2025年までに、企業が障がい者インクルージョンに取り組むべき理由
リーダーシップ、データ、リプリゼンテーション(表現)は、真の障がい者インクルージョンを実現するための3つの要素です。 Image: Getty Images
- リーダーシップ、データ、リプリゼンテーション(表現)は、真の障がい者インクルージョンを実現するための3つの要素です。
- 障がい者インクルージョンは、企業にとって見逃すことのできない18兆ドルのビジネスチャンスなのです。
- SYNC25は、企業が障がい者インクルージョンをリードするか、それとも遅れをとるかの最後のチャンスとなるでしょう。
今年の国際障害者デーは、ビジネス界にとって画期的な瞬間となるはずです。
今からちょうど1年後、障がい者インクルージョンのアカウンタビリティに関する世界初のサミット「SYNC25」が、世界最大規模の企業500社を招集し、根本的な問いかけを行います。障がい者インクルージョンを企業全体に浸透させるために、具体的にどのような行動を起こしたでしょうか。
多くのValuable 500企業やパートナー企業が、障がい者インクルージョンに関する公約の達成に向けて前進していますが、残念ながらほとんどの企業はまだこの課題について対話の準備ができていないのが現実です。
その証拠に、今年発表された50の主要なクリスマス広告キャンペーンのうち、障がい者を視覚的に表現しているものはわずか3つ(6%)でした。
また、登場していても、それはその他大勢として一瞬しか登場しません。これは残念なことですが、驚くことではありません。
今年初めに発表されたValuable 500の障がい者の「真のリプリゼンテーション」に関する白書では、障がいを持つ消費者の最大98%が、現在のメディアやマーケティングのストーリーでは、自身の経験が必ずしも正確に表現されていないと感じていることが分かりました。
マーケティング担当者にとってこれは、機会損失の大きさと、ニーズに応えられていないという組織的な失敗を如実に示すものです。表現の的を外しているというだけでなく、13億人の人々を代表し、年間18兆ドル以上の購買力を握るコミュニティとの関わりを失っているのです。
真の障がい者リプリゼンテーションの再定義
真のリプリゼンテーションとは、広告の背景に車椅子ユーザーを登場させることだけにとどまりません。障がいの多くは目に見えないものであり、その割合は80%に上ると推定されています。障がいを真に表現するには、メディアやマーケティングにおける障がいに対する考え方を根本的に変える必要があります。
つまり、目に見えるか見えないか、身体的か認知的か、恒久的か一時的なものかなど、障がいのあらゆる側面を表現するということです。そして何よりも重要なのは、カメラに映る、映らないにかかわらず、障がい者の声がこうした対話の主導権を握るようにすることです。
私たちは、変化の兆しを心強く感じています。Z世代はニューロダイバーシティに関してますますオープンになっており、認知度と受容の拡大を反映して診断率が上昇しています。
しかし、このオープンな姿勢を行動と一致させる必要があります。真のリプリゼンテーションとは、視聴者が目にするものだけでなく、誰が意思決定を行い、ストーリーを語り、物語を形作るかということでもあります。
このギャップを埋めるために、私たちは2025年に「Authentic Representation Tool(ART:真のリプリゼンテーションのためのツール)」を導入します。これは、A.T.カーニーと障がい者コミュニティの協力を得て開発、設計されたものです。
ARTは、3つの主要分野(本物のストーリー、正確な表現、アクセシブルな体験)で障がい者のリプリゼンテーションを企業が評価し、改善するための初のフレームワークとなります。
私たちの目標は、障がい者雇用への取り組みのどの段階にある企業にも、改善に向けた明確な出発点と道筋を提供することです。ただし、ARTはリプリゼンテーションに関する実践的な成熟度モデルを提供しますが、ビジネスリーダーたちは、障がい者インクルージョンが複雑な課題であり、繊細かつホリスティック(全体論的)なアプローチが必要であることを認識しなければなりません。
課題は次の3つ。相互に影響し合うこれらの課題は、「排除」という症状につながりかねません。解決には、協調的な集団行動が必要です。
1. リーダーシップ
障がい者インクルージョンを実現するリーダーシップに関する最近の白書で、最高経営責任者(CEO)クラスのリーダーのうち、障がいを持つ、または介護を担っていると公表している人はわずか3%であることが分かりました。
今日の役員会議室には、もはや「障がい者を優先してリーダーに就けるべきか」という問いは存在しません。存在するのは、「優先しない場合、我々はまだ妥当性を保てるだろうか」という問いです。意思決定に障がい者の声が反映されないなら、真のストーリーテリングやインクルーシブな製品設計を期待できると言えるでしょうか。
Valuable 500の「ジェネレーション・バリュアブル(Generation Valuable)」メンタープログラムは、経営陣と障がいを持つ人材によるリバースメンタリングが個人と組織にどのような変化をもたらすかを示しています。
プログラムを取り入れたリーダーたちは、障がい者インクルージョンを実現したリーダーシップとは、単に善行を行うことではなく、イノベーションを推進し、人材の定着率を高め、市場の理解を深めることであることを証明しています。しかし、このような変革をもたらす経験には、一層の規模拡大が必要です。
「次の1年間で、貴社がこの変革をリードする立場になるか、それとも取り残される立場になるかが決まります」
—Valuable 500 CEO ケイティ・タリコウスカ氏
2. データ
次に、報告に関する課題があります。企業が進捗状況を追跡したり、ギャップを特定したりするには、信頼性の高いデータとアカウンタビリティの指標が必要です。調査によると、Valuable 500企業のうち、従業員構成データの公開を行っているのはわずか22%。さらに、報告されたパーセンテージは0.07%から62.5%と大幅に異なっています。
標準化され、公開されたデータがなければ、ステークホルダーが進捗を測定したり、有意義な変化をもたらしたりすることはほぼ不可能です。
一貫した報告基準がないため、組織間の比較は極めて困難であり、現状、障がい者インクルージョンがビジネスの優先順位を決定する重要性評価の対象となることはほとんどありません。
3. 構造的インクルージョン
第三に、これは広告をはるかに超えた表現上の危機です。製品設計から職場文化、顧客体験からサプライチェーンに至るまで、障がい者コミュニティはビジネスのあらゆる側面から組織的に排除されたままです。
調査では、障がいを持つ消費者の90%以上が、ブランドはコミュニケーションのアクセシビリティを確保し、障がいを正確に反映すべきだと考えていますが、56%はあらゆるメディアにおいてアクセシビリティの欠如したコミュニケーションに日常的に遭遇しています。
障がい者コミュニティは、従来の「私たちのことを、私たち抜きに決めないで」という標語を「私たち抜きに何も決めないで」というシンプルな標語に進化させるよう、強く訴えるようになっています。
これは単なる言葉の問題ではなく、障がい者インクルージョンに対する考え方の根本的シフトです。障がい者は、意見を聞くべきニッチな集団ではなく、私たちの生活のほぼすべてに関わっており、私たちがいつ参加することになるかもしれないコミュニティなのです。
障がい者インクルージョンはビジネスの必須条件
障がい者インクルージョンを、選択肢ではなくビジネスの成功に不可欠なものと認識して初めて、真の変革が実現します。
上記の3つの課題に対処することで、真の変革が始まるでしょう。障がい者への配慮に強いリーダーシップを持つ企業は自然により良い報告をするべく力を入れるようになり、それがより真のリプリゼンテーションを生み出すことにつながります。優れたリプリゼンテーションは、より多くの障がい者人材をリーダーシップのポジションに引き付け、インクルージョンとイノベーションの好循環を生み出します。
まさにこのために、SYNC25はグローバルビジネスにとって決定的な瞬間となるでしょう。同会合では、世界最大規模の企業500社が初めて一堂に会し、リーダーシップ、報告、リプリゼンテーションの分野で具体的な進歩が発表される予定です。これ以上の遅延や言い訳はもはや許されないのです。
次の1年間で、貴社がこの変革をリードする立場になるか、それとも取り残される立場になるかが決まります。私たちの提唱する3つの提言は行動の枠組みを提供し、ARTのようなツールがロードマップを提供します。今必要なのは、勇気を持って一歩を踏み出すリーダーシップです。
2025年12月までには、障がい者インクルージョンを率先して行う企業と取り残される企業が明らかになるでしょう。
SYNC25は、単なる企業のイニシアチブではありません。障がい者インクルージョンについて企業が考え、関わり、利益を得る方法を根本的に変える、一世一代のチャンスなのです。
枠組みができ、ビジネスケースは明確になりました。今こそ、行動を起こす時です。