AIガバナンス・アライアンス、公平なAI戦略に関する初のレポートを発表
AIガバナンス・アライアンスは、デジタルデバイドに対処し、AIの包括的な進歩を促進するための行動を呼びかけます。 Image: Getty Images/iStockphoto
- 世界経済フォーラムの「AIガバナンス・アライアンス(AIGA)」は、3つの作業領域を通じて、責任あるAIの開発、応用、ガバナンスに取り組んでいます。
- 同アライアンスは、安全なシステムと技術を構築するための提言として3つの論文を発表しました。
- AIは、グローバルな課題に立ち向かう鍵となりますが、その力を解き放つためには、デジタルデバイドへの対処も必要です。同アライアンスは、AIのインクルーシブな進歩に向けた取り組みを、パートナーやコアリションに呼びかけています。
大きな変革を特徴とする今の時代において、技術的なイノベーションは中心的な役割を担い、私たちを新たなフロンティアへと導きます。20世紀後半から進展してきたAI(人工知能)の軌跡は、生成AIの登場によって画期的なマイルストーンに達しました。創造、分析、イノベーションを可能とする卓越した能力を備えたこの最先端テクノロジーがもたらすパラダイムシフトの影響力は、ヘルスケアやエンターテインメントのような伝統的な分野を超えて広範囲に及びます。
AIの能力が進化し続け、イノベーションを推し進めるにつれ、グローバル経済と社会に革命の波が押し寄せています。この革命の指数関数的な進展は、新たな経済的機会をもたらすだけでなく、社会的責任を果たすための本質的な取り組みが欠かせないことを示しています。AIの変革力には、産業や社会の枠組みを再構築するための細心の配慮が求められます。このニーズに直面しているグローバルリーダーたちは、国やセクターを越えて団結し、AIの責任ある開発、展開、採用を確実なものとして、皆が恩恵を共有できるよう、協力して取り組む必要があります。
マルチステークホルダー・アプローチ
こうした課題に対応するため、世界経済フォーラムは2023年6月、業界リーダー、各国政府、アカデミア、市民団体を結集した先駆的な協力体制である「AIガバナンス・アライアンス(AIGA)」を立ち上げました。2023年4月に開催された「責任あるAIリーダーシップ・サミット(Responsible AI Leadership Summit)」後のプレシディオ勧告から生まれたAIGAは、AIガバナンスに対する考え抜かれたソリューションとアプローチを推進することに専心しています。また、開発から応用、ガバナンスに至るまで、AIのバリューチェーンのあらゆる段階で確実に倫理的配慮が行われるようにし、責任あるAI開発へのコミットメントを共有することを表明しています。
「安全なシステムとテクノロジー」、「責任あるアプリケーションと変革」、「レジリエントなガバナンスと規制」という3つの作業領域を中心に構成された同アライアンスは、包括的なエンドツーエンドのアプローチを採用し、AIガバナンスの主要な課題と機会に取り組んでいます。また、様々な視点とステークホルダーを結びつけることで多様性を育み、インクルーシブかつサステナブルな長期的ソリューションに向けた深い議論、アイデア、実行戦略を促進することを目指しています。
AIガバナンス・サミットと初のレポート
2023年11月、世界経済フォーラムはサンフランシスコで「AIガバナンス・サミット(AI Governance Summit)」を開催し、共有された責任あるAIのイノベーション、ガバナンス、トランスフォーメーションを推進するため、参加ステークホルダーの総意を発表しました。
同サミットがアライアンス初のレポート発表に向けた土台作りに貢献したことは、重要なマイルストーンとなりました。「AIガバナンス・アライアンス - ブリーフィング・ペーパー・シリーズ(AI Gevernance Alliance - Briefing Paper Series)」は、今日のAIガバナンスの課題に取り組む上で、マルチステークホルダー・アプローチへのアライアンスの揺るぎないコミットメントを象徴するものです。アライアンスの各作業領域に対応した3つのブリーフィング・ペーパーという形で、責任あるAI開発の理念を要約し、地理的な境界や組織の所属を超えた継続的な対話の舞台を設定しています。
プレシディオAIフレームワーク:安全な生成AIモデルに向けて(Presidio AI Framework: Towards Safe Generative AI Models):「安全なシステムと技術」チームとIBMコンサルティングが共同で開発したこの論文は、生成AIがもたらす課題と機会を分析し、生成AIモデルのライフサイクルに関する標準化された視点の欠如などの懸念を強調しています。プレシディオAIフレームワークの導入は、早期のリスク特定、責任の共有、強固なガードレールによる積極的なリスク管理を提唱する礎石となります。
生成AIの価値を解き放つ:責任ある変革のためのガイダンス(Unlocking value from Generative AI: Guidance for Responsible Transformation):「責任あるアプリケーションと変革」チームがIBMコンサルティングと共同で作成したこの論文では、OpenAIのChatGPT発表の後にもたらされたAIの急速な普及と影響を調査しています。ユースケースに基づいた評価を推奨し、責任ある生成AI導入のためのマルチステークホルダーガバナンス、透明性のあるコミュニケーション、運用構造、価値ベースのチェンジマネジメントの重要性を強調し、リーダーに対して、組織へのスケーラブルで責任ある統合のためののガイダンスを提供します。
生成AIガバナンス:共通のグローバルな未来を形作る(Generative AI Governance: Shaping our Collective Global Future):「レジリエントなガバナンスと規制」チームがアクセンチュアと共同で作成したこの論文は、グローバルなAIガバナンスの状況を紹介し、国際協力とインクルーシブなアクセスの必要性を強調しています。各国のアプローチを評価し、生成AIに関する主要な議論を取り上げ、フラグメンテーション(断片化)を防ぐための国際的な協調と基準を提唱しています。
グローバルにAIを強化する:一体的な行動の呼びかけ
同アライアンスは設立以来、200を超える組織やオピニオンリーダーを結集し、システムデザイン、産業アプリケーション、ガバナンスにわたって責任あるAIの実践を促進してきました。
先進国がAIイノベーションを活用しようと競争する中、一部の国がさらに後れを取ることがないよう、デジタルデバイドに対処する必要があります。先進的な生成AIソリューションの登場は、特にグローバルサウスにおいて、アクセスやエンパワーメントの面で格差拡大のリスクを伴う可能性があります。こうした課題に取り組むために、すでにいくつかの草の根活動が行われていますが、AIガバナンス・アライアンスの取り組みは、グローバルな連帯とソリューションを求め、こうした活動のさらなる強化を目指すものです。
世界経済フォーラムは、グローバルなマルチステークホルダーのコミュニティを招集するという独自の役割を活かし、パートナーに対し、インクルーシブなAIエコシステムを育むために団結し、リソースを提供するよう強く要請しています。これには、データ、モデル、コンピューティングなどの重要な要素へのアクセス強化と、共有アクセス、接続性、相互運用性の向上に引き続き取り組むことが含まれます。また、人材育成を目標とし、地域のイノベーション・エコシステムを促進する地域の教育プログラムを慎重に育成し、支援することも不可欠です。
AIGAのコミットメントは、AIが世界中の人々と社会にとって、ポジティブな変革の力であり続けるために、企業やパブリックセクターと連携し、より包括的で革新的なAIを推進することです。
国家や産業界がAIの倫理的発展の舵取りをする中、対話だけでは不十分であり、具体的な行動が重要であることは明らかです。マルチステークホルダーの参画と実行可能な計画やガイドラインの策定を通じたAIガバナンス・アライアンスの目標は、AIのマイナス面が十分に緩和され、プラス面が広く共有される未来を支援することです。世界中の意思決定者、業界リーダー、政策立案者、オピニオンリーダーはこの取り組みに積極的に加わってください。共に、人類が共有する価値観を支持し、すべての人のための包摂的な社会への進歩を促進するAI主導の未来を形作ろうではありませんか。
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Thomas Crampton
2024年10月21日