ESAが進める木星氷衛星探査計画「JUICE」とは

木星が持つ巨大な衛星群の表面下には、大量の水が存在していると科学者たちは考えています。

木星が持つ巨大な衛星群の表面下には、大量の水が存在していると科学者たちは考えています。 Image: Unsplash/Planet Volumes

Stefan Ellerbeck
Senior Writer, Forum Agenda

本稿は2023年3月24日に公開され、2023年4月14日に加筆修正されて更新されました。

  • 木星氷衛星探査計画「JUICE」の探査機が先ごろ打ち上げられ、木星系を目指す8年の長旅が始まりました。
  • 探査機は、太陽系最大の惑星である木星の氷衛星を観測し、生命維持の可能性について探ります。
  • 木星が持つ巨大な衛星のカリスト、エウロパ、ガニメデには、地球の海よりも多い大量の水が存在していると考えられています。

イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイは、1610年に自作の望遠鏡で木星に巨大な衛星があることを発見しました。

そのとき観測された4個の衛星は現在、発見者にちなんで「ガリレオ衛星」と呼ばれています。太陽系最大の惑星である木星では、ガリレオ衛星の発見後も技術の進歩に伴ってさらに70個以上の衛星が見つかっています

そして今、人類は地球という安全な場所にいながら、これまでにないほど近い距離で木星の衛星群を観測しようとしています。木星氷衛星探査計画「JUICE(JUpiter ICy moons Explorer)」の探査機が、4月14日に南米フランス領ギアナにある宇宙基地から打ち上げられたのです。

JUICEの木星への旅

ESA(欧州宇宙機関)が主導する探査計画であるJUICEは、欧州各国やそれ以外のいくつかの国が参加する国際的なプロジェクトです。探査機は地球を飛び立った後、フライバイを何度か行い、地球や金星から重力アシストを受けて宇宙の遥か彼方へ向かい、2031年7月に木星系に到達する予定です。

すべてが計画通りに進めば、そこから4年間木星の軌道を周回し、木星の衛星群をフライバイ観測します。この観測のメインとなるのは、海が存在すると考えられている3個の大型衛星のカリスト、エウロパ、ガニメデです。これらの衛星には生命が存在する可能性も指摘されています。順調に進めば、2034年12月にはガニメデの周回探査を開始します。これにより、初めて外太陽系にある衛星の周回軌道に入る探査機となります。

探査機を安全に飛行させるには、非常に高度なナビゲーション技術が求められます。その大役を担っているのは、スペイン、アルゼンチン、オーストラリアに設置されているESAのエストラック(Estrack)(追跡ステーションネットワーク)の深宇宙アンテナであり、それを遠隔制御しているのは、ドイツのダルムシュタットにある欧州宇宙運用センターです。

これは、ESA史上最大の深宇宙ミッション。太陽系最大の惑星の衛星群の周辺を首尾よく飛行しながら35回ものフライバイ観測を実施するのです」と、JUICEのフライト・オペレーション・ディレクターを務めるアンドレア・アコマッツォ氏は語っています。「JUICEによる木星とその衛星群の探査は、今後10年近くにも及ぶ長丁場。ESAにとって初めての挑戦であり、いろいろ問題が生じても不思議ではありません」。

JUICEの探査機が木星系へ到達するのは、約8年後の予定です。
JUICEの探査機が木星系へ到達するのは、約8年後の予定です。 Image: ESA

木星の衛星群には生命に適した環境があるのか

木星が持つ巨大な衛星群の表面下には水が存在している可能性があり、その量は地球の海をはるかに上回るほどだと科学者たちは考えています。

「惑星ほどの大きさがある木星の衛星群には、地球以外にも生命の存在に適した環境があることを示唆する興味深いデータがあります。高温な星ではなく巨大惑星を周回する衛星で生命が維持されているのかもしれません」と、ESAは語っています。「木星とその巨大な衛星群は、宇宙に点在する巨大ガス惑星系の典型です。そのため、太陽系の中では非常に探求心をくすぐられる存在なのです」。

JUICEの探査機はエアバス社製で、重量が6,200kgあり、木星の衛星群からデータを取得するための最先端の観測機器が10種類搭載されています。その中には、望遠鏡やアイスレーダー、微生物が生育できる環境があるかどうかを検知するセンサーなどが含まれます。探査機は、さらに宇宙の奥へと向かい、太陽系最大の衛星であるガニメデを周回する軌道に入り、9カ月間観測を続けます。

『JANUS』と呼ばれる高精細の可視望遠鏡を使った衛星群の接写も予定されています。フライバイの最接近距離はわずか400kmなので、非常に近くで印象的な画像が撮影できるでしょう。どのようなものが写るのか、想像するだけでワクワクします」と、JUICEのプロジェクトマネージャーを務める、エアバス・ディフェンス・アンド・スペース社のシリル・キャベル氏は、BBCニュースに対して語っています。

JUICEの探査機は、4年以上かけて木星と3個の巨大氷衛星を探査する予定です。
JUICEの探査機は、4年以上かけて木星と3個の巨大氷衛星を探査する予定です。 Image: ESA

宇宙探査をよりサステナブルに

世界経済フォーラムは、世界初となる宇宙ミッションに対するサステナビリティ評価システムを開発していますが、それにはESAも参画しました。「宇宙ミッションに対するサステナビリティ評価(Space Sustainability Rating)」と呼ばれるそのシステムは、スペースデブリ(宇宙ゴミ)を削減するとともに、宇宙探査をよりサステナブルなものにすることを目的としています。

「地球の軌道上には1cm以上の大きさの物体があふれています。その数は100万個以上で、そのうち4,000個は人工衛星です。今後10年でさらに60,000基ほどの人工衛星が打ち上げ予定です。スペースデブリをこれ以上増やさないためには、戦略を策定することが重要なのです」と、世界経済フォーラムは述べています。

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