宇宙飛行士が教える、チームワークの4つの秘訣
元宇宙飛行士の野口聡一氏が、より効果的なチーム作りの秘訣を語ります。
- 野口聡一氏は、航空エンジニアで元宇宙飛行士。
- 世界経済フォーラムのポッドキャスト「Meet The Leader」で、宇宙飛行士が宇宙での課題に取り組むために、地上でどのような訓練をしているのかを語りました。
- チームワークは宇宙ミッションの成功と乗組員の安全にとって不可欠です。そして、これらの教訓は、リーダーたちやフォロワーにとって極めて重要なものです。
航空エンジニアであり、元宇宙飛行士である野口聡一氏は、チームを成功させる秘訣を誰よりも知っています。同氏は344日間宇宙に滞在し、3つの異なる打ち上げシステムで飛行した3人目の宇宙飛行士です。
生還を左右しかねない修理技術のテストを行うために船外で宇宙遊泳に参加するにしても、船内で科学的な研究を行うにしても、チームワークは宇宙ミッションに欠かせない要素だと述べています。
1996年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)から宇宙飛行士候補者に選ばれた同氏の最初のミッションは、2005年のディスカバリー号によるSTS-114。これはコロンビア号事故後初のスペースシャトルミッションで、目的地は国際宇宙ステーション(ISS)でした。その4年後、同氏はソユーズ17号で再度ISSへ。その後、2020年にスペースX社のクルー・ドラゴンで打ち上げられた最後のミッションにも参加しました。
今年初めにダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会で同氏は「Meet The Leader」ポッドキャストの司会者であるデジタル・エディター、リンダ・ラシーナと対談しました。
そこで共有された、チームとして効果的に働くための4つの教訓を紹介します。
1. 全員の専門知識を尊重すること
宇宙産業には多くの専門知識と特殊性があるため、リーダーになるべき時と、フォロワーになるべき時を知ることが重要だと同氏は言います。宇宙飛行士が宇宙で実験を行う場合、ほとんどは地上の専門家の指示や指導に従って実施します。
「宇宙飛行士がリーダーシップを発揮すると思われがちですが、実際にはそうではなく、代わるがわるリーダーを務めます。地上チームや地上管制チームがリードし、彼らが正しいと思うことに従うこともあります。
科学プロジェクトは、地球にいる学者や研究者との共同作業であり、私たちが行うのはごく一部です。ですから、リーダーシップやフォロワーシップと同様に、チームワークがとても重要なのです」。
専門知識を尊重することで、あらゆるチームがより効果的に業務を遂行できます。1人が大きな責任を負う「救世主」症候群に陥らないよう、各メンバーのスキルを適切に活かして目標を達成すべきです。
2. 全員が同じ目標を共有すること
宇宙飛行士は、地上で極限状態での訓練を受け、宇宙への準備を整えます。あるサバイバル訓練では、同氏とクルーはイタリアの洞窟で、日差しのない、火星や月と似た地形の中を2週間かけて踏破。別の訓練ではフロリダの水中基地で2週間を過ごし、宇宙での生活に備えました。
同氏は次のように述べています。「私たちがチームワークを学ぶ方法のひとつは、サバイバル訓練で一緒に行動することです。宇宙滞在時と同じように、サバイバル訓練では想定外の事態も予測しておかなければなりません。
隔離されていることが重要な意味を持ちます。なぜなら、チームは否応なしに協力して課題解決を行い、即時対処が必要な課題へのアプローチ方法を学ばざるを得ないからです。
変化に対応し、自然に対処しながら、少しずつ自分自身のことが分かってきます。チームメイトのことを知り、協力する方法を知っていくのです」。
3. 失くしていいものと、いけないもの
多くの人は完璧を求めますが、それは時に進歩の妨げになると同氏は説明します。宇宙でクルーが生き残れるかどうかは、現実的なアプローチで課題を克服できるかどうかにかかっているからです。
「私たちはさまざまな状況を想定して訓練を行っていますが、時には未知の領域に遭遇することも、クルーだけでどうすべきかを決めなければならないこともあります。私の最後のミッションでもそのようなことが起こりました。重要なのは、チームとして対処することです」。
予期せぬ難題に直面した場合は、全体的な優先順位を見極めることが重要だと同氏。「100%の解決策はありません。宇宙では、このことが究極の目標であるチームの生存につながります。
地上にいる私たちは、予期せぬ変化が起きた時にはそれに合わせて計画を変更しなければならないことを再認識すべきです。強力なチームワークがあってこそ、すべてのメンバーが、より大きな究極の目標に向けて状況を立て直すことができるでしょう。つまり、全員の目標のベクトルを一直線にするのです」。
4. 安全を守るコラボレーション
同氏は最後に、宇宙産業に携わる全員のコラボレーションの重要性を訴えました。
当時のソビエト連邦がスプートニクを地球低軌道に打ち上げることに成功してから、約70年。以来、国家機関や企業は何千もの衛星を打ち上げてきました。
新しい機体を比較的簡単に軌道に投入できるようになったことは、大きな可能性と同時にリスクももたらしています。連携がうまくいかなければ、宇宙を旅するすべての人の安全が損なわれるだろうと同氏は警告します。
「宇宙産業は急速に変化しており、私たちの仕事で若い世代に夢を持ってもらえているように思います。ただ、大切なことは、地上と同じように、宇宙もサステナブルである必要があるということです。地上では気候に関する課題があります。一方、宇宙では、新規の小型衛星が多く打ち上げられているため、スペースデブリが他の機体の軌道に与える影響が懸念され始めています。
今が、世界経済フォーラムが世界に向けて警告を発する良い機会かもしれません。衝突の管理と軽減を考える必要があるのです」。
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