課題解決を超え、可能性を再構築する新興テクノロジー
イノベーターや起業家たちは、日々、私たちを取り巻く世界を変えつつある新しいテクノロジーを開発・適用しています。 Image: ThisisEngineering RAEng on Unsplash
- 6月27日(火)から29日(木)まで、世界経済フォーラムの「第14回ニューチャンピオン年次総会」が中国の天津で開催されています。
- AIと、世界経済へのその影響は、世界中のニュースの見出しを独占しています。
- より多くの人々が恩恵を受けられるようにするためには、官民が一体となり、進歩する技術の流通規模を拡大し続ける必要があります。
中国の天津にて、世界経済フォーラムが開催した、2018年のニューチャンピオン年次総会、通称「サマーダボス」で、専門家たちは、AI(人工知能)が世界を変革する技術になると予測していました。今日、私たちは、身近でAIが経済や社会に影響を及ぼしているのを目の当たりにしています。「OpenAI」や「LangBoat」の台頭により、インターネットアクセスさえあれば、誰でもAIの力を借りることができるようになりました。
AIと、雇用、経済、国際関係へのその影響は、世界中のニュースの見出しを独占しています。6月26日に世界経済フォーラムが発表した報告書「2023年の新興テクノロジー・トップ10」においても、生成AIが注目されています。しかし、目立つ見出しの向こうにあるのは、テクノロジーの設計、開発、実装、スケーリングという日々の積み重ねで、こうした過程が数多くの課題を解決し、大きなインパクトをもたらす可能性を生み出しているのです。
再び天津で開催される、今年のニューチャンピオン年次総会では、イノベーションの道筋に沿った、漸進的で、時に静か、時に技術的な進歩を、そして、なくてはならなかった失敗を、祝います。食料安全保障環境を改善させるために設計された植物センサーから、航空業界の脱炭素化を支援する持続可能な航空燃料まで、テクノロジーは、巨大な課題に取り組むだけでなく、ゆっくりと進歩を解き放つ、大きなアイデアの力を示しています。
2050年までに世界の食料生産を70%増やし、増え続ける世界の人口を養うためのテクノロジーの可能性について考えてみましょう。
世界各地で、食料安全保障を推進するための前向きな取り組みが行われています。例えば、インドのテランガナ州は、第4次産業革命インドセンターと協力し、テクノロジーを活用し、2025年までに10万人以上の農家にアグリテックサービスを提供することを目指しています。パイロットフェーズにあるこのプロジェクトを通じて、現在7,000以上の唐辛子農家が、AIに基づくアドバイス、土壌検査、生産物の品質検査、電子商取引サービスを利用しています。
将来的には、小型で非侵襲的なデバイスである「ウェアラブル植物センサー」を個々の植物に装着し、温度、湿度、水分、栄養レベルを継続的にモニタリングすることで、大規模な食料生産をさらに洗練・拡大させることができるかもしれません。この技術は、データを利用して収穫量を最適化すると同時に、廃棄物を減らし、農業の環境への影響を最小限に抑えます。しかし、コストを下げることと、データ分析の改善が、課題として残されています。
コストを削減しながら、進歩する技術の流通規模を拡大し、より多くの人々がその恩恵を受けられるようにするためには、官民が連携した取り組みを続ける必要があります。太陽エネルギーや風力エネルギー産業における進歩は、こうしたプロセスの力を示しています。例えば、中国では、太陽光発電と風力発電技術の急速な拡大がコストを下げ、世界的な再生可能エネルギーの利用を後押ししました。
バイオマスなどの生物学的(バイオマスなど)および非生物学的(CO2など)資源から生産される持続可能な航空燃料は、太陽エネルギーや風力エネルギーと同様に可能性を秘めています。これらの燃料の生産量は、2021年から2022年の間に3倍に増えるほど、急速に増加しています。また、近年、企業は、世界経済フォーラムのクリーン・スカイズ・フォー・トゥモロー・コアリション(Clean Skies for Tomorrow Coalition)や、ファースト・ムーバーズ・コアリション(First Movers Coalition)などのイニシアチブを通じて、こうしたソリューションを市場に導入し、規模を拡大するために力を合わせてきました。しかし、2050年までにネットゼロを実現するという航空業界の目標を達成するためには、2040年までに、こうした燃料を使用する航空機を全体の15%まで増やす必要があります。
テクノロジーの進化にかかる時間が短くなりつつあるため、気候危機のような地球規模の課題に対処する技術を活用することの恩恵を、私たちが生きている間に経験できる可能性が高まっているという、明るい兆しもあります。
課題は、変化のスピードが加速化しているために、複雑な規制や倫理上の課題が生じること。テクノロジーの責任ある包摂的な利用を確保するために、こうした課題にも対処していかなければなりません。企業は、自社が開発するテクノロジーに対する責任あるアプローチ(共有の安全プロトコルを含む)を追求する上で、中心的な役割を果たす必要があります。並行して、政策立案者は、新しい技術の開発および適用の急速な変化のペースに適応できる、アジャイルな規制の枠組みを構築することが不可欠です。
生成AIがもたらす変革的なメリットについてだけでなく、雇用の置き換えから悪意ある搾取まで、その潜在的な危険性についても、ニュースの見出しに取り上げられています。これらの課題に対処するため、新たに発足したAIガバナンス・アライアンスには、透明性と包摂性のあるAIシステムの責任あるグローバルな設計と展開を推進するという目的のもと、産業界のリーダー、政府、アカデミア、市民社会の組織が結集しています。
日々、イノベーターや起業家たちは、ほんの数年前まではSFの世界のように思えた方法で、私たちを取り巻く世界を変えつつある新しいテクノロジーを開発・適用しています。政策立案者、ビジネスリーダー、技術者は、リスクを最小限に抑え、経済成長、生活の質向上、地球の保護につながるこれら新しい技術の可能性を開花させるために団結しなければなりません。
本寄稿文は、Forbes英語版に掲載された記事を和訳したものです。
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