宇宙開発における新たな発明が、気候変動対策を劇的に向上させる
新しいテクノロジーが「これまでになく詳細」な気象・気候データの測定を可能にします。 Image: Unsplash/NASA
- 新たな発明によって、異常気象がもたらす命の危険から多くの人が守られ、年間数百万ユーロの損害を回避することができると、欧州特許庁は述べています。
- フランスのエアバス社のエンジニア、フレデリック・パステルナック氏が今回発明した装置は、最先端の気象予報装置にさらに改良を加えたものです。
- 今回の発明は、軌道周回中の欧州気象環境観測衛星MetOpの気象・気候データに「かつてない詳細さ」を付加するものです。
フランス人科学者の発明によって、気象や気候の予報が容易になるかもしれません。
フランスの航空宇宙企業エアバス社の航空エンジニア、フレデリック・パステルナック氏が開発した装置は、「次世代」の気象予報や気候モデルへの可能性を拓くことが期待されています。
なぜ気象予報を改善する必要があるのか
2006年以降、北極と南極を経由して地球を周回する3機の衛星が、Meteorological Operational Satellite Program of Europe (MetOp)(欧州気象観測衛星プログラム)の一環として、気象・気候データを収集しています。
MetOp-A、MetOp-B、MetOp-Cと呼ばれるこれらの衛星には、赤外線大気探索干渉計(IASI)をはじめとする多くの観測機器を搭載。欧州特許庁によると、「これまでで最も高度な気象観測装置の一つ」ですが、16年経過した今、装置の能力は限界にきています。
IASIの光学部品によって、地球から広角に収集した放射線データに歪みが生じることが主な課題となっていました。
新たな発明は、どのように役立つのか
パステルナック氏は、IASIの位置を常に変更できる特殊なプリズムを開発することによりこの課題を解決しました。この開発によって、放射線データを正しく読み取り、歪みの修正が可能になります。
欧州特許庁によると、この改良装置によって、大気ガスの特定に使用できる解像度が2倍になると考えられています。
また、IASI改良版では、地上の空気の温度、湿度、濃度が「これまでになく詳細」に表示されるようになりました。
気象・気候データの精度向上は、世界にとってどのような意味を持つのか
欧州特許庁は、天気予報と欧州の早期警報システムの精度を向上させるこの発明によって、多くの命が救われ、年間数百万ユーロの損害を回避できると予測。また、データの信頼性向上は、今後の気候変動対策の策定にも役立ちます。
欧州宇宙機関(the European Space Agency)によると、IASIによって、天気予報の精度向上に加え、大気中のオゾン、一酸化炭素、メタンなどの地球温暖化の一因となりうる化合物の量を詳細に測定することが可能に。
NASAの地球観測データは、世界の気候が「大きく変化している」ことを示しており、20世紀半ば以降、前例のないペースで人類による活動が地球温暖化を「明らかに」加速させているとNASAは述べています。
スタンフォード大学の気候科学者による2020年の研究では、地球温暖化が異常気象に与える影響が過小評価される傾向にあることを示唆しています。
欧州特許庁によると、改良型の気象予測装置は、2024年に軌道に投入されるMetOp-SG衛星に搭載される予定です。
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