ゼロ・ウェイスト都市の先駆者、キールに学ぶ廃棄物ゼロの取り組み
キールのゼロ・ウェイスト都市計画は、100以上の施策を通じて、2035年までに一人当たり年間15%の廃棄物削減を目指しています。 Image: Unsplash/Thomas Grams
- キールは、ドイツ初のゼロ・ウェイスト都市に認定されました。
- ゼロ・ウェイスト都市は、廃棄物をなくし、排出量を削減するサーキュラー・エコノミーの導入を推進しています。
- インドでは、プネー市が世界経済フォーラムと共同で「プロジェクト・ゼロ・ウェイスト・イニシアチブ」に取り組んでいます。
廃棄物は、気候変動、生物多様性、自然消失という三つの危機に拍車をかけていると国連は警鐘を鳴らしています。ゼロ・ウェイスト(廃棄物ゼロ)の暮らしは、世界の温室効果ガス排出量を削減し、地球温暖化を遅らせるための最優先事項です。
キール市は、ドイツで初めて「ゼロ・ウェイスト都市」の認定を受けました。この認定は何を意味し、世界の他の都市は、キールの成果から何を学ぶことができるでしょうか。
ゼロ・ウェイスト都市とは
ゼロ・ウェイスト都市認証は、非営利の廃棄物撲滅ネットワークであるゼロ・ウェイスト・ヨーロッパが創設した欧州基準です。地域の市町村や地区が廃棄物をなくし、サーキュラー・エコノミーを導入するためのサポートを行うことを目的としています。
ゼロ・ウェイスト・ヨーロッパによると、ヨーロッパでは480以上の自治体が廃棄物ゼロのビジョンを掲げています。
ドイツの都市、キールのゼロ・ウェイスト都市計画には、2035年までに廃棄物を一人当たり年平均15%削減するための100以上の対策が盛り込まれています。また、同時に残余廃棄物(リサイクルできない廃棄物)を半減させることも目標としています。
キールにおける廃棄物ゼロの取り組みは、家庭、企業、学校、自治体、イベントなどを含む幅広い廃棄物制度に支えられています。
ゼロ・ウェイストに向けたキールの取り組み
キールのゼロ・ウェイスト施策には、紙おむつの代わりに布おむつを購入するための最大200ユーロ(約32,000円)の助成金が含まれています。「子どもは紙おむつを最大6,000枚使用する」と、同市は「ゼロ・ウェイスト都市」ウェブページで述べています。
同市はまた、イベントで再利用可能な買い物袋を無料配布する一方、公共施設での使い捨て品の使用を禁止するとともに、ごみの重量に応じて料金を徴収する制度を導入しています。
英国のガーディアン紙は、キールのゼロ・ウェイスト・プロジェクトには、美容院から回収した廃髪を水から油をろ過する素材にリサイクルするものさえ含まれると報じています。
世界のゼロ・ウェイスト都市
ギリシャのティロス市も、認定ゼロ・ウェイスト都市です。同市では、一人当たりの固形廃棄物が43%減少。ティロス市は、コーヒーカプセル、バッテリー、繊維製品のリサイクルや、リサイクルできない残余廃棄物の代替燃料化などの取り組みを通し、廃棄物ゼロの実現に向けた歩みを進めています。
ワシントン・ポスト紙によると、日本では、徳島県上勝町が20年前に「ゼロ・ウェイスト宣言」を行いました。上勝町民はごみを45のカテゴリーに分類し、不要品を地元のリサイクルショップに持ち込んでいます。また、同町には廃棄物ゼロのクラフトビール醸造所もあり、店頭に並ばず廃棄されてしまう作物からビールを製造しています。
世界経済フォーラム「ゼロ・ウェイスト・プロジェクト」
インドでは、プネー市が世界経済フォーラムと共同で、廃棄物の削減と廃棄物管理システムの改善を目的とした「プロジェクト・ゼロ・ウェイスト」イニシアチブを導入しました。同市によると、それまではプラスチックごみの30%未満しかリサイクルされておらず、廃棄物管理に対する意識も低いままでした。
このプロジェクトには、廃棄物の適正処理に関する意識を高めるためのワークショップや、学校における優れた廃棄物管理システムの導入などが含まれています。
コンシューマーズ・ビヨンド・ウェイスト(Consumers Beyond Waste)は、持続可能で手頃な価格の使い捨て商品の代替品を開発することを目的とした、世界経済フォーラムのもう一つのイニシアチブです。
「プラスチックの90%以上がリサイクルされることなく、地球の景観や海を汚染しています」と同フォーラムは述べています。
都市は、現場で再利用システムをテストし、実施する上で中心的な役割を果たすでしょう。
ゼロ・ウェイスト都市づくりを支える企業
ミャンマーのリサイグロ社は、ゼロ・ウェイスト都市づくりを支えています。同社のテクノロジーは、企業とリサイクル施設や物流施設を結びつけ、企業が廃棄物を安全に処理できるようサポートするもので、企業が、二酸化炭素排出量に与える影響がデータでわかるようになっています。
インド南部のベンガルールでは、トラッシュコン・ラブズ社が、自動選別システムを使い廃棄物をウェット、ドライ、金属成分に分類し、さまざまな製品にリサイクルしています。また、同社はリサイクルできない廃棄物を、家具などの製造に使うことができるボードに生まれ変わらせています。
「Can I Recycle This?(これはリサイクルできますか?)」の頭文字に由来するCIRT社は、企業が自らこの質問に答えることができるデジタル・プラットフォームを立ち上げました。リサイクル可能な品目を特定できるようにすることで、企業が、廃棄物量、埋立料、梱包コストを削減し、自社のサステナビリティ目標の達成することができるよう後押しします。
廃棄物管理に役立つもう一つのデジタル・プラットフォームを、インドネシアのドゥティン社が提供しています。廃棄物を回収してほしい人と、廃棄物を分別して報酬を得る「ピッカー」を結びつけるアプリで、リサイクルの促進、埋立地の削減、地域経済の活性化をサポートします。
ブラジルのグリーンマイニング社も、「ポストコンシューマ包装材」(トイレットペーパーの芯やヨーグルト容器など、製品のライフサイクルが終わった後に捨てられる包装材)のリユースとリサイクルを増やすことを目的としたプログラムで雇用機会を増やしています。同社によると、ブラジル人の4分の3は、ごみを捨てる際にリサイクル可能な素材を分別していません。同社はこの状況を変えるため、ポストコンシューマ廃棄物(中身が消費された後に残る廃棄物)が大量に排出される地域に、専用の三輪車に乗った収集員を派遣してごみを回収しています。
これらの企業はすべて、人々と地球を救うアイデアをスケールアップできるようイノベーターをサポートする世界経済フォーラムのオープン・イノベーション・プラットフォーム、アップリンク(UpLink)のメンバーです。
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2024年10月30日