3つの展望 - チャレンジングな状況下で世界経済を成長させるには
「長期的には、世界が低成長の状況から脱却する唯一の方法は協力です。」 Image: Karsten Würth on Unsplash
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- 低成長の環境は、依然として世界経済に障害をもたらしています。
- IMFは、深刻な分断がもたらす長期的なコストを、世界の生産高のほぼ7%に上ると分析しています。
- 2023年6月27(火)〜29日(木)に、中国の天津で開催される世界経済フォーラムの「第14回ニューチャンピオン年次総会」では、協力と経済成長が大きな議論の焦点となります。
世界経済の成長が低迷し続ける中、国際通貨基金(IMF)は、2023年の世界の経済成長率を2.8%、2024年を3.0%と見込む最新の見通しを発表しました。これは、過去10年の平均成長率を大幅に下回る数字です。頑強なインフレ、グローバルな債務危機、地経学的競争、地政学的対立、金融部門の脆弱性など、現在進行中の懸念事項が引き金となっています。
厳しい見通しではあるものの、だからこそ成長への歩みを再開させ、新たな競争力とレジリエンス(強靭性)への確固たる軌道に世界経済を乗せることが、今、最も重要なことです。本稿では、世界経済を短期的、中期的、長期的に活性化するための3つの成長の展望について取り上げたいと思います。
再開されたアジア経済
新型コロナウイルスのパンデミックの打撃を最も受けた地域のひとつであるアジアは、長引く経済活動の停滞から脱しつつあり、世界の成長エンジンとしての役割を再び果たそうとしています。今年初めの中国経済の開放は、地域および世界経済の活性化の大きな後押しとなりました。重要なアジア経済全体の再開は、短期的には成長に拍車をかける即効性のある成長市場を提供すると同時に、低成長環境を克服するための基盤を確立させることができるでしょう。
現在、アジア太平洋地域は、他の地域と比較して圧倒的に経済成長が見込めるとされています。IMFの最新の予測によると、2023年の世界経済成長率の67.4%をアジア太平洋地域が占め、そのうち34.9%が中国による貢献になるとされています。2023年の同地域の年間成長率は4.6%と予測されており、昨年の3.8%から大幅な伸びを示しています。世界全体の成長予測が先進国経済の特に顕著な減速に阻まれ、鈍化はしないまでも停滞していることを考えると、これは、世界経済の底上げに大きく貢献する力となります。特に大切なのは、この地域の経済活動において重要な役割を担っている製造業の存在であり、製造業の継続的な成長を確保するためには、この移行期が影響を及ぼす投資と消費需要の変化に適応しなければなりません。
新しい世代の起業家精神とイノベーション
世界経済が低迷する中で、起業家精神とイノベーションに内在する新しいアイデア、アプローチ、マインドセットは、より公平で持続可能かつ強靭な成長モデルを生み出すために必要な勢いを生み出すことができます。成功した企業の多くが、逆境や危機の時期に生まれたことを忘れてはなりません。
このように捉えると、現在の厳しい経済状況においても、市場にうまくイノベーション起こすために不可欠な2つの要素、デジタル産業とグリーン産業に継続的な資金が流れていることはとても重要なことです。マクロ経済レベルでは、世界経済に今後10年間で新たに創出される価値の70%は、デジタルを活用したプラットフォーム・ビジネスモデルに基づくと推定されており、AI(人工知能)や量子コンピューティングを含む新興技術の急速な発展と採用は、経済のあらゆる分野に大きな影響を与えるでしょう。世界のベンチャーキャピタルの資金調達は全体的に減速しているにもかかわらず、AIに携わる企業への資金調達は大幅に拡大し、2023年5月の新規資金調達総額の約13%を占めていることが分かりやすい例です。
一方、グリーン商品の貿易額は、2022年に過去最高の1兆9,000億ドルに達し、今後も成長と新規雇用の原動力となるでしょう。グリーン経済を中心とした活動は、まだ多くの課題が残っており、中期的に加速さし続けなければなりません。国際エネルギー機関(IEA)によると、2050年から2070年の間にネット・ゼロを達成するために削減が必要とされる排出量の40%以上は、現在大規模に導入されていない技術や、導入の初期段階にある技術で対処しなければなりません。このことは、企業活動と公共政策の双方が、持続可能性を軸に方向転換し、危機から脱却するための前向きな成長軌道を生み出す大きなチャンスとなります。
経済成長には協力が不可欠
長期的には、世界が低成長の状況から脱却する唯一の方法は協力です。世界の地政学的環境は強い逆風を受け、分断と二極化の傾向が強まっています。しかし、世界は、生産的かつ効果的に協力し合い、貿易、投資、アイデアの交換を可能にし、継続的な成長を実現していく必要があります。
互いに協力し合うことを拒否するのは、コストがあまりに高すぎます。IMFの最近の分析によれば、深刻な分断がもたらす長期的コストは世界の生産高のほぼ7%に上り、貿易の混乱は新型コロナウイルスのパンデミックと同様に、世界の生活水準に深刻な影響を与える可能性があると指摘されています。私たちが、今後も意見の相違を抱え続けることは確かですが、私たちの未来を守るためには、それでも連携し続けることが求められます。
2023年6月27日(火)から29日(木)に、中華人民共和国の天津で開催される第14回ニューチャンピオン年次総会では、これらのトピックが議論の中心として取り上げられる予定です。
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