公正、多様性、包摂性

Z世代の視点 - 銀行が若い顧客を惹きつけるには

Z世代はデジタル世界で育ってきましたが、彼らが好む伝統的な銀行も多くあります。 Image: Unsplash/Julio Lopez

Bob Wigley
Chair, UK Finance
Rupal Kantaria
Forum Member, Oliver Wyman
  • お金や金融に対するZ世代の考え方は、上の世代と一致することもあれば、大きく異なることもあります。
  • 調査によると、Z世代はデータの安全性において従来型の銀行をより信頼しており、顧客を維持するためにはデジタルサービスに卓越する必要があります。
  • 金融機関がこの急成長市場でシェアを獲得するためには、彼らの動機や価値観を理解する必要があります。

多くの企業と同様に、金融機関もZ世代の独特な特性や微妙な違いに戸惑うことがあります。

時にわかりにくい行動をとるこの20代の世代を誤解すると、大きな代償を払うことになりかねません。Z世代は英国の労働人口の約15%を占めており、今後、彼らが働き盛りの年齢に達し、最も収入を多く得る時期を迎えるにつれて、影響力は増大し、それに比例して支出や投資のパワーも飛躍的に拡大するでしょう。

お金や金融に対するZ世代の考え方は、上の世代と一致することもあれば、大きく異なることもあります。Z世代の注目を集め、増え続けるその資金を獲得するためには、企業は、何が彼らの心をくすぐるのかを理解し、彼らが今いる場所に出向き、意見や要望が型破りなものであったとしてもそれに応える必要があります。

「フィジタル」を手に入れる

1997年から2012年に生まれた世代を指すZ世代は、デジタル世界で育ってはいますが、伝統的な銀行を好む傾向もあります。例えば、銀行がデータを保護してくれることに対するZ世代の信頼は、彼らが大手ハイテク企業に寄せる信頼よりもはるかに高いのです。

オリバー・ワイマン・フォーラムの「グローバル消費者センチメント(GCS)調査」によると、Z世代の43%が、実店舗のある銀行の支店は「安心感」を与えてくれるため重要だと回答しています。

しかし、Z世代と長く続く関係を築くためには、銀行は、実店舗と、この世代の多くが時間を費やすメタバースなどの競争力あるエキサイティングなデジタルサービスを組み合わせる必要があります。また、利便性、選択肢、価値、持続可能性、超パーソナライゼーションを求めるZ世代の欲求を満たすサービスを提供することも重要です。

デジタル領域を特別なものに

現在、ほぼすべての金融機関がオンラインでサービスを提供していますが、それだけではスマートフォンを片手に成長してきたZ世代を満足させることはできません。GCS調査によると、73%ものZ世代が、お気に入りのブランドを決定する上で顧客体験が重要な役割を果たすと回答。彼らは、お金の管理、仲間からの学び、コミュニティや楽しさを提供するツールを求めています。

Z世代はデジタル・イノベーターを進んで活用しており、72%がネオバンク(オンラインのみのダイレクトな銀行)アプリを主な予算管理ツールとして使用していると、同調査に回答しています。このようなデジタルファーストの企業は、魅力的なグラフィック、取引や投資先の選択に関する情報など、シームレスなユーザー体験を提供しています。最も人気のある銘柄のリーダーボードのように、ゲーミフィケーションを取り入れた機能は、いわゆるプレイ・トゥ・アーン(遊んで稼ぐ)型のビデオゲームや、ミーム株現象に慣れ親しんだ世代には特に魅力的です。

Z世代の投資知識へのアピール

金融機関の幹部が、今の若い投資家を昔と同じだと考えているとしたら、それはZ世代を過小評価していることになります。Z世代は、これまでの世代よりも早くから投資を行っており、伝統的なものからバーチャルなものまで、より幅広い資産クラスに投資しています。また、他の世代以上に多様性があります。企業は、彼らの行動とそれを促す動機を理解し、それに応じて提供する商品を調整する必要があるのです。

GCS調査によると、Z世代のほぼ半数が株式市場に投資しています。Z世代は、21歳までに投資を始める可能性がミレニアル世代より45%高く、X世代やベビーブーマー世代よりも2倍から4倍高いことがわかっています。しかも、小遣い程度の金額ではなく、ブラックロックの最近の調査によると、Z世代は収入の14%を貯蓄しています。

Gen Zers are 45% more likely to start investing by age 21 than Millennials were.
Z世代はデジタル世界で育ってきましたが、彼らが好む伝統的な銀行も多くあります。 Image: Oliver Wyman Forum’s Global Consumer Sentiment (GCS) survey

ビットコインが誕生してから最初に成人した世代であるZ世代が、暗号通貨やその他の仮想資産に対してかなりのリスク選好を持っていることは驚くことではありません。GCS調査のデータによると、Z世代の投資家の42%が暗号通貨に資金を投入しており、ミレニアル世代の38%、X世代の22%、団塊世代の7%として高い数字です。

Z世代の女性は、他の世代よりもデジタル資産に投資する傾向が50%高くなっています。米国と英国では、黒人およびアジア系Z世代の68%が暗号通貨に投資しており、これはより上の世代の黒人およびアジア系回答者の約3倍に上ります。

しかし、こうした若い投資家が暗号通貨に魅力を感じていることは、銀行取引と同様に、伝統的な資金源への拒絶を意味するわけではありません。GCSの調査によると、Z世代はデジタルポンドやその他の中央銀行のデジタル通貨について、上の世代よりもオープンな考えを持っています。彼らは、株式や債券のような現実の金融資産をブロックチェーン技術で取引できるようにするためのデジタルトークン化も、もはや遅すぎると考えています。

豊かな未来を目指す現実主義者

誤解を捨てれば、Z世代を本当の意味で理解するのは難しいことではありません。彼らは、経済的に恵まれた未来を確保することに熱心な、現実主義者です。

情報やアドバイスに貪欲で、株式や債券などの伝統的な資産に貯蓄を配分する一方で、暗号資産やその他の仮想資産でリスクを取りたがり、一流のサービスと24時間体制のデジタル・コネクティビティに劣るものには妥協しません。

Z世代がその数を増やし、金融領域での影響力を増していることは、こうした特性や嗜好がやがて市場を支配することを意味します。この層にアピールしたい金融機関は、彼らの価値観を理解し、受け入れる必要があるのです。

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