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市役所が、限られた予算でテクノロジーセクターの成長を促すには

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Melbourne Climate Network(メルボルン気候ネットワーク)は、気候セクターの経済成長を促進する、産業界主導のクラスターです。 Image: City of Melbourne

Andrew Wear
Director, Economic Development and International, City of Melbourne
  • 市役所は、低コストかつインパクトの大きいさまざまな方法により、スタートアップのエコシステムを支援できるユニークな立場にあります。
  • スタートアップに必要なデータとサポートを提供し、市の課題に取り組んでもらうことにより、市は、 パブリックセクターと新興テクノロジーセクターを支援するイノベーションの触媒となることができます。
  • 市役所は、多額の予算がないからといって、こうした動きを主導することを諦めるべきではありません。創造性、パートナーシップ、戦略的な行動も同じ様に効果的だからです。

イノベーションは、人が集まる場所で起こりやすい集団的事業です。スタートアップ企業は、都市の中でも、他のスタートアップや優秀なスタッフ、ベンチャーキャピタル・ファンド、大学、インキュベーターやアクセラレーターといった支援機関の近くに必ずあります。

市役所は、イノベーションを促進する上で非常に重要な役割を果たすことが可能です。市の成功に重点を置く行政は、スタートアップのエコシステムを支援するユニークな立場にあります。助成金やその他の投資のために多額の資金を常備していなくても、市役所は低コストでインパクトの大きい様々な方法を活用することができるからです。

より成熟したスタートアップセクターは、比較的よく組織化されています。業界団体、インキュベーターやアクセラレーター、定期的なビジネスイベントなど、数々の支援機関が確立されているからです。これとは対照的に、小規模または新興のテクノロジーセクターには、このような構造は整っていないでしょう。したがって、市政府は、こうした新興セクターを支援する上での重要な要素となるのです。

コネクションの構築:コラボレーションのためのツール

スタートアップ・エコシステムの成功を支えているのは、エコシステム内にある様々な組織や人々の間に存在する、つながりの強さです。スタートアップ・コミュニティには常に、良いつながりを作り、アイデアを元に他者と協力し、新たなパートナーシップを形成するための機会を得たいという欲求があります。

市役所は、他のどのレベルの政府よりも、自分の市とそこに住む人々のことをよく知っています。自治体は、スタートアップセクターの関係者を集めることにより、単純なネットワーキングの機会、ベストプラクティスや洞察を共有するプラットフォーム、共通の課題をめぐるワークショップなどにおいて、非常に価値のあるものを提供することができるのです。

市の課題をイノベーションの機会に変える

初期段階にあるスタートアップ企業は、優れた技術的専門知識を持っている一方、潜在的な顧客が直面する現実的な問題に対する洞察力に欠けていることが多くあります。同時に、都市には解決すべき問題が山積しています。例えば、メルボルンは、建物からの二酸化炭素排出量を削減し、留学生をうまくコミュニティに統合し、パンデミック後の新しい都市リズムに適応する必要があります。

スタートアップ企業に必要なデータとサポートを提供し、市の課題に取り組んでもらうことにより、市はパブリックセクターと新興テクノロジーセクターを支援するイノベーションを促進することができるのです。

スタートアップ企業に必要なデータとサポートを提供し、都市の課題に取り組んでもらうことにより、市はパブリックセクターと新興テクノロジーセクターを支援するイノベーションを促進することができます。 Image: Unsplash/Mika Baumeister

プロモーションの力

革新的な活動は、勢いと可能性に後押しされた楽観主義の上に成り立っています。このような状況において、マーケティングは、セクター内の活動や成功を強調することにより、人材、投資、市民の関心を惹きつけるという重要な役割を果たします。

市役所は通常、ウェブサイト、ニュースレター、コミュニケーション、海外からの視察団の受け入れなどを通じて、市のプロモーションを行う体制を整えています。既存のマーケティングやコミュニケーションを活用してイノベーション分野を促進することにより、地方自治体は地元で起きている成功を増幅し、加速させることができるのです。

地区開発とイノベーション・ハブ

イノベーションは人と人とのつながりの上に成り立つため、特定の場所に集まる傾向があります。世界中の多くの都市が、イノベーション地区の開発支援に力を入れています。こうした地区の特徴は、研究機関、企業、スタートアップが密集していることです。最も有名な例は、マサチューセッツ州ケンブリッジのケンドール・スクエア。マサチューセッツ工科大学(MIT)に隣接し、何千ものスタートアップが集まるこの地区は、「地球上で最も革新的な平方マイル」として知られています。

市役所は、土地利用計画の調整や、公園、広場、道路などの公共領域のインフラに対する責務など、こうした地区の開発を支援するための多くの政策手段を有しています。

州政府および国家政府への提言

また、州政府や国政府も重要な役割を担っています。連邦制の下では、このレベルの政府はしばしば、より大きな資金や資源を集めることができます。コミュニケーションチャネルが確立され、建設的な協力関係があれば、市役所は、他のレベルの政府とともに、地域のイノベーション・エコシステムを支援する方法について議論を主導することができるのです。

メルボルンの経験:テクノロジーセクターのロードマップ

メルボルンの場合、このアプローチは、バイオテクノロジー、気候テクノロジー、デジタルゲーム、スポーツテクノロジー、教育テクノロジーの5つの優先セクターに適用され、成功を収めています。これらは、メルボルンが世界的に競争力を持つ分野、または同市が活用し、リードできる新興分野として特定されました。

それぞれについて、メルボルン市は、スタートアップ企業から大企業、大学、その他のレベルの政府まで、幅広いステークホルダーを招集し、討論会を開催しました。各討論会では、市が支援できるセクターの課題と、最も効果的に支援を提供する方法に関して、参加者に問いかけられました。また、各セクターの主要なステークホルダーにインタビューを行い、それぞれのセクターにおけるダイナミクスに関する理解を深めています。こうした関与が、「ロードマップ」の共同開発につながりました。このロードマップは、現在メルボルン市が各セクターに提供している支援の指針となっています。

気候テクノロジーとメルボルン気候ネットワーク

気候テクノロジーに関する取り組みは、Melbourne Climate Network(メルボルン気候ネットワーク)を通じて進められています。この革新的なイニシアチブは、メルボルン市が創始・支援し、業界代表により構成される理事会が主導。メルボルンのビジネス、学術、行政の各セクターから数百人が定期的に集まり、気候ファイナンスから商業ビルの改修に至るまで、さまざまな課題に取り組んでいます。

初期段階にもかかわらず、メルボルン気候ネットワークは、すでにメルボルンの気候テクノロジーセクターで大きな勢いを見せています。最終的には、独立した、メンバー主導の組織へと発展し、このセクターを支援していくでしょう。

予算ではなくインパクトにより主導する

市行政による低コストの介入は、他のレベルの政府による、大規模な予算をかけたイノベーション・エコシステムの支援を補完する、貴重なものです。多額の予算が無いからといって、市役所がこうした動きを主導することを諦めるべきではありません。創造性、パートナーシップ、戦略的行動も同様に効果的だからです。

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