世界のエネルギー分野の最新動向:プライベート・エクイティがアフリカにエネルギー転換の機会を見出す、等
エネルギーのトップニュース:アフリカでエネルギー転換への投資機会をうかがうプライベートエクイティ Image: Reuters/Mike Hutchings
Roberto Bocca
Head, Centre for Energy and Materials; Member of the Executive Committee, World Economic Forum- 本稿では、世界のエネルギー分野での最新動向をまとめてご紹介します。
- ストーリー:プライベート・エクイティがアフリカにエネルギー転換の機会を見出す、活発化するEUと中東間のエネルギー契約、原油価格が今年最高値を更新。
- エネルギー分野における世界経済フォーラムの取り組みについての詳しい情報は、Centre for Energy and Materials(エネルギー・アンド・マテリアル部門)をご覧ください。
1. プライベート・エクイティがアフリカにエネルギー転換の機会を見出す
エネルギー転換関連の投資先として、プライベートエクイティがアフリカに注目しており、国営電力網とは無関係の小規模プロジェクトを特に有望視していると、ブリティッシュ・インターナショナル・インベストメントのインフラストラクチャー・エクイティ部門でインベストメント・ディレクター)を務めるSaad Ul Islam(サード・ウル・イスラム)氏はPrivate Equity International(プライベート・エクイティ・インターナショナル)誌に語りました。
国際エネルギー機関(IEA)によると、アフリカでは現在も全体の人口の約半数近い6億人以上の人々が電力にアクセスできる状態になく、たとえアクセスできる状態にあっても24時間安定して供給されているわけではありません。
こうした中、アフリカがエネルギー関連サービス・技術を獲得する上での支援者としてプライベートエクイティが存在感を増しつつあるとウル・イスラム氏は述べています。
Camco社のインベストメント・ディレクターであるBen Hughes(ベン・ヒューズ)氏は、「アフリカでのエネルギー転換は分散型が中心になると、我々は見ています」と分析。また、低コストのプロジェクトの方が結果的に「展開も資金調達もかなり容易になるでしょう」と語っています。
国営電力網では停電や不安定な電力供給が問題となっていることから、家庭や企業は従来の電力供給モデルに背を向け、代わりに民間部門のエネルギーソリューションに頼るようになっています。
2. 活発化するEUと中東間のエネルギー契約
ロシア産エネルギーへの依存から脱却するために、EU諸国はより安定したエネルギー源の確保に向けた活動に乗り出しています。
ロシアによるウクライナ侵攻以降、EU諸国が新規に締結したエネルギー契約の相手国の3分の1以上が中東諸国で、最も多いのがアラブ首長国連邦(UAE)であると、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのシンクタンクであるLSE IDEASのアソシエイト、アンドリュー・ハモンド(Andrew Hammond)氏はアラブニュース紙への寄稿文で報告しています。
2022年3月以降に締結された契約は122件。その相手国の内訳は、米国とUAEが最も多く21件、次いでアゼルバイジャン(10件)、ノルウェーとアルジェリア(各9件)、カタール(8件)、セルビアとエジプト(各5件)、サウジアラビア(4件)、そして日本、イスラエル、ナミビア、ジョージア、アンゴラ、リビア(各2件)となっています。
EU諸国の契約国としては、最も件数が多いのはドイツで27件。次いでイタリア(18件)、ハンガリー(14件)と続いています。
しかしハモンド氏は、このデータからはエネルギー契約が順調に進んでいることが見て取れるものの、天然ガスの新規インフラは投資に見合った価値を生み出すまでに時間を要するため、相応の期間、EU圏のエネルギーミックスの一部を構成する必要があり、EU27カ国のエネルギー転換は複雑な様相を呈することになるだろうと指摘しています。
また、「脱炭素化社会へサステナブルに移行していくのであれば、EU諸国は今後10年でクリーンエネルギーのインフラへの投資をさらに推し進めていかなければならないでしょう」とも記しています。
3. 世界のエネルギー関連ニュースまとめ
原油価格が今年の最高値を更新したとCNBCは報じました。その要因は、主にロシアとサウジアラビアによる原油供給削減です。この両国は合計で日量130万バレルの自主減産を続けています。今後、市場では第4四半期に供給不足に陥り、1バレル=100ドル以上になると一部のアナリストは予想しています。
ウラン価格が12年ぶりに高値を記録しました。世界各国が原子力発電プロジェクトに関心を寄せていることでウランへの需要が高まったことがその背景にあります。それに加えて、地政学的な要因もあります。フィナンシャル・タイムズ[A7] 紙は、ロシアがウランの転換・濃縮において重要な役割を担っていること、そしてそのロシアのウクライナ侵攻によって原子力発電のサプライチェーンが混乱状態に陥っていることが、将来的にウランのさらなる価格高騰を招くかもしれないと報じています。
バイオガスを電力、クリーン水素、水に変換する新しい発電施設が米国カリフォルニア州南部で誕生しました。「Tri-Gen(トライジェン)」と名付けられたこの施設は、燃料電池発電事業を手がける米国のFuelCell Energy(フューエルセル・エナジー )社とトヨタ自動車の北米事業体が運営するもの。農業廃棄物や汚泥から生まれるバイオガスからクリーンエネルギーを生成する世界初の施設となります。米国では二酸化炭素を排出しない方法で生成された水素を利用することが強く推奨されています。
太陽光パネルに積もった雪が滑って落ちやすくなる新しいコーティングを米国の技術者が開発しました。これにより、積雪が多い地域でも太陽光パネルによる発電が可能になります。自然に滑雪しやすくなるこの新開発のストリップコーティングは、新しい太陽光パネルだけでなく、古いタイプの太陽光パネルにも取り付け可能。パネルの効率性を低下させることも太陽光の吸収を妨げることもありません。早ければ今年中に販売される見込みであると英国のインデペンデント紙は報じています。
国連の持続可能な開発目標を達成する上で重要な役割を担う「技術革新」は、世界経済フォーラムが開催する持続可能な開発インパクト会合でも大きく取り上げられたトピックです。こちらのサイトで、本会合のアーカイブが閲覧可能です。
英国のリシ・スナク(Rishi Sunak)首相は、国内のガソリン車とディーゼル車の新車販売の禁止を先送りするなど、同国のネットゼロ政策を部分的に180度転換させる方向性を打ち出しました。しかし、2050年までのネットゼロ政策の目標自体は維持するとスナク首相は語っています。
エネルギー効率化が脱炭素化に向けた最も低コストで最短の近道であると、シュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)社のエネルギー・マネジメント・エグゼクティブ・バイス・プレジデントであるOlivier Blum(オリビエ・ブラム)氏は指摘しました。IEAが先ごろ開催した第8回エネルギー効率に関する国際会議の成果についてブラム氏は、エネルギー転換を公正に進めていく上ではエネルギー効率化が重要であり、コストの低減と供給の安全保障の強化にもつながると強調しています。
EUでは2023年第1四半期に温室効果ガスの排出量が前年比で約3%減少しました。EU諸国の中で排出量削減が最も進展している国はどこでしょうか。
なぜ2023年はエネルギー転換において一つの重要な転換期となるのでしょうか。持続可能な投資をメインとする投資会社が公表した最新のレポートにその理由が説明されています。
エネルギー・アンド・マテリアル・センターの取り組みについての詳しい情報は、Ella Yutong Linまでメールでお問い合わせください。メールアドレス:ellayutong.lin@weforum.org