気候変動への適応に貢献する3つの技術
山火事の消火活動でドローンが活躍するなど、さまざまな技術が気候変動の影響への適応に貢献しています。 Image: REUTERS/Chris Wattie
- 気候変動への適応が喫緊の課題となる中、その推進のカギを握る存在として新しいテクノロジーが注目を集めています。
- 例えば、山火事を検知して周辺地域に早期に警告するシステムには、AIが利用されています。
- 洪水に関する詳細な警報情報を提供するグーグルのサービスには、人工衛星と機械学習が使われています。
人類は、気候変動の影響を受け入れて生きる術を身に付けていかなければならず、そのような未来はもう避けられそうにはありません。
先日開催された、COP27では有意義な合意がなされましたが、現在までの地球温暖化の進行度合いを踏まえると、私たちは少なくともある程度の影響からは逃れられない状況に置かれています。
米航空宇宙局(NASA)が提供する「NASAアースオブザーバトリー (NASA Earth Observatory)」には、次のように書かれています。「地球の平均気温は1880年から少なくとも1.1℃上昇している。温暖化が著しく進行したのは1975年以降で、10年当たりの気温上昇のペースは0.15~0.20℃ほどである」。
気候変動に対する取り組みとしては、温暖化の防止を図る緩和策が進められていますが、今と将来の影響に対処していく適応策も、今後ますます不可欠となるでしょう。適応策を進める上で、鍵となる3つのテクノロジーを紹介します。
1:グーグル・フラッド・ハブ(Google Flood Hub)
グーグルが提供する「グーグル・フラッド・ハブ」は、機械学習技術を利用した警報システムで、海、河川、湖で命や財産を脅かすおそれのある洪水が発生した際に、警報を伝えるサービスです。わかりやすい洪水マップも提供しており、危険性が高いエリアや成人の身長と比較した浸水深の情報も確認することができます。
グーグルは、2018年から洪水警報情報を提供しています。当初の目的は、バングラデシュとインドの危険エリアに情報を提供することでしたが、2021年には、3億6,000万人が暮らすエリアに1億1,500万件の警報情報を発信しました。現在、システムは拡張されつつあり、南アジアのその他の国や、南アメリカの国々まで、より広範囲をカバーしています。将来的には全世界を網羅する壮大なシステムを目指しています。
2:AIを活用した気候変動への適応
AI(人工知能)は、気候変動への適応において重要な役割を果たすと、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)は述べています。BCGが提唱する「AIを活用した気候変動との闘いのための枠組み(Framework for Using AI to Combat Climate Change)」では、AIによる気候変動への適応が可能な領域が示されています。
「AIを利用すれば、海面水位上昇など、地域ごとの長期的な危険予測の精度を向上させることができます。その仕組みは、ハリケーンなどの突発的な気象災害にも適用できるかもしれません。さらに、脆弱性や被災のリスクの管理にも有効です。例えば、インフラ整備に活用すれば、気候変動に起因する危険の影響を最小限に食い止めることができるでしょう」とBCGは述べています。
サンフランシスコに拠点を置くパノAIは、山火事の検知、近隣住民への警報、消火活動にあたる消防隊の支援にAIを活用しています。山頂に設置されたカメラの映像をAIで精査し、山火事発生の最初の兆候をとらえたら、AIを通じて地域の住民と第一対応者に警報を伝達します。
3:水管理におけるIoT
気候変動の影響で、気温の上昇や降雨パターンの変化が著しくなってきました。今後は、水をスマートに利用することが極めて重要になるでしょう。ブラジル、イタリア、スペインでは、農業用水供給の管理と最大効率化のためにIoTが活用され始めています。
国連アジア太平洋経済社会委員会に提出された報告書で、「ブラジル、イタリア、スペインで実施された、スマート水管理プラットフォーム(SWAMP)のプロジェクトが示すように、IoTは、水消費量とエネルギーコストの削減に効果的であることが証明されており、18~38%の節水効果を見込むことができる」と、著者のクリスティナ・ベルナル・アパリシオ氏とシオペ・バカタキ・オファ氏は報告しています。
最も必要とされる場所にテクノロジーの導入を
さまざまなテクノロジーが、気候変動の緩和や適応に貢献できる可能性を秘めていますが、現状では、それが十分に活用されているとはいえません。国連は、気候変動対策に効果的なテクノロジーの開発・活用・移転を通じて、開発途上国を支援する取り組みを強化・加速させるよう勧告しています。気候変動への適応に貢献する技術革新の多くは、グローバルノース(北半球の先進国)で開発・活用されています。しかし、気候変動の影響を身近に迫る危機と感じている人々の大部分は、グローバルサウス(南半球の開発途上国)に暮らしているのです。
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