持続可能な開発

官民連携による、サステナブルな家電の促進とは

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日本の各自治体は、エネルギー効率の高い家電製品の普及を推進しています。 Image: Unsplash/Lucas George Wendt

Naoko Tochibayashi
Communications Lead, Japan, World Economic Forum
Mizuho Ota
Writer, Forum Agenda, Forum Agenda
  • 日本の地方自治体は、古い家電製品からエネルギー効率の良い新しい家電製品への買い替えを奨励するため、支援金を提供しています。
  • 小売業者は、申請手続きを簡素化し、政府の取り組みに関する情報を共有することにより、こうした支援プログラムをサポート。
  • 家電メーカーはリサイクル技術を強化し、新製品へのリサイクル材料の使用を増やしています。

技術の進歩に伴い、家電製品のエネルギー効率と持続可能性はますます高まっています。環境省の特設サイト「しんきゅうさん」によると、現在の冷蔵庫は、わずか10年前のモデルよりも最大42%、エアコンは15%効率が向上。一つ一つの製品レベルではもちろんのこと、国レベルで最新式の家電に切り替えることにより、消費エネルギーの大幅な削減が可能となります。

日本では、エネルギー効率が低い古い家電製品から、新しく、省エネ効率の高いものへと買い換えることを自治体が主導して支援する取り組みが強化されています。さらに、回収した古い家電のパーツを新たな製品に再利用する企業も増加してきました。

自治体による省エネ家電への買い替え推進

東京都や三重県、富山県、福井県などの自治体では、古い家電をより省エネ効率の高い最新式の製品に買い換える際に、料金を還元する制度を設けています。東京都における「東京ゼロエミポイント」制度は、さらなる省エネ製品への切り替えを加速すべく、2024年10月から還付額を2万6,000円から8万円に引き上げました。さらに、これまで、オンラインもしくは郵送で行う必要があった補助金の申請を簡素化。家電販売店の協力により、買い換える際に店舗で直接手続きすることができるようになっています。

買い替え支援の対象になる家電製品の基準は、自治体によって違います。東京都の制度では、製造年から15年以内の家電を買い換える「通常買替」と15年以上経っている家電を買い換える「長期使用家電からの買替」では、還付額に差があり、より古い家電の買い換えを促進するため、「長期使用家電からの買替」の還付額が「通常買替」より割増となっています。

家電量販店のヤマダ電機は、こうした買い替え支援のある自治体と、その支援内容の詳細をまとめたウェブページを公開しており、利用者が簡単に地元の制度を調べることができるようになっています。また、大手家電量販店であるノジマは、自社ホームページに東京ゼロエミポイントに関するページを設け、対象商品の説明や還付金申請に必要な書類や手続きの流れなどの詳細を記載するなど、官民が連携する形で制度の利用促進が行われています。

家庭における電化製品のエネルギー効率を改善するという、一見小さな取り組みも、自治体、さらには国レベルで行うことにより、大きな効果を生むことができます。

Naoko Tochibayashi, Communications Lead, Japan, World Economic Forum | Mizuho Ota, Writer, Forum Agenda

リサイクル素材で作る新たな家電

新たな家電への買い替えにより、廃棄される古い家電はどうなるのでしょうか。日本では、1998年に公布された「家電リサイクル法」により、一般家庭や事務所から廃棄される家電の有用な部分をリサイクルすることが義務付けられています。

東京都の「ゼロエミポイント」制度のように、家電量販店と連携して行うことの利点の一つは、こうした店舗が古い家電の回収サービスも行なっているため、新しい家電の買い替えと古い家電の回収がスムーズに行える点にあると言えるでしょう。

環境省によると、 2022年には約1495万台の古いエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機がリサイクル品として回収されました。これらの家電製品から、鉄、銅、アルミニウム、ガラス、プラスチックなどの貴重な資源が抽出され、そのリサイクル率は80%を超えています。

近年、企業を中心に、廃家電から回収された有用パーツの再利用率を上げる取り組みも進んできています。その一例が、大手家電メーカーのパナソニックの取り組みです。同社では、古い家電に由来するリサイクル素材の物性を向上させることにより、新たな製品への採用比率を高める取り組みを行なってきました。

例えば、再生プラスチックは、これまで新品のプラスチックに比べて強度などの材料特性が低く、製品の中でも目につきにくい場所や強度が必要とされない部分での採用に限られてきました。パナソニックでは、再生プラスチックに最適な添加剤を加えることにより、耐久性の向上に成功。より多くのパーツに採用できるようになり、再生プラスチックが40%使われた洗濯機および掃除機を販売するに至っています。

さらに同社は、ロボットを使用した「回家電自動解体システム」をリサイクル業社の平林金属と共同開発し、短時間でのエアコン室外機の自動解体を可能にしました。担当者は、「人手不足の中、効率的で長期安定的なリサイクルを実現する技術が必要だ」と語り、今後、他の廃家電にも応用することにより、家電のリサイクルにさらに貢献していく予定です。

エネルギーを意識した循環型社会の構築

家庭における電化製品のエネルギー効率を改善するという、一見小さな取り組みも、自治体、さらには国レベルで行うことにより、大きな効果を生むことができます。新しい電化製品への切り替えを奨励するプログラムを通じて、よりエネルギー効率の高い電化製品を手に入れるだけでなく、日々使用するエネルギーに対する意識も高まるのです。

さらに、古くなった家電製品の回収と、その材料を新しい製品に再利用することを組み合わせることにより、家計のコストを削減し、より環境に優しい社会の構築に貢献します。官民の連携によるこうした取り組みの推進が、日常生活におけるエネルギー消費と効率について高い意識を持つ循環型社会への具体的な一歩へとつながるでしょう。

より多くの家庭が省エネ家電を導入することにより、日本は持続可能な未来へと進んでいくのです。

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