2023年に、再生可能エネルギーによる発電は転換期を迎えるか
発電のための化石燃料燃焼による二酸化炭素排出量は、総排出量の40%以上を占めています。 Image: Pexels/Ricky Ewquivel
- エネルギーのシンクタンク、エンバーが発表した、第4回グローバル・エレクトリック・レビュー(Global Electricity Review)によると、発電は「化石時代の終わりの始まり」をまもなく迎える可能性があります。
- 2023年は、再生可能エネルギーが転換点を迎え、発電所の排出量が減少し始める年になるかもしれません。
- エンバーによる調査結果は、再生可能エネルギーがどのように化石燃料に取って代わるのか、また、世界のどの地域が脱炭素化をリードしているのかを示しています。
エネルギーのシンクタンク、エンバーが発表した、第4回グローバル・エレクトリック・レビュー(Global Electricity Review)によると、発電は「化石時代の終わりの始まり」をまもなく迎える可能性があります。
再生可能エネルギーによる発電が転換点を迎え、発電所の排出量が減少に転じる年と、今年はなるのでしょうか。このレビューが、電力セクターの脱炭素化の大きな可能性を示しているのは、発電のための化石燃料燃焼による二酸化炭素排出量は、総排出量の40%以上を占めているためです。
同レビューでは、化石燃料に代わる自然エネルギーによる発電がいつ、どのように行われるのか、また、どの地域が脱炭素化をリードしているのかを以下の図の通り示しています。
風力発電と太陽光発電:再生可能エネルギーへの移行
上のグラフは、過去の年間発電量と2023年以降2026年までの予測を示したもので、近年、風力や太陽光発電への投資が大きく進んでいることがわかります。2023年は、太陽光と風力発電の継続的な増加により、排出量がようやく減少に転じる年であると予測されています。
太陽光と風力発電は、10年平均で年間約15~20%増加しており、2023年末には年間電力需要の増加を上回る見通しです。これは、多くの国で、化石燃料よりも安価且つ戦略的に安定した確保ができるようになってきているためです。
他の非化石燃料も発電量を増やしていますが、水力と原子力発電の増加は異常気象の影響
を受け、あまり安定していません。
2040年までに、発電の脱炭素化を実現させる必要性
国際エネルギー機関(IEA)のネット・ゼロ・エミッション(NZE)シナリオでは、多くの部門がネット・ゼロ・エミッションの期限として2050年を目標としています。しかし、世界の電力部門は最大の排出者であり、再生可能エネルギーによる発電が他の部門のネットゼロの加速を促すためには、電力部門は2040年までに脱炭素化する必要があるとしています。
このグラフは、IEAのネット・ゼロ・シナリオによる発電の変化の規模を表しています。石炭火力とガス火力は今後数年で廃止され、主に太陽光と風力発電に置き換わります。その理由は、比較的コストが低く、すぐに導入できる可能性があるためです。これにより、世界最大の二酸化炭素排出者であった電力部門は、17年後には排出量をゼロにすることができます。
上のグラフは、今後、石油、石炭、ガスから発電される電力が減少し、クリーン電力が全体の構成に占める割合がますます高くなっていくことを示しています。IEAのシナリオでは、現在から2050年までのクリーン電力の増加分の75%を風力と太陽光発電が占めるとされています。しかし、原子力発電、水力発電、二酸化炭素の回収・利用・貯蔵(CCUS)を行う化石燃料、その他の自然エネルギーも、重要な役割を果たすことになるでしょう。
自然エネルギーをリードする地域は?
全ての国で脱炭素化への歩みが進められていますが、実現までに要する時間は地域により異なります。脱炭素化に最初に着手したヨーロッパが、長年にわたって他の国々をリードしてきましたが、オセアニアは、オーストラリアでの取り組みが加速したことで、太陽光や風力発電のシェアがヨーロッパを追い越しました。一方、一足遅れて脱炭素化の取り組みを始めたアジアは、今、その勢いを急速に高めています。
風力と太陽光発電の絶対量世界トップ5のうち、3つが中国、日本、インドと、アジア地域が勢いをあげています。しかし、アジアの他の国々は、自然エネルギーへの移行を始めたばかりであり、アジア全体としての自然エネルギーへの移行の足を引っ張っています。
中国は、2021年から始められた3ヵ年政策で、屋根に設置するソーラーパネルの数を増加させました。この政策は「全国屋上ソーラー」と呼ばれ、2022年には、中国が世界の太陽光パネル設置量の約5分の1を占めるようになりました。
政策主導のこうした中国による投資の成功は、世界経済フォーラムのクリーン電化に関するグローバル・フューチャー・カウンルの目標に合致するものです。最新のインサイトレポートでは、政策立案者、規制当局、投資家に対し、電力システムの需要側により焦点を当てるよう呼びかけています。
エンバーによる調査結果は、これまでの再生可能エネルギーに対する初期の政策と投資が世界的に成功していることを示しています。グローバル・エレクトリック・レビューの主執筆者であるマウルゴルザタ・ヴィアトロス・モティカ氏は、「毎年、再生可能エネルギーへの投資が増え、発電ミックスに占める割合が増加すれば、排出量は減少し始めるだろう」と述べています。
「クリーンな電力は、運輸から産業、そしてそれを超える範囲で、世界経済を再構築することになるでしょう。化石燃料の排出量が減少する新時代というのは、石炭火力発電の廃止を意味し、ガス火力発電の成長の終焉は目前に迫っています。その変化は、すぐそこまで来ているのです。しかし、すべては、2040年までに世界をクリーンな電力への道へと導くために、政府、企業、市民が今どのような行動を取るかにかかっています」
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Azeem Azhar and Nathan Warren
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