世界の食料安全保障に及ぼす、気候変動の影響を軽減する方法
食糧生産は、気温の上昇による影響を受けます。 Image: Aniket Gawade/Climate Visuals Countdown
Smriti Kirubanandan
Global Director & Head, Strategic Marketing Healthcare and Lifesciences, Tata Consultancy Services- 急性食料不安に苦しむ人々の数は2019年の1億3,500万人から、2022年6月には、82カ国で3億4,500万人に増加しました。
- 気温の上昇は、異常気象、自然災害、経済的・社会的混乱をもたらし、食料供給にまで悪影響を及ぼしています。
- 食料供給システムを守るためには、個人およびコミュニティレベルで気候変動に対する行動を取る必要があります。
気候変動は、食料不安に直接的かつ重大な影響を及ぼしています。地球の気温が上昇するにつれ、気象パターンの変化、異常気象、その他の環境破壊が起こり、食料生産はより困難で不確実なものとなっているのです。
食料生産は、気温の上昇、干ばつの頻度の増加、土壌肥沃度の低下、洪水や嵐による作物の破壊などに左右されるため、こうした課題は世界中の食料供給に広範な影響を及ぼします。
気候変動が食料安全保障に及ぼす影響は、特に開発途上国において顕著であり、人々の健康状態だけでなく、小規模農家の生計にも現れます。干ばつや洪水など気候条件の変化により食料の供給力が低下すると、栄養価の高い食料の入手が困難になる脆弱な立場に置かれた人々は栄養失調に陥るリスクに見舞われます。
さらに、食料不安は、これらの地域の小規模農家に大きな経済的影響を与えます。生活する上での基本的な必要を満たすための十分な収入を得ることができず、肥料や種子などへの支払いも困難になるためです。
世界的に深刻化する食料不安
世界銀行によると、ロシアのウクライナ侵攻、サプライチェーンの混乱、新型コロナウイルスのパンデミックによる継続的な経済的影響などにより、食料価格が史上最高値に達し、急性食料不安に苦しむ人々の数は2019年の1億3,500万人から、2022年6月には、82カ国で3億4,500万人に増加しました。
気候変動が食料安全保障に及ぼす影響を軽減するには、政府と組織が、異常気象や気候変動に耐えうる食料生産とアクセスの戦略を練り、積極的な取り組みを進める必要があります。
農業インフラへの投資、作物や食料源の多様化、長期保存を目的とした食料貯蔵システムの構築、地域の農家に対する持続可能な農業技術に関するトレーニングなど、こうした取り組みは多岐にわたりますが、気候変動が食料不安に与える影響に対処するために最も重要なことは、今すぐに行動を起こすこと。そうすれば、食料の入手が気候変動によって脅かされることのない未来を作り上げることができるでしょう。
食料不安を防ぐ10の方法
1. 異常気象に耐えうる食品保存システムへの投資
2. 食料源や農業生産技術を多様化することで、リスクの軽減を図ること
3. 洪水や干ばつによる作物の被害を軽減する、水管理システムの導入
4. 不耕起栽培、アグロフォレストリー、被覆作物などの持続可能な農法の実施
5. 零細農家を経済的にエンパワーするための、信用やその他サービスの利用支援
6. 気候変動による食料安全保障の課題に対する国民の認識を高めること
7. 土壌の有機炭素を増やし、土壌の保水力を高め、干ばつに対する回復力の高めること
8. 冷蔵、脱水などの食品保存技術に関する教育の推進
9. データ解析と洞察、予測AIを取り入れた技術を活用した異常気象の早期警告システムを開発し、食料生産が適応できるようにすること
10. 気候変動に強い食用作物の研究開発への投資
食料システムを守るための気候変動対策
こうした対策をとることで、将来、気候変動によって食料安全保障が損なわれることがないようにすることができます。そのためには、気候変動による食料不安がさらに大きな問題になる前に、政府や組織が行動を起こすことが不可欠です。
個人レベルでは、消費者としての自覚を持ち、個人の買い物が直接・間接的に社会に与える影響をより深く理解することが重要でしょう。私たちの努力の積み重ねが、社会と地球をより良くしていくのです。
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