85%の国が支持するクリーンエネルギーへの移行〜公平を保つには〜
大多数の人がクリーンエネルギーへの迅速な移行を望む中、開発途上国が取り残されないようにしなくてはなりません。 Image: Unsplash/Karsten Würth
- 国連による最新の「Peoples’ Climate Vote(気候変動に関する世論調査)」によると、化石燃料からの速やかな脱却を支持する国が過半数を占めています。
- 一方、2023年にクリーンエネルギー・インフラに投資される1.8兆ドルのうち、新興国や開発途上国に投資されるのは15%にも満たないのが現状です。
- 世界経済フォーラムの新たな報告書「公平な意向を加速する〜データ主導のアプローチ〜(Accelerating an Equitable Transition:A Data-Driven Approach )」では、各国のデータを分析し、公平性のギャップがどこに存在するかを明らかにしています。
世界の10人中7人が、気候危機への取り組みとして、自国ができるだけ早くクリーンエネルギーに転換することを望んでいます。
この傾向は、国連が77カ国で7万3000人以上を対象に実施した2回目の「Peoples’ Climate Vote(気候変動に関する世論調査)」で示されており、世界の石油、ガス、石炭の10大生産国の過半数を含む85%の国が、化石燃料からの速やかな転換を支持していることが明らかになっています。
国連開発計画のアヒム・シュタイナー総裁は、この調査結果について「驚くべきコンセンサスの高さが明らかになった」と述べています。同氏は指導者や政策立案者に対し、「特に、各国が次の気候変動対策の誓約を策定する際に」行動を起こすよう促しました。
一方で、そうした行動は迅速な移行を達成するためだけではなく、公平でなければなりません。世界経済フォーラムとボストン・コンサルティング・グループによる最新の報告書は、「良かれと思って実施した政策や気候変動対策が、既存の経済的不平等を悪化させ、社会の分断と偏向を深め、最終的には環境と社会経済の進歩を遅らせる可能性がある」と警告しています。
気候変動を最も懸念している国は
「Peoples’ Climate Vote(気候変動に関する世論調査)」の回答者の過半数(53%)が、昨年よりも気候危機を懸念していると答えています。また、世界の後発開発途上国(LDC)では10人に6人が懸念を表明した一方で、G20諸国で懸念を示したのは半数でした。
世界で最も不安が高まっている10カ国は以下の通りです。
1. フィジー(80%)
2. アフガニスタン(78%)
3. メキシコ(77%)
4. トルコ(77%)
5. パラグアイ(76%)
6. 大韓民国(76%)
7. ブラジル (76%)
8. エクアドル (76%)
9. コロンビア(75%)
10. グアテマラ(74%)
LDCsは気候危機の矢面に立たされることが多いため、これらの国の人々の過半数(89%)が、気候危機への取り組みの強化を望んでいるのは驚くべきことではありません。サハラ以南のアフリカ諸国であるエチオピア、タンザニア、ベニンは97%と最も高い支持率を示しています。
気候危機に対する各国の取り組みは十分か
回答者の4分の1は、自国が気候変動問題への取り組みに失敗していると答えています。中でも、ハイチの人々は、73%が自国の取り組みは非常に悪い、もしくはやや悪いと考えており、最も失望している国の一つと言えるでしょう。
気候危機への対応として、クリーンエネルギーへの移行が重要である一方で、この分野への投資の90%以上が先進国と中国に集中しているのが現状です。
2023年にクリーン・エネルギー・インフラに投資された1.8兆ドルのうち、新興国や開発途上国への投資は15%以下。「世界人口の65%を占め、世界の国内総生産(GDP)の約3分の1を生み出しているにもかかわらず」と、世界経済フォーラムの報告書「2024年効果的なエネルギー転換の促進(Fostering Effective Energy Transition 2024)」は指摘しています。
公平な移行を実現するには
当フォーラムの報告書が指摘しているのが、途上国へのクリーンエネルギー投資を「2030年代初頭までに、現在の2700億ドルから1兆6000億ドルへと6倍以上」に増やす必要性です。
国連の気候に関する世論調査によれば、10人に8人がこれに同意し、79%が「裕福な国が貧しい国により多くの支援を与える」ことを望んでいると回答。
その一方で、移行そのものが不平等を生み出す可能性があることも否定できません。例えば、炭鉱の廃坑は地元の雇用に影響を及ぼし、電気自動車の導入は主に高所得世帯に限られてしまいます。当フォーラムの「公平な意向を加速する:データ主導のアプローチ(Accelerating an Equitable Transition:A Data-Driven Approach)」に示されているように、「気候変動の緩和努力は、依然として社会の富裕層により多く、不均一な利益をもたらしている」のです。
この報告書では、国によって直面するリスクが異なるため、細部に気を配ったアプローチが必要であると指摘。また、「情報に基づいた戦略を生み出す」ために、各国のデータを分析し、公平性のギャップがどこに存在するかを明記しています。
既存の不平等を悪化させないために、気候政策が包括的かつ社会経済的影響に配慮したものであること、そして気候危機との闘いにおいていかなる国やコミュニティも取り残されないようにしなければならないと、同報告書は明示しています
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Agustin Delgado
2024年12月7日