2050年までに、航空業界がネットゼロを達成するためには
世界の航空業界は、2050年に二酸化炭素排出を実質ゼロにする目標で合意しました。 Image: Unsplash/evadarron
- 世界の航空業界は、2050年に二酸化炭素排出を実質ゼロにする目標で合意しました。
- 航空会社の国際業界団体である国際航空運送協会(IATA)は、持続可能な航空燃料の使用と、カーボン・オフセット(温室効果ガス排出の相殺)によって、排出量を80%以上削減できるとしています。
- エアバスなど大手航空会社は、電気や水素を燃料とする航空機に代表される低排出ガス技術の開発を進めています。
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しかし、航空輸送は世界の二酸化炭素排出量の約2.5%を占めており、ほとんどの航空機がジェット燃料を動力源としています。抜本的な削減策が講じられなかった場合、航空業界の需要によっては、21世紀半ばまでに、温室効果ガス排出量が2005年比で300%以上増加する可能性があると欧州委員会は予測しています。
航空業界では、2050年までに二酸化炭素の排出量をネットゼロにする目標を掲げています。10月には、国連の国際民間航空機関(ICAO)が中心となり、184カ国が参加する二週間の交渉が行われ、二酸化炭素排出量の削減策について合意しました。これには革新的な航空機技術の採用、「合理的」な航空運営、持続可能な航空燃料(SAF)の利用・増産などが含まれます。
ICAO理事会のサルバトーレ・シャキターノ議長は、「業界団体のコミットメントに続く形で、各国が航空輸送の脱炭素化に向けたこの新しい長期目標を採択したことは、排出ガスのない動力飛行を実現するために、今後数十年にわたって加速しなければならないグリーンイノベーションとモメンタムに大きく貢献するでしょう」と述べています。
世界経済フォーラムで航空業界の脱炭素化を主導するライア・バーバラは、「コミットメントを実行に移す段階では、脱炭素化目標を掲げる政府の支援が業界にとって不可欠です。今世紀半ばまでにネットゼロを目指すICAOの長期目標(LTAG)は、この方向に大きく前進する一歩となるでしょう。世界経済フォーラムは、今後の取り組みについてICAO、各国政府、企業をグローバルに支援していきます」と話します。
航空燃料の持続可能性を高める
国際航空運送協会(IATA)は、持続可能な航空燃料によって二酸化炭素排出量を80%削減することができるとしています。SAFは、農業廃棄物から空気中から取り出した炭素まで、さまざまな原料から製造できます。
SAFは既存の航空機や給油インフラでも使用可能ですが、高い製造コストや供給量不足により普及が遅れています。現在、SAFの利用は、全ジェット燃料の0.1%に満たないとみられています。
IATAは、航空業界が2050年までにネットゼロを達成するために必要とされる排出量削減分の約65%が、SAFによるものになると試算しています。しかし、そのためには、大幅な増産により需要を満たす必要があるとしています。さらに、「増産が最も進むのは、政策的支援が世界で一般的になり、化石燃料であるケロシンに対してSAFが十分な競争力を獲得し、有望とされるオフセット源が少なくなる2030年代である」と述べています。
航空輸送による二酸化炭素排出量をオフセットする
IATAによると、航空業界は排出源での二酸化炭素排出を完全に除去することはできないため、さまざまなオフセットメカニズムを使い、残る排出量を抑制する必要があります。これは、別の場所の二酸化炭素排出量を削減するために資金を提供することで、排出量を相殺するプロセスです。
ICAOが2016年に採択した国際民間航空のカーボン・オフセット及び削減スキーム(CORSIA(Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation))は、すべてのセクターで世界初となる市場ベースの措置として注目されています。IATAは、「CORSIAの目的は、2021年からオフセットプログラムを用いて、国際民間航空による実質的な二酸化炭素排出量を2019年水準で安定させることを目指す」と述べています。また、「SAFのような新技術が普及すれば、オフセットの必要性は少なくなると考えられる」としています。
電気と水素が航空機の排出量削減に貢献
航空会社の二酸化炭素排出量の17%以上を占めている、航続距離600マイル未満の短距離便に関しては、電気や水素を燃料とする航空機などの新技術も開発されています。航空機による二酸化炭素排出量の半分以上を占める航続距離2,500マイル未満のフライトは、すべて電気または水素を燃料とすることが可能と考えられています。
欧州の大手航空会社エアバスは、水素を燃料とするゼロエミッションの民間航空機を3種類開発しており、2035年の就航を目指しています。航続距離1000海里以上で乗客数最大100人のターボプロップ機、航続距離2,000海里以上で乗客数120~200人のターボファン設計、そして航続距離2,000海里以上で乗客数最大200人の「ブレンデッドウィングボディデザイン」の3種です。
しかし、水素をカーボンニュートラルな航空燃料とするためには、持続可能な方法で製造することが必要です。クライメートワークス財団は、「航空セクターで必要とされる大幅な炭素排出量削減を達成するためには、グリーン水素(再生可能エネルギーを利用して製造された水素)の利用を促進する必要がある」と述べています。
SAFを採用する企業の数を増加させるには、航空業界の炭素排出量削減を加速させる有効な道筋について、ビジネスと政府のリーダーが合意する必要があります。クリーン・スカイズ・フォー・トゥモロー・コアリションは、持続可能な航空燃料の導入を加速させることで、2050年までに航空機からの炭素排出ネットゼロへの移行を目指すグローバルなイニシアチブです。世界経済フォーラムが共同主導するこのコアリションに参加した100社以上の企業は、世界の航空業界におけるSAFの割合を2030年までに10%に増加させることを目指しています。
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