリエンスの高いインフラとサプライチェーン

ライフサイクルを通じた高品質のサービスとコスト削減を保証するため、インフラは、長期的な持続可能性とレジリエンスを念頭に置いて設計する必要があります。将来的な事業においては異常気象を考慮に入れるべきであり、既存のインフラも同様の理由によりアップグレードが必要になるかもしれません。こうした原則を、原材料から人材育成に至るまで、最終的なインフラ資産とサプライチェーンに適用するべきです。気候の影響に対するインフラのレジリエンスを確保するために、国の適応計画にリスク評価の義務化などの追加措置を組み込む必要があるでしょう。

8. 一般市民とステークホルダーの関与

インフラの整備とパフォーマンスを最適化するためには、関係するすべてのステークホルダーを早い段階から関与させることが必要です。市民の参加と精査の仕組みにより、プロジェクトの透明性と社会的受容を確保することができます。

9. 経済的・社会的便益

インフラ整備は、特に地域社会において、経済成長、雇用創出、社会的公平性など、社会にとっての長期的な利益を最大化すべきです。

10. 定期的なモニタリングとデータの共有

インフラ整備のすべての目標と貢献には、そのパフォーマンスと影響を含め、綿密なモニターが必要です。その際、重要な役割を果たすのが、公平な機関の関与です。説明責任を維持し、将来のプロジェクトを改善するために、十分なデータを公開する必要があるでしょう。

最終的に、重要な疑問が残されています。それは、需要に先駆けてインフラに投資するリスクを、パブリックセクターと企業の間でどのように分担すべきか、ということです。適切なバランスの達成は、レジリエンスの高い、先進的なエネルギーシステムを育成するために重要です。一方、この課題についてはまだ議論の余地があり、継続的な協力と革新が必要であることを浮き彫りにしています。

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