サーキュラー・エコノミー

若者が世界各地で推進する、サーキュラーエコノミーへの移行

持続可能な経済を構築するためには、サーキュラーエコノミーへの移行が不可欠です。

持続可能な経済を構築するためには、サーキュラーエコノミーへの移行が不可欠です。 Image: Unsplash /UX Indonesia

Bontu Yousuf
Specialist, National Plastic Action Partnership, World Economic Forum
Sophia Simmons
Lead, Strategic Impact Initiatives, World Economic Forum
Olya Van Houten
Associate, McKinsey & Company, Lead, Global Shapers Climate Action Steering Committee
Salma Melissa Mohammadiyan
Social Entrepreneur & Global Impact Officer, Global Shapers Hub Morelia
  • サーキュラーエコノミーへの転換は、環境を保護し、より持続可能な生活様式を世界中で実現するために極めて重要です。
  • Scale360º」イニシアチブは、官民のステークホルダーの行動を動員し、サーキュラーイノベーションを支援する環境を整備することを目指しています。
  • グローバル・シェイパーズ・コミュニティから選抜されたサーキュラー・シェイパーズは、この転換をリードし、地域社会での変化を促進しています。

環境保護や希少な原材料への依存を減らし、より持続可能な生活様式を構築するためには、サーキュラーエコノミーへの転換が不可欠であり、そのために必要なのは、言うまでもなく私たちが今すぐに行動を起こすことです。

ボトムアップのイノベーションと起業家精神を支援することによって、サーキュラーエコノミーへの移行を加速させることを目的に立ち上げられた「Scale360°」イニシアチブは、アラブ首長国連邦のサーキュラーエコノミー・カウンシルと世界経済フォーラムが共同で支援する、先駆的且つグローバルな官民パートナーシップです。

地域や国レベルのイノベーションを可能にすることは、コミュニティが独自の課題に取り組み、資源利用や管理に関連する機会を自ら特定できるようにエンパワーする上で非常に重要です。

地域レベルでサーキュラーイノベーションに取り組むことは、コミュニティの経済、環境、社会に利益をもたらします。そして、気候変動との闘いにおいて、こうした取り組みは若者の活動家やイノベーターに支持されるものであるべきです。なぜなら、気候変動の影響を不均衡に被るのは若者たちであるからです。

そして、サーキュラーエコノミーの移行を可能にするために必要な政策を策定し、行動を促進するためには、次世代を育成することが不可欠です。

Scale360ºのプログラムの使命は、イノベーター、政府、民間のステークホルダーの行動を動員し、サーキュラーイノベーションを支援する環境を整備することです。これまでに、世界21都市が地域社会で実施するサーキュラーエコノミーのプロジェクトを支援してきました。

このプログラムでは、サーキュラーエコノミーを形成する個人に対し、リソースと専門知識を提供し、ソリューションの拡大やシステム変革の推進をサポートしています。

これまでに、アルゼンチン、チリ、シンガポール、アラブ首長国連邦、サーキュラー・シェイパー・シーティー・ハブなどが、パートナーとして参加しています。

2023年4月時点の、Scale360ºによるインパクト。地域および国レベルハブの設立を支援することで、Scale360°は世界中のコミュニティにリーチしています。
2023年4月時点の、Scale360ºによるインパクト。地域および国レベルハブの設立を支援することで、Scale360°は世界中のコミュニティにリーチしています。 Image: Scale360º

サーキュラー・シェイパーズ

サーキュラー・シェイパーズは、世界500都市に拠点を置く、献身的で活力に満ちた若いボランティアのネットワークであるグローバル・シェイパーズ・コミュニティから選ばれた人材です。

グローバル・シェイパーズは、地域の知識とネットワークを持っているため、Scale360ºのプレイブックを活用し、都市をサーキュラー・イノベーションの中心地へと変貌させるのに最も適した人たちです。

この3年間で、選ばれた都市は、Scale360°によりすでに検証された方法論であるサーキュラー・イノベーション・プレイブックを適用し、都市におけるサーキュラーエコノミーへの移行を加速させました。

これらの都市は、地域経済を強化することを目的に、サーキュラーデザインの原則を適用し、再利用を改善、廃棄物をなくす方法を模索しています。

サーキュラー・シェイパーズは、活動を加速し、地域へのインパクトを拡大するために、世界経済フォーラムの専門家や市民社会、政府、産業界、エレン・マッカーサー財団を含むグローバル組織のリーダーたちとのネットワークを活用しています。

ここでは、デザイン思考、コラボレーション、包括性に基づいたローカルな行動を通じて、若いイノベーターたちが世界中でサーキュラーエコノミーの移行を推進した6つの事例を紹介します。

フィリピン・セブ島

グローバル・シェイパーズ・セブ・ハブは、ブリティッシュ・カウンシルのサーキュラー・フューチャーズ・ラボエレン・マッカーサー財団の協力のもと、Scale360ºフィリピン及びサーキュロを設立し、インパクトの大きいセクターを対象とした地域レベルの介入を行うことで同国のサーキュラーエコノミーへの移行をサポートしています。

マルチステークホルダー且つ国家的なアプローチを通じて、プログラムは、サーキュラーエコノミーの観点から取り組むべきフィリピンに最も関連性の高い4つの素材バリューチェーン(プラスチック、ファッション、食品、Eウェイスト)を特定しました。

ハブは、それぞれのバリューチェーンに合った介入を実施し、Scale360°プラスチックディレクトリに、プラスチックのドロップオフポイント、衛生的な埋立地、リサイクルプラントを官民合わせて110以上掲載したほか、生ごみを肥沃なコンポストに変えて多くの地元農家に供給するアーバンガーデンを実現。電子廃棄物のドロップオフポイントの包括的なディレクトリを通じて、100近い消費者や小売業者、地方自治体や環境事務所を結びつけて、安全な廃棄の仕組みを構築しました。

スイス・ローザンヌ

ローザンヌ・ハブは、スイスのトップ大学の若者たちにサーキュラーエコノミーを紹介し、彼らが将来のサーキュラーエコノミーのリーダーになることに焦点を当てた介入を生み出しました。ローザンヌ・ハブは現在、この目的を達成するためにスイスでサーキュラーエコノミーの導入を推進するイニシアチブであるサーキュラー・エコノミー・トランジション(CET)が主催しています。

ローザンヌ・ハブは、昨年9月30日にCETのイベント「ExperienCE」に参加し、地元の関係者をつなげ、サーキュラーエコノミーの重要性に関する認識を高め、地元のサーキュラーイノベーション・エコシステムを拡大しました。

地元の学生もこのイベントに参加しました。彼らは、ローザンヌ・ハブとさらに関わり、新たに2つの地元でのパートナーシップが生まれる可能性があります。

米国・フロリダ州ジャクソンビル

ジャクソンビル・ハブは、ローカルコミュニティにおけるサーキュラーエコノミーに対する認識が低さを改善するため、グリーン商工会議所、14の地元団体、ローカルコミュニティと連携し、サーキュラーネットワークの構築に注力しました。

コミュニティの環境団体と連携したソートリーダーシップや知識構築を通じて、今後、ジャクソンビル・ハブは介入を拡大し、新興企業や中小企業との関わりを深めることを目指しています。

ブラジル・サンパウロ

サンパウロのハブは、不況の地域でサーキュラーエコノミーの原則をどのように発展させることができるかを理解した上で、人を中心に据えたアプローチをとりました。

彼らは、消費習慣に再生アプローチをとっているコミュニティ内に、すでに循環型の介入が存在することを発見しました。この学びをもとに、シェイパーズは、コミュニティが持つ既存のサーキュラーフードシステムを強化する策を考案しました。

また、外部の主要な関係者を招き、コミュニティから学ぶことで、脆弱なコミュニティにありがちなネガティブな固定観念を払拭し、コミュニティのインフラとリソースの拡大に繋げました。

メキシコ・モレリア

廃棄物管理とリサイクルが十分に行われていない状況に対処するため、グローバル・シェイパーズ・モレリア・ハブは、様々なセクターを対象としたワークショップ、会議、トレーニングを実施しました。

モレリア・ハブは、リーダーシップのコミットメントを通じて、これまでに10,000人以上、同ハブのセンター・オブ・エクセレンスを通じて92人の高等教育機関の学生を支援しています。また、地域のニーズに合わせてサーキュラーエコノミーを取り入れるための自治体法の改正方法について重要な提言がなされた政策ワーキンググループを通じて、主要なステークホルダーに行動の活性化を働きかけました。

この法律が承認されれば、500万人の住民に影響を与えると期待されています。

メキシコ・プエブラ

グローバル・シェイパーズ・プエブラ・ハブは、サーキュラーエコノミーへの移行のための介入の一環として、サーキュラー・ブートキャンプを計画・実施し、サーキュラーエコノミーを加速させるための効果的な法案について政策立案者を指導する政策ワーキンググループを立ち上げました。

ブートキャンプでは、大学教授やメキシコのクリーンテクノロジー活用を支援する団体など、地元の組織も加わりました。

このプロジェクトは、プエブラのさまざまなセクターから約1,000人を集め、地域の最も重要な商工会議所と2つの合意署名を行い、プエブラ州議会で20以上の非政府組織や、政府、大学、企業と共に2つのプレゼンテーションを行いました。

サーキュラーエコノミーへの移行を支援する

こうした介入は、サーキュラーエコノミーへの移行を支援するために、若者の行動を中心に、あらゆるレベルで大きな進展があることを示しています。

そして、グローバル・シェイパーズは、地域のノウハウ、必要なネットワーク、そして公正な移行への情熱があれば、若者が変化の原動力となりうることを明らかにしたのです。

まだやるべきことは多く残されていますが、サーキュラーエコノミーの実現と持続的なインパクトの創出のために、それぞれの国で必要とされるシステムの変化をサポートするために、今後もグローバル・シェイパーズの取り組みは加速していくでしょう。

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