なぜ、世界中の若者は「意義のある仕事」を求めるのか
若者の仕事とウェルビーイング(幸福)は、新型コロナウイルス感染拡大、紛争、気候変動、生活費の高騰などの影響を受け続けています。 Image: Jürg Stuker/Flickr
- 若者たちは、公正で充実感があり、影響力のある「意義のある仕事」を求めていると述べています。
- 意義のある仕事とは、公正な賃金や福利厚生だけではなく、目的意識、成長の機会、健全なワークライフバランスのある仕事です。
- しかし、最近の調査によると、若者の仕事とウェルビーイング(幸福)は、依然として新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、紛争(Conflict)、気候変動(Climate change)、生活費の高騰(Cost of living)という「4つのC」に影響を受けています。
5人に1人の若者が雇用、教育、訓練を受けていない世界に私たちは生きています。
国際労働機関(ILO)のデータによると、若者たちへの教育や就労機会の創出への投資不足が、2030年までにグローバル経済に83兆ドルもの損失をもたらす可能性があることが分かりました。
若者が咲かせようとする花は、「絶望」という名の雑草にがんじがらめになっているのです。
2023年末、YMCAはデロイトオーストラリア及びサービスナウと共同で、若者による、若者のためのグローバルなアンケート調査を実施。この調査は、世界120か国以上の18歳から35歳までの1万人以上の若者を対象に行われ、回答者の45%は、これまで十分に取り上げられてこなかったグループに属する人々でした。
この調査によると、10人の若者のうち4人は、仕事に就く、あるいは起業するために必要な適切なスキル、資格、経験を持っていないことが示唆されています。
職場が必要とするスキルと、実際のスキルのミスマッチはよく知られており、特に労働環境が急速に変化し続けている現在において、その傾向は顕著です。世界経済フォーラムにおいても、今後5年間に「コアスキル」のほぼ半分が変化すると予測しています。
今回の調査で際立った特徴は、その結果が世界中で一貫していたことです。調査対象者たちは、自分たちが保有するスキルの中で最もギャップが大きいのはデジタルスキルだと回答。デル・テクノロジーズによる並行調査においては、デジタルスキル教育を受けているのは若者のわずか44%である上、「極めて基本的な」デジタルスキルしか教わっていないこと、さらに12%はまったく受けていないことが分かりました。
また、10人のうち3人の若者が、自国の社会・経済状況による制限を受けています。同時に、同じ割合の若者が仕事やビジネスに就くための適切なサポートを受けることができていいません。
調査結果から、若者の仕事とウェルビーイング(幸福)は、依然として新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、紛争(Conflict)、気候変動(Climate change)、生活費の高騰(Cost of living)という「4つのC」に影響を受けていることが分かります。
また、若年層の失業問題に対する現在のプログラムやアプローチが分断されていることが明白になりました。若者のニーズを満たせず、潜在能力を発揮させることができていないのです。
そして最も重要なことは、若者が「意義のある仕事」を熱望しているということです。意義のある仕事とは、スキルや将来性を高めると同時に、より広い目的意識や社会への影響に貢献できるような、安全対策が施された、豊かで力を与える仕事体験のことです。
それでは、若者たちの雇用、不完全雇用、失業という課題に立ち向かうには、これからどうすればよいのでしょうか。最初に行うのは、若者たちが自身の希望する仕事に関して語る内容を定義し、共有し、基準を確立することです。
私たちの調査によると、意義のある仕事とは、「公正で充実感があり、若者とそのコミュニティの成長と幸福にポジティブな影響を与える仕事」です。回答者は、そのような仕事が実際にはどのようなものかについても述べています。そこから、意義のある仕事を定義する12の基準を抽出し、ILOやその他のグローバルパートナーと共有しました。
その基準とは、健康、報酬、倫理、保護、包括、成長促進、共同創造、バランス、生産性、持続可能性、目的意識、つながりです。
若者たちは、当局が自分たちを見捨てていると訴えています。若者たちが意義ある仕事を見つけ、そのための準備をし、その仕事に就くことができるよう、教育機関、雇用者、企業、各国政府、市民社会組織、地域社会が構造的かつ協調的な対応を行う必要があるでしょう。
すべてのステークホルダーに役割がありますが、まずは政府がこの基準を活用して取り組みの足並みを揃え、若者の将来を左右する政策決定において若者の声を反映させるべきです。雇用者は、採用や従業員の信頼、モチベーション、定着率、研修や能力開発にこれらの基準を活用することができ、若者自身もこの基準をキャリア形成に役立てることができます。今こそ、この12の基準を労働環境全体にわたって検証する必要があるのです。
何百万人もの若者の苦境は、彼らの幸福に影を落としているだけでなく、将来的な経済成長の妨げにもなっています。
意義のある仕事とは、公正な賃金や福利厚生だけではなく、目的意識、成長の機会、健全なワークライフバランスがある仕事です。それは、従業員と雇用主の両方に利益をもたらすでしょう。
この課題が重要である理由は、およそ11億あります。この数字は、今後10年間で労働市場に参入する南半球の若者たちの数。その数と同じだけの理由があるのです。
9万人のスタッフと92万人のボランティアを擁し、世界で最も多くの若者を雇用する組織の一つであるYMCAもこの課題に注目しています。世界中の政策立案者も、そろそろ注目すべき時です。