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増加する子どもの近視 〜目を守るための予防策とは〜

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近視は増加の一途をたどっており、世界の子どもの3人に1人が近視の影響を受けています。 Image: Unsplash/elenatrn

Ewan Thomson
Senior Writer, Forum Agenda
Madeleine North
Senior Writer, Forum Agenda
  • 2030年までに、約34億人が近視になると世界保健機関(WHO)が警告しています。
  • 近視は子どもの間においても増加傾向にあり、世界の3分の1の子どもたちがその影響を受けています。
  • 世界経済フォーラムの「グローバルヘルスとヘルスケアの戦略的展望(Global Health and Healthcare Strategic Outlook)」は、医療アクセスの不平等に対処することを目的としています。

近視、つまり遠くのものが見えづらくなる状態が、増加の一途をたどっています。もっとも懸念すべきは、増加傾向にある近視の影響が子どもたちにも及んでいることです。

世界保健機関(WHO)によると、2020年に約26億人が近視を患い、2030年までには34億人に増えると予想しています。

また、「British Journal of Ophthalmology(BJO)」に掲載された最近の研究によると、世界の子どもと青少年の3分の1が近視の影響を受けています。

近視は、眼鏡やコンタクトレンズで簡単に矯正できるため、当初はそれほど大きな問題と感じないかもしれません。しかし、近視は視力障害の主な原因であり、失明につながることもあるのです

最近の傾向では、近視が進行し、黄斑変性症や白内障、さらには緑内障網膜剥離のリスクがある「強度近視」と呼ばれる状態を引き起こしています。

Graph showing projected number of people estimated to have myopia and high myopia for each decade from 2000 to 2030
「強度近視」の症例数が増加しており、目はより深刻な症状に脅かされています。 Image: WHO

子どもの近視の発症はより低年齢化しており、強度近視およびそれに伴う問題を発症する可能性が高まっています。BJOの調査は、1990年から2023年の間に子どもの近視は3倍に増加し、新型コロナ感染拡大のパンデミック後の増加が「特に顕著」としています。

地域社会への負担も考えなければなりません。近視は、世界的な生産性において毎年2,000億ドル以上の損失を招き、各国に財政的な負担をもたらす可能性があるのです。また、矯正せずに放置すると、生活の質に悪影響を及ぼし、子どもの学力低下の一因となります。

BJOの調査は、開発途上国においては2050年までに人口の40%が近視になると予測しています。世界経済フォーラムの「グローバルヘルスとヘルスケアの戦略的展望(Global Health and Healthcare Strategic Outlook)」の目的は、このような健康格差に対処することです。同フォーラムは、公平性を基本的な目標に、公平なアクセス、医療システムの変革、技術革新、環境の持続可能性という4つの柱に基づく2035年のビジョンを掲げています。

では、近視の患者はなぜ増加しているのでしょうか。そして、この傾向の進行を遅くする、あるいは逆転させるためにはどうすれば良いのでしょうか。

屋内で成長する

世界中で近視が急速に増加していることから、原因が遺伝的なものではないことがわかります。そのため、科学者たちは、環境要因の中から原因を特定しようとしており、そのいくつかは、教育(またはその副作用)と室内で過ごす時間に関連していることが示唆されています。

現在、年齢が高い人ほど、子どもの頃に外で遊んだ時間が長い傾向にあります。一方、21世紀の子どもたちの多くは、親とは大きく異なる子ども時代を過ごしています。都市に住む人の数が増え、安全上の理由から親が子どもたちを家の中に閉じ込める傾向が強くなっているのです。

新型コロナの感染拡大も、この問題を悪化させています。ロックダウンの期間中、若者たちは屋外で過ごす時間がさらに減り、スクリーン(画面)を見る時間が長くなりました。これにより、特に低年齢の子どもたちにおいて、近視の悪化が加速しています。

この問題を他の国々よりもよく理解しているのが、シンガポールです。同国は世界で最も近視を患う人の割合が高く、2001年以来、問題解決のために数多くの研究を行ってきました。就学前から子どもたちの定期検診を推奨する、通常の取り組みに加え、「近視の発症を予防または遅らせることができる」屋外での活動に時間を費やすよう指導しています。

屋外にいると視力が回復する理由とは

屋外で自然光を浴びることが、近視予防に役立つのはなぜでしょうか。その正確な理由を解明する研究は進行中です。太陽の光は、多くの屋内照明より明るいため、目の成長を促進しているのかもしれません。

また、網膜が太陽光を浴びると眼球内に放出されるドーパミンとの関連も考えられます。ドーパミンは、眼球が長く伸びすぎるのを抑制し、近視が発症する可能性を減らすのに役立ちます。

あるいは、自然光の中で過ごすことで誘発されるビタミンDの合成に関係している可能性もあり、これもまた近視を抑制します。

違いをもたらす屋外時間の長さとは

中国・上海の小学校にて行われた研究では、対照群が1日2時間強の屋外習慣を継続する一方、実験群は屋外時間を40~80分追加。その結果、2年後に、実験群では近視の発症率が対象群に比べて11~16%低下が見られました。

「子どもにとって、屋外で過ごすことは、何らかの理由でとても有益です」と、UK College of Optometrists(英国検眼士協会)の臨床アドバイザー、ダニエル・ハーディマン=マッカートニー氏はBBCのインタビューで語っています。日光、運動、あるいは子どもの目が遠くのものに焦点を合わせる機会など、その理由が何であっても、視力に恩恵をもたらしているのです。その効果は、近視の専門家が、子どもたち(特に7~9歳児)に1日最低2時間は外で過ごすよう勧めていることからも明らかです。

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